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猫と笑いに銀河 宮沢賢治ユーモア童話選

著:大角修

紙版

内容紹介

 誰もが知る童話「銀河鉄道の夜」。思い切って原作に挑戦したものの、100年近く前のもので読みづらいし意味がわかりづらく難解で挫折した人も多いのでは。そんな挫折をなくし「賢治」作品の魅力を味わうために本書では、宮沢賢治のユーモラスな部分に着目。賢治研究会の編集長がユーモラスな部分にフォーカスをしてわかりやすく解説をしているので、とても読みやすい内容に。また本書を読むことで宮沢賢治は漫画やアニメ、音楽、映画や演劇、お笑いまでさまざまなポップカルチャーに多大な影響を与えたことも見えてくる。猫やねずみといった動物や妖怪、人間をテーマにしたユーモラスでファンタジックな賢治文学を楽しんでいただくための童話傑作選。
 
■「はじめに」一部抜粋
 宮沢賢治は「雨ニモマケズ」の印象とは異なり、実際には、ジョーク好きで、ほがらかな人だったようである。作品も多様で、そのなかにはユーモラスなものも多い。有名な童話「銀河鉄道の夜」にも、プリオシン海岸の化石掘りの大学士とか、銀河の鳥捕りとか、けったいな人物が登場する。また、アメリカのカントリーミュージックを作品に取り入れるなど、当時は先進的な試みをした。アニメや漫画、音楽、映画など、世界中から注目を集めている日本のポップカルチャーの源流には、「賢治」がいる。

 本書には、そんな宮沢賢治のポップカルチャーとしての側面に注目。童話を厳選しユーモラスな観点から解説を試みている。賢治作品がユーモラスであることは早くから指摘されていて「宮沢賢治のユーモア」といった 論もあるのだが、ともかく、作品を読んでみるのがいちばんである。

 しかし、もう百年も前に書かれた作品なので、今ではわかりにくくなった語句も多い。また、 賢治自身が謎めいた言葉を散りばめて、そこから展開するイメージは読者にゆだねているところ がある。それも今の読者にはわかりにくい。賢治の作品に興味をもって読もうとする人は多いの だが、そうした点が壁になって、読みにくいし、読んでも何のことかわからなかったという人もある。『銀河鉄道の夜』を途中で挫折した人も多いのではなないだろうか。

 そこで本書では、作品の本文途中に解説コメントを挿入しながら紐解く構成にしている。ともあれユーモラスでファンタジックな賢治文学を楽しんでいただき、その作品を読むことを通して、単にコミカルだけではないところも味わっていただければ幸いである。

目次

はじめに ユーモラスな宮沢賢治

第1章 動物と自然界の物語
寓話 猫の事務所......ある小さな官衙に関する幻想......
「ツェ」ねずみ 暴露する者の末路
鳥箱先生とフウねずみ 虚妄の果てに
クンねずみ ネズミは猫に食われる
蜘蛛となめくじと狸 ゴールは地獄だ
「蜘蛛となめくじと狸」論 宮沢賢治の文学と信仰
フランドン農学校の豚 友愛と平和の情操を涵養するために
どんぐりと山猫 森の中の草地の思い出
「どんぐりと山猫」論 いつか秋の日に

第2章 山男と妖怪伝説
山男の四月 「こころの種子」はどこに?
紫紺染について 東京大博覧会受賞秘話
ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記 ばけもの英雄伝説

第3章 人間たちの話
毒もみのすきな署長さん 悪人の英雄伝説
よく利く薬とえらい薬 孝行息子と贋金づくりの話
北守将軍と三人兄弟の医者 北方守備軍ソンバーユー将軍の帰還

第4章「銀河鉄道の夜」ファンタジック&コミカルシーン
ジョバンニの切符──「銀河鉄道の夜」のメッセージ

おわりに

著者略歴

著:大角修
1949年、兵庫県姫路市夢前町生まれ。東北大学文学部宗教学科卒。宮沢賢治研究会『賢治研究』編集委員(2023年から編集長)著書は『宮沢賢治の誕生』(中央公論新社)、『イーハトーブ悪人列伝』(勉誠出版社)、『全品現代語訳 法華経』(角川ソフィア文庫)、『日本史年表』(朝日新聞出版)など多数

ISBN:9784909852403
出版社:blueprint
判型:4-6
ページ数:384ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2023年04月
発売日:2023年04月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