文の成立と主語・述語
著:竹林 一志
内容紹介
そもそも、文とは何か。主語・述語とは何か。文成立のために主語・述語は不可欠なのか。ーー文法論における根源的問題に迫る。
研究史を繙きつつ、〈文は主語・述語に「承認」「疑問」「希求」のいずれかが加わることによって成立する〉という独自の見解を打ち立てる! 先行研究にしっかりと寄り添い正確に紹介する、文法論入門にも格好の書。
目次
はしがき
総論 本書の特徴と、おもな主張
第1章 主語なし述定文の存否
1. はじめに
2. 述定文に見えて真正の述定文でないもの
2.1. 実質的には語相当のもの
2.2. 非述定文的なもの
2.3. 述定文と非述定文の中間態
3. 主語が比較的分かりやすい述定文
4. 主述未分化の述定文
5. おわりに
注
第2章 山田文法の「統覚作用」概念と文の成立
1. はじめに
2. 統覚作用についての尾上説
3. 統覚作用の本質
4. 喚体句と述体句の交渉
5. 統合作用としての統覚作用と、「実現性のあり方」表現
6. おわりに
注
第3章 承認、疑問、希求──文を文たらしめるもの
1. はじめに──時枝誠記による山田文法批判
2. 渡辺(1971)の所説
3. 文の語り方の三種
4.「承認」をめぐって
4.1. 連体句に関して
4.2. 連用修飾・連体修飾に関して
4.3. 従属句に関して
5.「疑問」「希求」をめぐって
6.〈不十分な陳述〉とは──山田孝雄の「陳述」イメージ
7. 文成立の決め手が「承認」「疑問」「希求」である原理
8.「文息」概念の提唱
9. おわりに
注
第4章 文的意味としての「承認」の二種
1. はじめに
2. 名詞一語文における「承認」
3. 原理的名詞一語文と不存在承認
4. 動詞文における「承認」
5. おわりに
注
第5章 文・主語・述語をめぐる尾上説
1. はじめに──尾上圭介の文法学説
2. 存在承認と存在希求
3. 述定文・非述定文と主語・述語
3.1. 文的意味を表現する二つの方法
3.2. 疑問文について
3.3. 日本語の主語の規定について
3.4. 感嘆文について
4. 述語をめぐって
5.「文息」の所在
5.1. 「~む」「~(よ)う」
5.2. 「~だろう」
5.3. 「~た」、不定詞、「~か」
5.4. 命令形
6. おわりに
注
第6章 主語・題目語をめぐる三上説
1. はじめに
2. 主語・題目語をめぐる三上説の変遷
2.1. 三上(1942a)の論
2.2. 三上(1953)の論
2.3. 三上(1959)の論
2.4. 三上(1960)の論
2.5. 三上(1963a-c)の論
2.6. 三上(1969b)の論
2.7. 三上(1969c)の論
2.8. 三上(1970)の論
2.9. 主語・題目語をめぐる三上説の変遷(まとめ)
3.「Xは」と「Xが」の異次元性と交渉
4.「主語」の概念規定
5. 主語論の方法
6. おわりに
注
第7章 仁田モダリティ論の変遷
1. はじめに
2. 仁田(1991)から仁田(2009b)までの変遷
2.1. 仁田(1991)の文観と「モダリティ」
2.2. 仁田(1991)以降、仁田(2009b)までの変更
3. 仁田(2009b)までの変更の意味
4. 仁田(2009b)以降の変更
4.1. 客体的モダリティ
4.2. 発話・伝達のモダリティに関して
4.3. 仁田(2014c)、仁田(2014d)、仁田(2016)について
5. 仁田モダリティ論についての提言
6. おわりに
注
第8章 文成立論の学史
1. はじめに
2. 主語・述語は文の必須成分か
2.1. 大槻文彦の論
2.2. 山田孝雄の論
2.3. 尾上圭介、森重敏、川端善明の論
2.4. 三上章の論
3. 文成立の決め手は何か
3.1. 山田孝雄の論
3.2. 時枝誠記の論
3.3. 渡辺(1953)の論
3.4. 芳賀(1954)と渡辺(1971)の論
3.5. 仁田義雄の論
4. おわりに
注
第9章 本書の学史的位置
1. はじめに
2. 主語・述語は文の必須成分か
3. 文成立の決め手は何か
3.1. 尾上説と筆者の論
3.2. 渡辺説と筆者の論
3.3. 仁田説と筆者の論
4. 川端説と筆者の論
5. おわりに
注
結語
注
引用文献
あとがき
索引