第1 高齢者法の意義と可能性
西 希代子
一 はじめに-日本に「高齢者法」がない不思議
二 「高齢者法」とは何か
1 高齢者法の現状
2 アメリカにおける高齢者法
3 日本(法)における高齢者法の意義と可能性
三 高齢者法の前提としての高齢者像-変わりゆく高齢者像
1 社会の主人公としての高齢者
2 心身ともに元気な社会参加者としての高齢者
3 新・高齢者像と高齢者法
第2 高齢者の財産管理・承継(上)
西 希代子
一 はじめに
二 高齢者と財産
1 高齢者にとっての財産-最大の武器・リスク
2 高齢者の財産をとりまく視線-家族、社会、国家にとっての高齢者の財産
3 主体としての高齢者と一般法化する高齢者法
三 財産管理・承継制度における近時の傾向
1 主な財産管理・承継の方法とその特徴
2 近時の立法・政策に見られる傾向
3 現状
第3 高齢者の財産管理・承継(下)
西 希代子
四 自己決定権の尊重とその限界
1 高齢者自身の保護
2 家族の利益
3 公序
五 おわりに
第4 「『高齢者法』の試み」から「高齢者法」へ―研究と教育の交錯
西 希代子
一 はじめに
二 高齢者法の対象と内容
1 高齢者法の対象となる法律
2 従来の高齢者法の主な内容
3 高齢者法の内容の拡充
三 授業科目としての高齢者法
1 授業の方法と内容
2 高齢者法教育の意義
四 今後の課題
1 高齢者法の体系化
2 「高齢者」法の正当化
第5 家事・人事事件における高齢者の権利擁護について
―随想をかなり交えて―
森野 俊彦
一 はじめに
二 高齢者による遺言書の作成に伴う問題
三 遺産分割事件における高齢者の権利擁護の問題
四 人事訴訟手続における高齢者の権利擁護について
五 ある養子縁組無効請求及び(予備的)離縁請求事件について
六 終わりに
第6 高齢当事者のもとでの遺留分侵害額請求と消滅時効―想定事例による検討
栗田祐太郎
一 はじめに
二 本稿で検討する想定事例について
三 【事例1】当初から事理弁識能力を有していたケース
1 改正法による根本的な制度変更―遺留分の金銭債権化
2 遺留分侵害額請求権の消滅時効の起算点
3 事例の処理
四 【事例2】当初から事理弁識能力を欠いていたケース
1 消滅時効の起算点となる事実に関する認識
2 実務上の留意点
五 【事例3】事理弁識能力を途中で喪失したケース
六 【事例4】【事例5】成年後見人が就任したケース
1 成年後見人による遺留分侵害額請求権行使の要否の検討
2 民法158条1項の適用による権利救済―[Ⅰ]のケース
3 民法158条1項の類推適用による権利救済―[Ⅱ]のケース
4 民法158条1項の類推適用の拡張による権利救済―[Ⅲ]の ケース
七 【事例6】当初から事理弁識能力を有していたが、相続が発生したケース
1 遺留分侵害額請求権の相続―[Ⅰ]のケース
2 遺留分侵害額請求権の共同相続―可分か不可分か?
3 遺留分侵害額請求権の行使により発生した金銭債権の相続―[Ⅱ]のケース
八 【事例7】【事例8】当初から事理弁識能力を欠き、相続が発生したケース
九 【事例9】【事例10】事理弁識能力を途中で喪失した後、相続が発生したケース
1 事例の基本的な処理―[Ⅰ]のケース
2 民法158条1項の類推適用の拡大の可否―[Ⅱ]のケース
3 事例の基本的な処理
4 [補論]除斥期間経過後の権利行使の可否―「民法158条1項・160条の法意」論
十 まとめ―総括的な留意点
1 遺留分侵害学請求については、できる限り早期に権利行使することが無難であること
2 成年後見人及び相続人の立場でも、遺留分侵害学請求権の存否に注意を払う必要があること
第7 「神は細部に宿る」・遺留分侵害額請求の展望
渡辺 義弘
一 経済的弱者の遺留分侵害額請求を考える
二 考察の背景
1 相続をめぐる様相の変化
2 関係者の経済階層の現状
3 情緒的、非打算的側面を含む法現象の特殊部分
4 立法前の、民意と事実の実態調査の不十分さ
三 「神は細部に宿る」という現実
1 遺留分権利者の心配
2 民事保全手続の必要性―金銭債権が名目だけにならない要諦
3 遺留分侵害額請求訴訟における不動産鑑定費用の負担
4 遺留分権利者の金銭債権実現の最終的展望をどのように予測するか
四 「物権的効力」の廃止は何をもたらしたか
1 旧法時代の枠組みの機能
2 現行制度の空虚な側面
五 結びに代えて―名目のみの「土俵入場券」よりも、遺留分の要否・限度を正面から検討した実体法を準備し、実際に土俵入場を保証するための叡智を尽くすべき―
第8 療養介護の寄与分を生かす道
渡辺 義弘
一 はじめに
二 時代の変遷
1 要介護状態の長期化
2 高齢者の子との同居率の低下
3 介護保険制度施行による福祉パラダイムの急変
三 紛争の現実とハードルの存在
四 「相続人」要件のハードル
五 「特別」性という要件のハードル
1 扶養義務についての法解釈
