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属性叙述と総称性

著:鈴木 彩香

紙版

内容紹介

叙述の型はどのように決定されるのか

複雑に絡み合うさまざまな決定要因――述語の意味、主語をマークする助詞(ガ/ハ)、時間的限定性、語用論的知識など――は、どのような形で結び付き、いずれの要因が叙述の型を決定づけるのか。テンスの総称性という観点から体系化し、そのメカニズムを明らかにする。

2021年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)交付図書

目次

第1章 序論
1.本書の目的
2.研究の背景
2.1 日本語の属性叙述文研究
2.2 総称文研究
3.本書のアプローチ
4.本書の構成

第2章 事象と属性の対立に関わる諸要因
1.はじめに
2.日本語の属性叙述文研究
2.1 益岡(1987,2000,2004,2007,2008,2012,2018,2021)
2.2 影山(2009,2012)
2.3 三原(2020)
3.総称文研究
3.1 述語の意味的性質(SLP/ILP)と主語の解釈
3.2 統語構造と意味解釈の写像関係
3.3 テンスに着目した総称文の分類
4.テンスの総称性から見る叙述の型の決定プロセス
5.本章のまとめ

第3章 主語と総称性
1.はじめに
2.先行研究
2.1 主語の解釈と情報構造:Cohen and Erteschik-Shir(2002)
2.2 問題の所在
3.述語の意味的性質と主語名詞句の解釈および情報構造の関係
3.1 現象の整理
3.2 述語の意味的性質と主語の情報構造:Heycock(1993,2008)
3.3 統語構造による統一的説明
3.4 TP指定部の主語
4.テンスの総称性と主語の解釈
4.1 テンスの総称性と4要因の体系化
4.2 数量詞遊離と存在解釈
4.3 テンスの総称性と定解釈の主語
5.本章のまとめ

第4章 目的語と総称性
1.はじめに
2.先行研究と問題の所在:目的語の総称性
3.単文における目的語の解釈
3.1 ES心理述語における対格目的語と主格目的語の対立
3.2 評価系述語と所有系述語の主格目的語の対立
3.3 先行研究:主格目的語の統語的位置
3.4 写像仮説に基づく説明
3.5 まとめ
4.複文における目的語の解釈
4.1 現象の観察
4.2 難易文における主格目的語と対格目的語の対立
4.3 難易文と可能文の主格目的語の対立
4.4 写像仮説に基づく説明
4.5 まとめ
5.本章のまとめ

第5章 非状態動詞におけるアスペクトと総称性
1.はじめに
2.先行研究と問題の所在
2.1 叙述の型を決定する要因と語彙的・文法的アスペクト
2.2 本章での問題提起
3.[経験]を表すテイル形と存在テンス
3.1 先行研究
3.1.1 [経験]を表すテイル形のアスペクト的意味
3.1.2 [経験]を表すテイル形とSLP/ILP
3.2 SLPとしての[経験]を表すテイル形
3.2.1 [経験]を表すテイル形とテンスとの相関
3.2.2 [経験]を表すテイル形と主語の解釈
3.3 [経験]を表すテイル形と属性叙述
3.4 [経験]を表すテイル形まとめ
4.[反復]を表すテイル形と存在テンス
4.1 先行研究
4.2 「習性属性」におけるル形とテイル形の対立
4.2.1 [反復]の体系的位置づけ
4.2.2 主語の解釈
4.3 「習性属性」を表すル形とテイル形の意味解釈メカニズム
4.3.1 説明の枠組み:個体量化とイベント量化
4.3.2 ル形の個体量化分析とテイル形のイベント量化分析
4.3.3 意味解釈と統語構造の写像関係
4.4 [反復]を表すテイル形まとめ
5.テイル形の形成する属性叙述とテンスの総称性
5.1 存在テンスと結びついたテイル形と属性叙述
5.2 テイル形が総称テンスと結びつく場合
6.本章のまとめ

第6章 状態動詞におけるアスペクトと総称性
1.はじめに
2.先行研究と問題の所在:アスペクト対立と状態性
3.感覚を表すオノマトペ動詞におけるル形とテイル形の対立
3.1 オノマトペの意味と述語形式
3.2 「味覚・嗅覚・聴覚を表す名詞」+「ガスル/ヲシテイル」:澤田(2012)
3.3 感覚を表すオノマトペ動詞のル形とテイル形の違い:SLPとILP
3.4 感覚を表すオノマトペ動詞のル形とテイル形の違い:項構造
3.5 感覚を表すオノマトペ動詞におけるアスペクト対立
4.アスペクトとテンスの総称性
4.1 感覚を表すオノマトペ動詞とテンスの総称性
4.2 語彙的/文法的アスペクト
5.本章のまとめ

第7章 結論
1.各章の議論のまとめ
2.本書の意義と展望


参考文献
初出一覧
あとがき
索引

著者略歴

著:鈴木 彩香
1989年、神奈川県生まれ。
筑波大学大学院人文社会科学研究科一貫性博士課程修了。
博士(言語学)(筑波大学)。
現在、国立国語研究所プロジェクトPDフェロー。

主要論文
「日本語オノマトペ述語の形式について―スル・シテイル・ダの選択基準を中心に―」『日本語文法』12巻2号(2012)
「同時性に基づくトキ節の構成的意味分析」『日本語文法』21巻2号(2021)
など。

ISBN:9784909832542
出版社:花鳥社
判型:A5
ページ数:240ページ
定価:3500円(本体)
発行年月日:2022年02月
発売日:2022年03月23日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:CJBG
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:CFK
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:CBG
国際分類コード【Thema(シーマ)】 4:2GJ