後期江戸語の行為要求表現
言語の歴史的研究の意義と評価
著:福島 直恭
内容紹介
行為を要求する「〜なされ」は、どのように「〜なさい」へ変化したのか。
丁寧表現「〜ござります」が「〜ございます」を生み出す過程や、
命令表現「〜ねえ」の成立と衰退過程など、変化事象の共通原理を説く。
言語史記述にあたり、近代日本の支配階級や東京という視座によった従来の研究から転換し、「中央以外の視座」をもつことの有効性を実証!
目次
本書を読んでくださる方へ
序章 本書の目指すところ
1.本書の目指すところ
2.言語の歴史的研究
3.視座の存在の認識
4.ポストモダニズムや言語論的転回と歴史研究
5.日本語史研究における視座の転換の必要性と可能性
第1章 後期江戸語における行為要求表現の諸相
1.江戸語および行為要求表現の定義と本章の目的
2.江戸語の行為要求表現の分類
3.洒落本にみられる行為要求表現
4.滑稽本にみられる行為要求表現
5.人情本にみられる行為要求表現
6.まとめ
第2章 行為要求表現「~なさい」の成立
1.問題の設定と視座
2.行為要求表現の全体像と「なさい」
3.ナサイ類諸形式の中における「なさい」
4.長母音化のない言語変種におけるナサイ類
5.言語史記述における視座という概念の有効性
第3章 後期江戸語における「ござります」と「ございます」
1.本章の目的
2.「ござります」と「ございます」の使用状況
3.他の「イマス群」の使用状況
4.江戸語以外の言語変種における「ござります」
5. 非標準形式としての「ございます」と標準形式としての「ございます」
6.「ござる+ます」の特徴
7.まとめ
第4章 後期江戸語の非標準的命令表現「ねえ」について
1.本章の目的
2.先行研究や辞書における「ねえ」の説明
3.調査について
4.他の行為要求表現との使用量の比較
5.「ねえ」による命令表現を支えたもの
6.調査結果のまとめと「ねえ」のその後
7.おわりに
第5章 言語の歴史的研究の意義と評価
1.言語の歴史的研究の意義
2.歴史記述に対する評価の可能性
3.論理的整合性
4.同時代社会との関係性という観点からの評価
終章 これからの日本語史研究
1.言語の歴史的研究の政治性
2.日本語史の研究成果の一般化
引用・言及した文献
索引