サイパン&テニアン戦跡完全ガイド
玉砕と自決の島を歩く
著:小西 誠
内容紹介
玉砕と集団自決の島・サイパン―テニアン。数々の戦争の傷跡が残る太平洋の島々、戦争の記憶を呼び起こす戦跡を多数の写真とエッセイで紹介
目次
■戦跡ガイドの読み方
本書は、サイパン、テニアンの各地に散在する戦跡について、1944年6~8月当時の戦争―サイパン戦、テニアン戦の戦闘経過に沿って記述した。
当時の戦争について詳しくない読者には、この戦闘経過の流れはいささか退屈かもしれないが、やはり、このサイパン戦、テニアン戦全体の知識なしには、戦跡の理解は難しいので、これを詳しく述べた。
また、本書では、現地に残されている日本軍の戦跡だけでなく、米軍のメモリアルや先住民たちのメモリアル、そして、当時これらの島々に在住していた民間の沖縄や朝鮮半島の人々、また先住民たちの戦争との関わりも、紙数の許す限り紹介している。
サイパン、テニアンには、アジア・太平洋戦争の戦跡が今なお、生々しく残されている。日本では戦争の傷痕は、戦後の都市開発などでほとんど消えてしまったが、この地では至るところで見ることができる。これらの戦跡は、年々、戦争体験者の生存と記憶がかすかになっていく中で貴重なものだ。
この戦争の記憶を、次の世代に残すべきではないか、伝えるべきではないか。このような目的で本書は編集された。 なるほど、サイパン、テニアンの戦跡ガイドもなくはない。サイパンの「バンザイクリフ」などは、観光の名所にさえなっている。だが、そうした一部の観光名所を除いて、これらの島々の至るところにある数々の戦跡は、ほとんど訪れる人もない。時より、ここで亡くなられた戦没者の遺族の方々が、慰霊のために訪れるだけだ。
北マリアナ諸島自治政府には、「北マリアナ歴史保存部」が置かれているという。この保存部では、日本軍・米軍の数々の戦跡はもとより、日本統治時代の刑務所跡・病院・家屋、神社跡地、そして、古代チャモロ人の遺跡に至るまでしっかりと管理され、保存がなされている。確かに、サイパン、テニアンなどの島々を歩くと、これらの戦跡が丁寧に保存されていることがよくわかる。
年々、戦争体験者が少なくなっていく中で、戦争の記憶を引き継ぐことが、今ほど大切になっているときはない。それには、文字や映像による記録も大事だ。しかし、戦火にさらされ、風雨に耐えてきたこれらの戦跡そのものは、なによりも戦争の実像を雄弁に語っているのではないか。
読者の方には、ぜひとも一度、これらの島々の戦跡を訪ねてみていただきたい。