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古代政治史の死角

著:松尾 光

紙版

内容紹介

政治は誰のためにするものか。

律令制定に尽力した藤原不比等、政権に叛旗を翻した藤原広嗣、天然痘に苦しむ人民を見過ごした聖武天皇——皇族・貴族など支配者層の目に、国家・社会・民衆はどう映っていたのか。
為政者たちの視点からこぼれ落ちた事実をすくいあげ、歴史を再評価する。

目次

はじめに

Ⅰ●国家・施策
近江大津宮の遷都理由と選地
 
一 なぜ遷都が必要になったのか
 
二 なぜ遷都先に大津が選ばれたのか
 
三 大津宮は恒久施設か臨時施設か
 
四 大津宮跡はどんなものか
 
五 大津宮の古歌の解釈の誤りとは

日本書紀編纂の材料と経緯
 
一 『日本書紀』編纂の企画
 
二 『日本書紀』編纂の材料
 
三 『日本書紀』の編纂過程

疫病の流行──律令国家の天然痘への対処法
 
一 天然痘の蔓延
 
二 天平の大流行

赤裳瘡流行後の風景──天平の世に教わるもの
 
一 変わり果てた農村
 
二 天平の「偉業」

国分寺建立の詔への疑義

 一 国分二寺の建立はいつからはじまったのか
 
二 国分寺は、計画通り全国に建てられたのか
 
三 尼寺はだれが運営していたのか

上皇時代の明と暗
 
一 創出された上皇の役割
 
二 対立・対抗する上皇
 
三 「治天の君」となる上皇

Ⅱ●氏族・人物
神武東征譚成立の理由をさぐる

 一 記紀の記す神武東征譚

 二 史実とされる神武東征譚

 三 観念としての東征譚

葛城一族滅亡のシナリオ

 一 葛城氏の滅亡

 二 葛城氏の本拠地

 三 葛城氏と大王家

 四 葛城氏の勢力基盤

物部氏の神話と職掌

 一 饒速日命は、なぜ神武東征前に降臨していたのか

 二 物部の職掌と氏名の意味は

 三 尾輿・守屋は仏教導入反対の急先鋒だったか

 四 物部氏の分布とその後

祖先を神として守り抜く信念に生きた物部守屋──侠の歴史①

 一 丁未の変の顚末

 二 仏教公伝をめぐる対立

覚えのない容疑にあえて身を捧げた長屋王──侠の歴史②

 一 期待されて登場した長屋王

 二 長屋王排斥の理由

大忠臣の誇りを胸に無念の最期を遂げた藤原広嗣──侠の歴史③

 一 大宰府での挙兵

 二 我は大忠臣なりという誇り

行基の伝記と評価

 一 行基の伝記

 二 行基と聖武天皇の関係

 三 『日本霊異記』と行基の教え

橘一族の栄枯盛衰

 一 創氏と諸兄政権

 二 実現間近だった橘氏の栄華

 三 橘一族のその後

政治は誰のためにするものかを心に問い続けた橘諸兄──侠の歴史④

 一 橘諸兄の登場

 二 諸兄のめざした政治

 三 聖武天皇の迷走と光明皇后の豪腕

Ⅲ●社会・慣習など
コトバを創り、話したように記す──古代びとの挑戦

 一 コトバを創る

 二 文に書き記す

日本古代の高齢者

 一 「老」の年齢

 二 老年人口の実情

 三 老の光と影

牛と古代びと

 一 牛と宮廷

 二 民間における牛

吉成勇さんのご逝去を悼む

古代天皇系図

あとがき

著者略歴

著:松尾 光
1948年、東京生まれ。

学習院大学文学部史学科卒業後、学習院大学大学院人文科学研究科史学専攻博士課程満期退学。博士(史学)。

神奈川学園中学高等学校教諭・高岡市万葉歴史館主任研究員・姫路文学館学芸課長・奈良県万葉文化振興財団万葉古代学研究所副所長を歴任し、その間、学習院女子短期大学・鶴見大学文学部・中央大学文学部・早稲田大学商学部非常勤講師を兼務。
現在、奈良県立万葉文化館名誉研究員、早稲田大学エクステンションセンター講師。

単著に、『白鳳天平時代の研究』(2004、笠間書院)、『古代の神々と王権』『天平の木簡と文化』(1994、笠間書院)、『天平の政治と争乱』(1995、笠間書院)、『古代の王朝と人物』(1997、笠間書院)、『古代史の異説と懐疑』(1999、笠間書院)、『古代の豪族と社会』(2005、笠間書院)、『万葉集とその時代』(2009、笠間書院)、『古代史の謎を攻略する 古代・飛鳥時代篇/奈良時代篇』(2009、笠間書院)、『古代の社会と人物』(2012、笠間書院)、『日本史の謎を攻略する』(2014、笠…

ISBN:9784909832511
出版社:花鳥社
判型:4-6
ページ数:402ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2022年04月
発売日:2022年05月16日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