制度会計における利益概念の意義
著:丸岡 恵梨子
紙版
内容紹介
現行制度会計では、資産負債観の台頭により、ボトムラインの利益が包括利益となった。しかし、純利益の計算が行われなくなったわけではない。純利益は包括利益算定の過程で求められることになった。すなわち、利益として、包括利益も重要であるが、純利益も重要であるということである。ただし、包括利益算定の過程で求められる純利益とは資産負債観の枠組みの中における純利益であり、収益費用観におけるところの純利益とはその性格を異にする。
会計の中心は利益の算定にあることから、どのような利益を算定すべきかということが重要な問題となる。それにもかかわらず、現行制度会計では、純粋に収益費用観または資産負債観に立脚して利益計算が行われていないのが現状である。利益観とは、どちらか一方の利益観に立って、会計における利益計算構造を示すものである。そのため、純利益と包括利益は異なる利益観を前提としていることから、その利益計算構造も異なる。
本書では、収益費用観、資産負債観という2つの利益観を単に純利益や包括利益と結びつけるだけでなく、それぞれの利益がいかなる観点のもとにいかに算定されるべきかを探究する。
目次
序論 本書の目的と構成
第1章 アメリカにおける利益概念の歴史的変遷
-1930年代から1970年代を中心に-
第2章 収益費用観と資産負債観
第3章 アメリカにおける資産負債観の台頭とその展開
第4章 日本における利益概念
第5章 IASBにおける利益概念
第6章 資産および負債の認識・測定
第7章 その他の包括利益とリサイクリング
第8章 純利益と包括利益
終 章 本書の総括と今後の課題