新古今時代の和歌表現
著:板野 みずえ
内容紹介
和歌史における「新古今」とは何であったか。
藤原良経を足がかりに、新古今から京極派に至るまでの和歌の特質を「叙景」意識を軸に検討し、表現史の面から和歌史の書きかえをはかる。
目次
凡例
序章 「新古今」という時代
一 「新古今」の範囲
二 「叙景」の定位
三 本書の構成
第一篇 藤原良経――新古今前夜
第一章 藤原良経の歌壇活動
はじめに
一 良経主催の和歌行事
二 良経歌壇の設題傾向
三 名所十題歌合の歌題
四 良経歌壇の設題と漢詩文
おわりに
第二章 「風」の歌
はじめに
一 良経の「風」歌の特徴
二 良経の『六百番歌合』「枯野」詠
三 「風」の歌と「跡」
四 名残としての「風」
五 主題としての「風」
おわりに
第三章 「心の空」の歌
はじめに
一 「心の空」の詠作史
二 新古今歌人の「心の空」
三 良経の「心の空」(1)
四 良経の「心の空」(2)
おわりに
第二篇 叙景――新古今時代の和歌表現
第一章 恋歌における叙景
はじめに
一 定家「年も経ぬ」詠の問題点
二 定家の「よそ」の用例
三 新古今歌人の「よそ」の用例
四 「○○のよそ」という表現
五 「よそ」と視点
おわりに
第二章 物語摂取と景
はじめに
一 『一句百首』の性質
二 定家の「吹きまよふ」詠
三 「秋に閉ぢつる」
おわりに
第三章 「春の曙」考
はじめに
一 『六百番歌合』以前の「春の曙」
二 「見ぬ世」と「春の曙」
三 『風雅集』の「春の曙」歌群
四 しるべとしての「春の曙」
おわりに
第四章 「むすぼほる」考
はじめに
一 「むすぼほる」の詠作史
二 「むすぼほる」の基本構造
三 新古今歌人の「むすぼほる」の用例
四 「むすぼほる」と「夢」
おわりに
第五章 「ながむ」考
はじめに
一 釈教歌における用例
二 「思ひ入る」・「むなしき空」
三 「ながむ」と景
四 景と客体化
おわりに
第六章 「身」考
はじめに
一 「身にしむ」という表現
二 『新古今集』秋上・三五二番歌
三 「身にあまる」と「身にとまる」
四 新古今時代の「身」と「心」
おわりに
第三篇 寂蓮・京極派――新古今時代以後
第一章 寂蓮の和歌とその享受
はじめに
一 良経歌壇の和歌行事と寂蓮
二 寂蓮結題百首
三 寂蓮詠の構図
四 寂蓮詠における遠近感
おわりに
第二章 寄物題における景の展開
はじめに
一 新古今時代の寄物恋題
二 新古今時代後の寄物恋題(1) 歌会・歌合・定数歌
三 新古今時代後の寄物恋題(2) 応制百首
四 中世和歌における「寄雲恋」詠
五 京極派における寄物恋題詠
おわりに
第三章 京極派和歌における「向かふ」
はじめに
一 藤原定家の『六百番歌合』「別恋」詠
二 京極派の和歌における「〜に向かふ」
三 「向かふ」と時間
四 「向かふ」と「ながむ(ながめ)」
五 「向かふ」と「心」
六 「向かふ」と仏教思想
おわりに
終章 新古今から中世和歌表現史へ
一 新古今から京極派へ
二 中世和歌における「叙景」
三 「見るやう」な景
四 叙景表現の共有
おわりに
付章 東京大学総合図書館蔵『月清集攷』翻刻と紹介
はじめに
一 書誌
二 翻刻
三 校異
四 考察
初出一覧/あとがき/索引(人名・和歌初句)