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蜘蛛の巣上の無明

インターネット時代の身心知の刷新にむけて

編:稲賀 繁美
他著:戦 暁梅
他著:打本 和音

紙版

内容紹介

電子テクノロジーが見逃してきた盲点を突き止める。

「蜘蛛の巣」を鍵言葉に、人類の想像力がいかに蜘蛛の巣状に連動し、それが従来の研究方法をいかに刷新するのか。また「蜘蛛の巣」というマトリックスに照らして現実を分析することがいかなる可能性を開くのか。電子媒体を「蜘蛛の巣」Webとして捉えることで、そこに潜む危険とも裏腹の将来像を、特定の専門分野の枠組みを横断して探求する。

目次

はしがき……稲賀繁美

序論 本論文集の構想について……稲賀繁美
 【コラム】無明長夜の照らすもの──経糸のひろがりを手がかりに……打本和音

第Ⅰ部●想像力 「蜘蛛の巣」が喚起するもの
芸術家としての蜘蛛の系譜──蜘蛛の巣という小宇宙をめぐる詩作の比較文学……橋本順光
蜘蛛の巣上のゴースト……平芳幸浩
バミューダ産から日本産へ──テッポウユリの貿易とアメリカ市場……藤本憲正
無限への道としての網穴──草間彌生の網と水玉の相関関係再考……近藤貴子
 【コラム】ヴィクトール・ユゴーと蜘蛛の巣……糸永・デルクール光代
 【コラム】クモの網と「共生」社会のゆくえ……白石恵理
 【コラム】中国伝統文化やサブカルチャーにおける蜘蛛の表象について……許 躍煒

第Ⅱ部●研究方法論 「蜘蛛の巣構造」による研究領域の刷新
南方熊楠と蜘蛛──その蜘蛛の巣のような学問方法について……プラダン・ゴウランガ・チャラン
マルグリット・ユルスナール『黒の過程』の思索と方法……村中由美子
「妖怪」はどこに棲む?──インターネット時代の怪異・妖怪文化……松村薫子
蜘蛛は動物愛護の対象となり得るか──動物の愛護と管理の関係を考える……春藤献一
蜘蛛の巣構造的つながりの見地からの移住史──永田稠の移住事業観の連続性……飯窪秀樹
 【コラム】日本人移民とサンパウロ州ノロエステ(北西)地方……飯窪秀樹
 【コラム】蜘蛛の巣越しの空──天空を覆う蜘蛛と電線の図像学……橋本順光
 【コラム】グラフィックデザイナー・里見宗次のアーカイブズ資料にみる〈蜘蛛の巣〉……前川志織
 【コラム】蜘蛛の「雄食い」と八本脚の魅惑……森田百秋

第Ⅲ部●生態的社会動態論 「蜘蛛の巣」模型の有効性と限界
蜘蛛のアナンシはささやく──ジーン・リースの混血の讒言者とナンシー・ストーリー……中村和恵
ジョン・ラファージと東洋思想の翻訳網──『画家東遊録』におけるハーバート・アレン・ジャイルズ訳「荘子」……富永梨紗子
柳田国男の昔話採集──情報網構築の視点から……志賀祐紀
一九五〇年代日本再考──野間宏「歴史の蜘蛛」から……竹村民郎
 【コラム】支倉常長使節団を再考する……滝澤修身
 【コラム】昔話「賢こ淵(水蜘蛛話)」の蜘蛛の糸──情報ネットワークとしての糸……志賀祐紀
 【コラム】蜘蛛手なすアマゾン航路と日本人移民入植……根川幸男
 【コラム】トマス・サラセーノ in orbit(2013)インスタレーション──K21州立美術館、ドイツ・デュッセルドルフ……富永梨紗子

