今昔物語集攷
生成・構造と史的圏域
著:川上 知里
内容紹介
いつ、どこで、誰の手によって、どのように誕生したのか。
関連資料との綿密な比較作業の上に立ち、〈各話の読解〉と〈全体の把握〉、〈編者の意図〉と〈読者意識〉、〈内部の論理〉と〈外部との比較〉といった複合的な視点から、『今昔物語集』の世界を総合的に捉える。
目次
凡例
序章
一 『今昔物語集』概説
二 問題の所在と本書の目的
三 本書の構成
第一部●『今昔物語集』の世界
第一章 各話冒頭部の意義―構成と表現の連動性―
はじめに
一 事実性の強調と整合性の確保
二 構成・配列との連動
三 冒頭部と結語
四 二方向への欲求
おわりに
第二章 非仏法部の形成―巻十を基点として―
はじめに
一 巻十の話群構成
二 中国正史の存在と天竺部・本朝部
三 構成と表現の「本朝化」
おわりに
第三章 恐怖表現の意義―巻九の生成理由をめぐって―
はじめに
一 恐怖表現の実相Ⅰ―正方向への影響力―
二 恐怖表現の実相Ⅱ―内から作品を崩す力―
三 巻九「震旦付孝養」構成への影響
おわりに
第四章 歴史叙述からの解放―巻三十を手がかりに―
はじめに
一 仏教的観点の存在
二 仏教と恋との葛藤
三 巻三十の存在意義
おわりに
第五章 仏法と王法―巻三十一と王法仏法相依論―
はじめに
一 三国における仏法と王法
二 巻三十一の「仏法」
三 巻三十一の「王法」
おわりに
第六章 事実らしさへの執着―信憑性確保の手法と理由―
はじめに
一 仏法部における信憑性確保の手法
二 信憑性確保の理由と背景
三 非仏法部における信憑性確保の実態
おわりに
第七章 結語にみる読者意識(1)―主題と合致する結語の実態―
はじめに
一 結語の性質と研究史
二 一般読者―唱導的欲求―
三 編者内の〈読者〉―〈執筆者〉との応答―
四 編者内〈読者〉と〈執筆者〉の葛藤
おわりに
第八章 結語にみる読者意識(2)―逸脱する結語の生成―
はじめに
一 「君子危うきに近寄らず」型
二 仏法唱導型
三 日常的教訓型
おわりに
第二部●『今昔物語集』の史的圏域
第一章 『世継物語』論―説話化の営み―
はじめに
一 和歌から説話へ
二 物語類から説話へ
三 『世継物語』の生成
おわりに
第二章 『拾遺往生伝』論―歴史意識と文学意識―
はじめに
一 特徴と問題点
二 歴史意識―配列と国史受容―
三 表現へのこだわり―文飾の排除と平明化―
四 説話内部への追求―為康の「説話化」―
おわりに
第三章 唱導資料と説話集―院政期の説話引用をめぐって―
はじめに
一 手控えに見る説話引用―『言泉集』『諸事表白』『草案集』「弁暁説草」『三国伝灯記』―
二 説法記録に見る説話引用―『法華百座聞書抄』『覚鑁聖人伝法会談義打聞集』―
おわりに
第四章 『打聞集』論―説話集としての可能性―
はじめに
一 原拠との距離
二 漢文体の出現と「云々」問題
三 作成意図と「打聞」
おわりに
第五章 金沢文庫本『仏教説話集』論―唱導資料の中の説話集―
はじめに
一 説話の引用形態の特徴
二 説話本文の特徴
三 唱導資料としての位置付け
第六章 『長谷寺験記』論―虚構の霊験記・歴史書―
はじめに
一 エピソードの挿入
二 長谷寺霊験譚への変容
三 霊験譚から長谷寺史へ
おわりに
終章
一 『今昔物語集』の世界総論
二 『今昔物語集』の生成試論
初出一覧
あとがき
索引