著者からのメッセージ
『金の角持つ子どもたち』(集英社)という中学受験の物語を刊行したのは、
2021年のことでした。
それから4年の時を経て、「僕たちは我慢している」では
日本屈指の進学校に通う高校生たちの大学受験を書きました。
周囲の期待というプレッシャーを背負いながら挑み続ける彼らの青春を、
見届けていただきたいと思います。
藤岡陽子
中学受験のバイブル・『金の角持つ子どもたち』から4年。12歳だった子どもたちが高校生となり、
金の角は金の剣となり、超難関大学受験に挑みます!
中学から野球部で一緒だった三人。
千原道人は高校では受験に専念するつもりが、中小企業を営む父の病気が再発した……。
高校でも野球を続けている穂高英信は、総合病院の四代目として期待されているが、
医学部受験には及ばない成績に迷う……。
唯一夏の大会を最後に引退した中森揮一は、周回遅れの受験勉強にまったく身が入らず、
大学受験を辞めようかとさえ思う……。
もう一人、中一から学年トップを維持する香坂淳平。彼にも思い悩みが……。
それぞれに容易ならざる事情を抱えながらも、彼ら高校男子はどのようにして心を決めたのか--その軌跡と到達点を描く。
読後に生きる力が湧き上がる優れた小説は、何れ必ず読者の羅針盤になる――小説復興の出版社・COMPASS出帆第一弾!
出版社より
小説への思いを申し上げます。
小説には第一に、ページを捲らせるおもしろさがなければなりません。
読みかけの本が鞄の中にあるだけで、心が弾むほどに。
次に、読み終えたときの感動もなくてはならないものです。見慣れた景色に一筋の光が差すように、
人間っていいな、生きているっておもしろいなと前向きな力が湧き上がってくる心模様です。
小説は「純文学」と「エンターテインメント」の二つに称されていますが、この呼称に惑わされてはいないでしょうか。
純文は難解でおもしろくなさそう、エンタメだったらネット社会でもっとお手軽なものが他にいくらでもあるなどと、
呼称のイメージだけがひとり歩きして、小説本来の役割が忘れられているように思います。
一人の人間が実際に経験できることには限りがあります。小説は、困難、苦難を疑似体験した後に
大きな喜びがあるという、人生の醍醐味に気付かせてくれることがあります。
文字だけから成る小説は、読者のふんだんに働く想像力を糧に完結します。魅力のある文章で綴られた作品は
人それぞれを導く羅針盤になるという思いから、社名をCOMPASSとしました。
そのような優れた小説を「コンパス」と呼んでほしい希いも籠めてのことです。
本書ご一読後、今までの世界が僅かでも輝きが増すように見えたなら、これに勝る喜びはありません
小説復興は人間復興 COMPASS