欧米の隅々
市河晴子紀行文集
著:市河 晴子
編:高遠弘美
内容紹介
渋沢栄一の孫にして、稀代の文章家であった市河晴子――その代表的著作である『欧米の隅々』(1933)『米国の旅・日本の旅』(1940)から一部を精選。注・解説・年譜・著作目録等を付す。
編者は、フランス文学者でプルースト『失われた時を求めて』個人全訳刊行中の高遠弘美。
没後およそ80年を経てよみがえる、激動の世界を巡ったひとりの女性の、弾むようないきいきとした旅の記録。
【推薦文】
常識を鵜呑みにしない精神の柔軟さと驚くべき観察眼。
対象の弱みを鋭く突いてなお嫌味にならない毒のあるユーモア。
緩急自在の文体で描かれる、潑溂とした知的な道中のなかで、
いま、「隅々」という新しい言葉の地誌が生まれる。
――堀江敏幸
いや凄いね、これほどの才能が昭和初期の日本に出現していたとは!
――鹿島茂(毎日新聞)
46歳で逝ったのが惜しいにもほどがある。もっと生きて戦後の日本と世界を見て書いてほしかった。渋沢栄一の孫娘だけれど、そんなのどうでもいい。晴子は晴子として十二分に素晴らしい。
――豊﨑由美(共同通信配信)
今回の出版に繫がるまでのエピソードがまたすごいので、ぜひ「はじめに」と「解説」も読んでいただきたい。奇跡の一冊といっていいでしょう。
――サンキュータツオ(婦人公論)
読みはじめて2行めで、門司港で積荷をする起重機の様子が「ジラフが大きな稲荷寿司を啣え込むよう」と描写されていて、いきなり痺れる。8か月にもわたる長旅の、まだ、たった2行めでしかないのに。
――斎藤真理子(素粒社note)
目次
はじめに 高遠弘美
欧米の隅々
初春の支那
黄海にて
哈達門の朝市
排日瞥見
食べ物
万里の長城
ロシヤを横切る
シベリヤの入口
淡雪のモスクバ
憂さ晴らしして
花の都パリ
パリの第一印象
芝居とレビュー
セーヌの川舟
ベルギーとオランダ
イギリスとアイルランド
ドーヴァー海峡を渡って
ウェールズ
アイルランドの南と北
湖水地方
英国の春の行事
ロンドンの日記から(抄)
近郊めぐり(抄)
スペインとポルトガル
スペインに入る
マドリッドにて
闘牛を見る
セビリヤ風景
アルハンブラを見に
北欧めぐり
デンマークの三日
スカンジナビヤを横切る
東プロシヤからポーランドまで
二度目のベルリン
中欧諸国とイタリー
ユングフラウを見に
聖き山々(抄)
永遠の都ローマ(抄)
ナポリからベニスまで(抄)
ウィーンとプラハ
バルカン半島の初秋
ブルガリヤ
スタンブール(抄)
ギリシャ懐古
エジプトの驚異
ピラミッドに登る
帰国
乗船まで
デッキチェヤにて
印度洋の焦燥
その後
米国の旅・日本の旅
米国の旅
第一印象
グランド・キャニオン
ボールダー・ダム
日本の旅
緑の旅
湯のある旅 南の湯 北の湯
スキーのあけくれ
解説 高遠弘美
市河晴子年譜
市河晴子著作目録
編者補記
原本目次