著者第一歌集
愚直さを矜持としたる来しかたを悔やむならねどゆらぐものあり
好奇心が強く外向的な著者は、多趣味であり、その多くを自分のものとしてきた。その中でも短歌という言葉による自己表現は、自分自身を見つめ、また家族や他者との関係を再構築するためになくてはならないものであった。(久々湊盈子)
芳醇な香り片手に聴くブーニンさびしき夕べの小さな奢り
あくまでも正論に拘るわれが在り 眉月みあげ家路を急ぐ
鋭(と)きこころ持ちたるゆえに涙多き娘はあした花嫁となる
見舞いにと娘の持ち来し杖一対沽券を捨てたる夫の喜ぶ
車椅子思いのほかに御し難くじゃじゃ馬馴らしと夫は苦笑す