第Ⅳ部●電子媒体・身体と都市 「蜘蛛の巣」情報網Net社会の光と影
蜘蛛の巣上で輻輳する交通と通信……新井菜穂子
「わざ」はどのように伝えられるのか──オンライン稽古の(不)可能性からみる身心知の可能性……鋳物美佳
Webの思想──通常科学と疎外をめぐって……尾鍋智子
謫仙 藤井聡太 蜘蛛の糸を操る……多田伊織
 【コラム】蜘蛛の巣状の都市──都市論の視点から……江口久美
 【コラム】[蜘蛛手なす都市]北京: 壁に囲まれた都市……新井菜穂子
 【コラム】糸を媒体とするフランス現代アーティストとの対話から……糸永・デルクール光代

第Ⅴ部●言語論的転回 脳科学・神経系美学を超えて
蜘蛛の巣としてのラング──丸山圭三郎を手がかりに……藤貫 裕
認知と蜘蛛の巣──自閉症者(ASD)の自伝を読む……森岡優紀
異種のタイポグラフィー──宮沢賢治「蠕蟲舞手」……平倉 圭
「蜘蛛の巣」状モデルの学術的有効性に関する学説史的考察──ティム・インゴルド『生きていること 動く、知る、記述する』を参照しつつ……稲賀繁美
 【コラム】蜘蛛の巣サイクルと「期待」……鈴木洋仁
「ピンクスパイダー」の糸……君島彩子

成果概要: 本論集の目論見と論文集の構成……稲賀繁美
あとがき……稲賀繁美

【巻末資料】
【論文・コラム】注一覧
SNS時代の「定住的遊牧」:脱国民国家を志向する仮想空間の身体倫理を問う……稲賀繁美
「蜘蛛の巣」の網の目のなかの国際日本研究──国際日本文化研究センター 年間の活動を「蜘蛛の巣モデル」に照らして吟味する……稲賀繁美
海洋と環太平洋にひろがる「蜘蛛の巣状の網の目」を触知する──次世代の国際日本文化研究に向けての提言……稲賀繁美
「蜘蛛の巣」研究会の実施記録

索引(人名・事項)
執筆者紹介
欧文要旨
欧文目次

著者略歴

編:稲賀 繁美
京都精華大学国際文化学部、初代学部長を経て特任教授
1957年東京生まれ、広島育ち。東京大学大学院比較文学比較文化 専攻単位取得退学・パリ第7大学博士課程修了。三重大学助教授を経て、国際日本文化研究センター・総合研究大学院大学・助教授・教授を経て、2021年より名誉教授。放送大学客員教授。
専門は比較文学・比較文化、文化交渉史。主要著書に『絵画の黄昏 エドゥアール・マネ没後の闘争』(1997)『絵画の東方 オリエン タリズムからジャポニスムへ』(1999)『絵画の臨界 近代東アジア美術史の桎梏と命運』(2014)3部作のほか『接触造形論 触れ合う魂、紡がれる形』(2016:いずれも名古屋大学出版会)など。 主な日本語編著に『異文化理解の倫理にむけて』(名古屋大学出版会、2000)、『伝統工藝再考』(思文閣出版、2007)、『東洋意識』(ミネルヴァ書房、2012)、『海賊史観からみた世界史の再構築』 (思文閣出版、2017)、『映しと移ろい 文化伝播の器と蝕変の実相』 (花鳥社、2019)。仏文共編著に Vocabulaire de la spatialité…
他著:戦 暁梅
国際日本文化研究センター教授。著書に『鉄斎の陽明学』(勉誠出版、2004年)、共編著に『近代中国美術の胎動』(瀧本弘之との共 編、アジア遊学168号、勉誠出版、2013年)、『近代中国美術の辺界──越境する作品、交錯する藝 術家』(瀧本弘之との共編、アジア遊学269号、勉誠出版、2022年)ほか。
他著:打本 和音
京都芸術大学非常勤講師。博士(文学)。
近年の業績に「メシアとしての弥勒の 「誕生」『佛教學研究』(76号、2020年)、「兜率天とその役 割」『印度學佛教學研究』(69-1号、2020年)、「浄土表象の受容と変容をめぐる一考察」『眞宗研究』(65号、2021年)ほか。

ISBN:9784909832726
出版社:花鳥社
判型:A5
ページ数:434ページ
定価:6800円(本体)
発行年月日:2023年02月
発売日:2023年03月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DNL