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家族と厄災

著:信田 さよ子

紙版

内容紹介

非常事態の水面下で起きていたこととは。
新たな危機がやってきたとき、起こりうることとはーー。

パンデミックは、見えなかった、見ないようにしていた家族の問題を明るみにした。
家族で最も弱い立場に置かれた女性たちは、どのように生きのびようとしたのか。
家族問題に長年たずさわる臨床心理士が、その手さぐりと再生の軌跡を見つめた。社会の変化を視野に入れ、危機の時代の家族のありようを鮮烈に描写したエッセイ。

目次

まえがき
 
第1章 KSという暗号

カウンセラーを査定する
不穏な母
いつも誰かを背負って生きる
「かわいいよ」
フラッシュバックと痛み
私の手痛い失敗
侵入する記憶

第2章 飛んで行ってしまった心

何もなかったかのように
文字で埋めつくされたノート
不思議な感覚
私は存在している
KSがなくなる
言葉にこだわりけるつづけること

第3章 うしろ向きであることの意味

「未来志向」という強迫  
whyからhowへ
ナラティヴセラピー
トラウマへの新しいアプローチ
「渦中」の危機と「その後」の危機
 
第4章 マスクを拒否する母

不穏な視線  
心理的に距離をとる  
母の遁走  
華麗な日々が暗転  
あふれる感情

第5章 親を許せという大合唱

四半世紀後のデジャヴ
「常識は変わらない」
加害と呼ぶことを許す言葉
あやまろうとしない親
戦うべき相手はだれか

第6章 母への罪悪感はなぜ生まれるのか

クライエントの三分の二は家族問題を抱えて来所する
名づけることの意味  
罪悪感が生まれる背景  
「あなたのために」という偽装された自己犠牲

第7章 「君を尊重するよ(正しいのはいつも俺だけど)」

孤立無援の日々
在宅勤務の夫
妻の納税額に衝撃
「君が望むなら」の本当の意味
責任転嫁と定義権の収奪
予期せぬ力関係の変化  

第8章 私の体と母の体

予知夢  
コロナ禍の葬儀
三世代の流れ
「私以外の誰がいるんですか?」
主客の逆転――かけがえのない存在になる
ケアをしながら、得られなかったケアを受ける  

第9章 語りつづけることの意味

玄関の向こうは人権のない世界
世代間連鎖への恐怖
抵抗できない強い磁力
見知らぬ人に手を差し伸べるように
「仲間」の存在
語りつづけること  
見知らぬ人になって母も変わった
代弁するということ

第10章 むき出しのまま社会と対峙する時代

時代の空気がわからなかったあのころ
重層的厄災
誰かに起きた暴力が、自分の痛みをよびさます
社会・国家とむき出しで対峙する時代

第11章 慣性の法則と変化の相克 ――一蓮托生を強いられる家族

非日常の日常化
カウンセリングが成立しなくなる?
変わりたくない社会が生むひずみ
例外として特権化される家族
DV相談件数と女性の自殺者数の増加
弱者化された主婦と女子高生
そしてウィズコロナの時代に
 
第12章 現実という名の太巻きをパクっとひと口で食べる

向田ドラマの男たち
「届かなさ」が人気の秘密
シンポシカン
盤石な地層のような現実
先端とは何か
コロナ禍の家族

あとがき――忘れないために、そして未来のために  

主要参考資料一覧  

著者略歴

著:信田 さよ子
公認心理師・臨床心理士、原宿カウンセリングセンター顧問、公益社団法人日本公認心理師協会会長。1946年生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院勤務、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長を経て、1995年原宿カウンセリングセンターを設立。アルコール依存症、摂食障害、ひきこもりに悩む人やその家族、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待、性暴力、各種ハラスメントの加害者・被害者へのカウンセリングを行ってきた。著書に、『母が重くてたまらない』『さよなら、お母さん』『家族のゆくえは金しだい』(いずれも春秋社)、『カウンセラーは何を見ているか』(医学書院)、『アダルト・チルドレン』(学芸みらい社)、『家族と国家は共謀する』(角川新書)、『タフラブ 絆を手放す生き方』(dZERO)、『共依存』(朝日文庫)などがある。

ISBN:9784910790114
出版社:生きのびるブックス
判型:4-6
ページ数:192ページ
価格:1900円(本体)
発行年月日:2023年10月
発売日:2023年09月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBS