もの狂いの人々
古典文学に見る異形のヒロイン
著:小林 とし子

内容紹介
人間の
もの狂いを
描いているのが
物語なのだ。
『竹取物語』に始まり、『源氏物語』、などの数々の作品を究極のかたちで継承したのが世阿弥の能の世界だった。
さらに能作品はもの狂いの果てにあるものまで私たちに見せてくれる。
目次
序 もの思いからもの狂い、そしてさすらいへ
◆Ⅰ 『源氏物語』六条御息所論—もの狂いの原点として—
はじめに—もの思う女からもの狂いの女へ―
1 もののけ現象 その1
六条御息所の謎―存在の不可思議さ―
六条御息所の非正統性―葵上に対抗する精神―
葵上に憑りついたもののけの現象
光源氏的世界
2 もののけ現象 その2
もののけ発動の兆し
もの思う女─紫上―
もののけ発動に至るまで
女の哀しみとしてのもののけ
もののけの出現─紫上に―
もののけの出現─女三宮に―
3 源氏物語におけるもののけ現象─物語に投げられた謎―
夕顔巻の怪奇現象と〈もの〉が発した言葉の謎
六条御息所の実行犯的役割とその構築
◆Ⅱ 『源氏物語』末摘花論―異形の女神―
はじめに―光源氏の世界[六条院・二条院・二条東院]―
末摘花の姫君性─末摘花巻から―
末摘花の姫君性─蓬生巻から―
滅びの精神
末摘花の変貌─女神生成―
常陸宮邸の復活
二条東院における末摘花
おわりに─皇孫の鬼―
◆Ⅲ 『源氏物語』花散里論―乙姫の宿世を生きる―
はじめに
物語理論による考察
花散里がオトヒメであること
神話世界のオトヒメ
紫上との対の関係
紫上のオトヒメ性、あるいはヒメ性
オトヒメ理論を踏まえての花散里考察
光源氏をめぐる女君の一人として
須磨退去の折に
光源氏帰京後
宿世を生きる
六条院世界を生きる
認識者として
光源氏との夫婦関係
その後の花散里
◆Ⅳ 『とはずがたり』後深草院二条論―さすらいの母―
後深草院二条のさすらいの根拠―子どもの事―
〈母と子〉の物語─大念仏供養の世界から―
謎の子―X
〈有明の月〉と二条の物語─「源氏取り」から―
その1
その2
出雲路での再会
巻三の展開
〈雪の曙〉との間に生まれた女子の問題
〈雪の曙〉との恋─「源氏取り」「伊勢物語取り」―
秘密の子の出産
二条の娘は亀山院后昭訓門院瑛子か
〈源氏取り〉の世界から─夕顔の娘、玉鬘―
おわりに
◆Ⅴ もの狂い考―能の〈もの狂いの女〉―
はじめに─世阿弥の〈神がかりによるもの狂い〉排除の思想―
憑依を演じる
もの狂いとは
もの狂いの標識
もの狂いの母─能「三井寺」―
恋心・やむにやまれぬもの狂い
能「班女」
能「花筐」
子を探し求める女芸能者─能「百万」―
おわりに─男のもの狂い─
◆Ⅵ 世阿弥レポート 1~6
◆Ⅶ その後の世阿弥 もの狂いの果てにあるもの
世阿弥の時代─立ち顕れる死者たち─
能「砧」
能「隅田川」
あとがき─古代的なるものを探して―