2 介護保険利用の定着による高齢者介護労働の価値の可視化
3 社会保障法の研究者の提起する違和感
4 現実
5 発想の転換を
六 「因果関係」要件のハードル
1 市民の社会通念との乖離
2 ここでも、発想の転換を
七 家裁調査官制度がなぜ活用困難なのか
八 結び
第9 高葛藤・子の監護権紛争への試行錯誤
渡辺 義弘
子どもの監護権紛争への挑戦
「子の奪い合い紛争」の試行錯誤
失敗を教訓にする
時代の潮流の変化
「子どもの奪い合い紛争」の変形としての「面会交流紛争」
「面会交流原則的実施方針」の運用現場での「行き過ぎ」・方針提案者の考え
面会交流の高葛藤を生む遠因についての私見
わが国における面会交流支援団体の心もとない現状、そして試行錯誤
第10 子の引渡し請求と権利濫用
―子の引渡しを命ずる審判を債務名義とする間接強制の申立てが権利の濫用に当たるとされた事例
小川 富之
一 はじめに
二 事実の概要
三 裁判所の判断
四 研究
五 子の引渡し請求権の性質とその強制方法
六 おわりに
第11 祭祀承継について
-葬儀・遺骨・墳墓の問題も含めて
小川 富之
一 はじめに
二 人が死亡した場合の葬送と祭祀承継
三 祭祀財産
四 祭祀財産の承継者
五 遺体・遺骨の承継
六 葬儀
七 埋葬と墳墓
八 おわりに
第12 特別縁故者に対する相続財産の分与について
-新裁判例の紹介-
本山 敦
一 はじめに
二 特別縁故者制度の動向
1 統計に見る特別縁故者制度
2 法改正
三 新裁判例の紹介
四 新裁判例からの示唆
1 申立人の属性について
2 被相続人の属性について
3 相続財産と分与額について
五 むすびにかえて
第13 裁判で争う父母に共同は望めない
-離婚後共同推進の旗を降ろしたオーストラリア家族法改正と親権の問い直し-
長谷川京子
一 画期的な法制転換
二 離婚後共同とは何だったのか
1 離婚後共同とは誰のためのどういう制度か
2 離婚後共同先進国の失敗
三 オーストラリア2023年改正
1 法改正の経過
2 改正の内容とその根拠
3 改正の意義と残された課題(共同親責任、「親責任」概念では歯止め不可)
四 日本の離婚後共同親権導入の問題
1 父母の協力・対立関係をみない監護法の改正議論
2 婚姻中以外でも、父母ある限り共同親権が原則であると読めること
3 他方共同親権者が同意しない子連れ別居が制限・牽制されること
4 父母の一方または双方が反対していても裁判所が共同親権を命じられること
5 共同親権であれば日常行為以外は共同行使を要すること
6 父母共同親権であるのに監護者を定めなくてよいとすること
7 共同親権者の一方が、15歳未満の子どもの養子縁組に同意しない場合、原則的に養子縁組ができなくなること
8 子どもの意見表明が積極的に保障されていない
五 親の権利は要るか
1 国際社会で進む親の視点に立った法適用への批判と見直し
2 子どもの養育法に親の権利は要らない
第14 面会交流家事調停の「新運営モデル」の問題点
-新自由主義的な発想に過ぎるのでは-
梶村 太市
一 はじめに(新運営モデルの位置づけ)
二 ①平成24年論考の旧運営モデルの問題点
1 ①平成24年論考以後の調停事件運営の問題点
2 細矢氏側が⑤令和3年論考で示す④拙著第2版の問題点
三 「新運営モデル」批判
1 新たな運営モデルの策定
2 新運用モデルの問題点(批判)
四 新自由主義の帰結としての原則的実施論
1 新自由主義的な発想に過ぎるのではないか
2 「コモンの哲学」「絆の哲学」からの新調停理論
第15 子の最善の利益とコモンの家族法学序説
梶村 太市
一 はじめに
二 「子の最善の利益」についての考え方と変遷
1 民法の諸規定
2 子の利益に関する考え方の変遷
3 子の利益に関する最近の議論―共同親権
三 コモンの家族法学序説
1 コモンの哲学
2 コモンの家族法学の実態法的側面
3 コモンの家族法学の手続法的側面
四 むすびにかえて
第16 日本の離婚制度の淵源について
-これからの離婚制度を見据えて-
大塚 正之
一 はじめに
二 明治民法における離婚制度
三 明治民法以前のわが国の離婚制度
四 古代西欧の離婚制度
五 西欧におけるキリスト教の普及とプロテスタントの誕生
六 現行民法の離婚制度の問題点
七 今後のわが国の離婚制度
第17 令和4年の民法改正と子どもの権利
大塚 正之
一 令和4年の民法改正について
二 懲戒権規定の削除について
三 再婚禁止規定の削除と嫡出推定の見直しについて
四 嫡出否認制度に関する規律の見直しについて
五 認知無効の訴えの規律の見直し
六 第三者提供精子による父親の関係について
七 まとめ
第18 民法とその制度的前提
水野 紀子
一 制度の存在が意味するもの
二 個人財産制の成立と戸籍・登記
三 戦後改正から現在まで
四 成年後見制度の機能不全
五 遺産分割手続きの機能不全
六 今後の改正に向けて