よみがえる与謝野晶子の源氏物語
著:神野藤 昭夫
内容紹介
〈近代初の現代語訳〉誕生の裏側
『新訳源氏物語』と『新新訳源氏物語』——晶子の生涯を貫いた「源氏」に賭ける情熱の軌跡!
翻訳はどのようにして完成したのか。新資料の数々をもとに訳業の具体像を明らかにする。
没後80年記念出版
目次
はじめに
序章 晶子の『源氏物語』翻訳をめぐる旅の始まり
1 荻窪の旧居跡に立って
2 新たな翻訳文学として登場した『新訳源氏物語』
第一章 幻の『源氏物語講義』の復原
1 幻の晶子の「源氏の本」
2 小林天眠と天佑社構想
3 寛の天眠への助言とみずからの感懐
4 天眠の晶子への原稿依頼
5 幻の『源氏物語講義』依頼の内実
6『源氏物語講義』はいかに書き進められたか
7 天佑社の旗あげに間に合わなかった原稿
8 天佑社の営業方針との軋轢
9 経済恐慌と天佑社の閉鎖
10 幻となった『源氏物語講義』
11『源氏物語講義』の原稿一枚が残った事情
12 幻の『源氏物語講義』の原稿一枚
13 幻の『源氏物語講義』の解読とその価値
14『新訳源氏物語』と『新新訳源氏物語』の「薄雲」巻の一節
15 幻の『源氏物語講義』の記録後記
第二章 晶子の〈源氏力〉をつちかったもの
1 テキストが読者を育てること
2a『源氏物語』体験 円地文子の場合
2b『源氏物語』体験 樋口一葉の場合
3 晶子の『源氏物語』体験
〔コラム〕兄鳳秀太郎のこと
4『源氏物語』耽溺が生んだ晶子の歌
5 晶子を鍛えた『源氏』体験の場
6『伊勢物語』輪読
7『源氏物語』会読
8『源氏』を講ずるひとに─閨秀文学会のこと
9 晶子の講義風景をさぐる─「手の上の氷」のこと
10 寛と晶子の苦境─『明星』の終焉へ
11 窮状の資となる『源氏物語』講義 与謝野氏毎週講演のこと
12 晶子が親しんだテキストはなにか
〔コラム〕『(絵入)源氏物語』大本・横本・小本のこと
13 鞍馬寺所蔵の晶子旧蔵『源氏物語』(絵入源氏物語)の現態
〔コラム〕果報は寝て待て─鞍馬寺蔵『絵入源氏物語』(与謝野晶子旧截)現態由来
果報の訪れ/冬柏亭炎上の危機/晶子旧蔵『絵入源氏物語』のこと/
晶子の源氏体験の原点の書である可能性/余聞
第三章 読者の心を鷲摑みにした『新訳源氏物語』とパリ体験
1『新訳源氏物語』の出現と普及
〔コラム〕『新訳源氏物語』二つの系列で異なる本文
2『新訳源氏物語』はこうして始まった
〔コラム〕内田魯庵の進言と〈翻訳〉の意味するもの
3『新訳源氏物語』はどう書き進められたか
〔コラム〕百首屏風のこと
4『新訳源氏物語』の執筆の推移
5『新訳源氏物語』中巻と晶子の渡欧
〔コラム〕古尾谷鐵太郎のこと
6『新訳源氏物語』下巻の刊行
7『新訳源氏物語』の縮訳量の量的な検討
8『新訳』の量的拡大の謎
〔コラム〕多忙であった日々
9 梗概書の系譜と『新訳源氏物語』の位相
10 晶子は『源氏物語』の和歌をどう歌いかえたか
11 晶子の渡欧と『新訳源氏物語』
12a 寛と晶子のパリ滞在の拠点
12b モンマルトルの宿の人びと
12c「巴里に於ける第一印象」と晶子の欧州体験
13 ロダンとの邂逅そして再び『新訳源氏物語』へ
第四章 畢生の訳業『新新訳源氏物語』はどのように生まれ流布したか
1『新新訳源氏物語』完成祝賀会の日
2 池田亀鑑、晶子に会う。その翌日晶子倒れる
3『新新訳源氏物語』は、いつどのような事情から書き始められたか
〔コラム〕底流する内的動機の存在
4『新新訳源氏物語』の危機
5 非凡閣版『現代語訳源氏物語 中』の事情
〔コラム〕非凡閣『現代語訳国文学全集』の出版企画
6 縮訳だった晶子の非凡閣版『現代語訳源氏物語 中』
7『現代語訳源氏物語 中』はどう評価できるか
8 金尾種次郎との再会と『新新訳源氏物語』の再開
9『新新訳源氏物語』の刊行
10『新新訳源氏物語』の完成の日まで
11 晶子の『新新訳源氏物語』自筆原稿の存在
〔コラム〕晶子自筆原稿『新新訳源氏物語』デジタルデータへのアクセス方法
12 晶子自筆「玉鬘」の一枚を解読する
13 晶子自筆「花散里」の一枚を解読する
14『新新訳源氏物語』の和歌の秘密
15「玉鬘」巻の和歌省筆と依拠テキストとの関係
16 晶子が朗読した「桐壺」巻冒頭のレコードとそのテキストの問題
17『新新訳源氏物語』の和歌本文の問題
18『新新訳源氏物語』は河内本を利用したか
〔コラム〕河内本と河内本待望熱のこと
19 謎の書き加えられていた『全訳源氏物語』「柏木」巻巻末
20『新新訳源氏物語』の流布と本文
21 晶子の『新新訳源氏物語』の個性と魅力はどのようなものか
─空穂・潤一郎・ウェイリー・晶子
終章 旅の終わりに
年表/図版一覧/本書関連著作一覧/索引