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映しと移ろい

文化伝播の器と蝕変の実相

編:稲賀 繁美
他著:新井 菜穂子
他著:滝澤 修身

紙版

内容紹介

既存の学問領域の垣根を乗り越えた先にあるものは何か。

多文化間の文化伝播における接触と変成の実相を、「うつし」「うつわ」「うつろい」のキーワードを頼りに学際的かつ多角的に分析。
従来の思考法の限界をあぶりだし、これまでの比較言語学、比較文化論にとどまらない、次世代の表象文化論、情報理論のモデル構築を目指す!

目次

序文◆稲賀繁美
研究計画および経緯─本書への導入にかえて◆稲賀繁美

─本論文集の基本語彙とその〈文理融通〉への前提的考察─
  「うつし」と「うつろい」を語るコトバ─「情報通信」から垣間見る◆新井菜穂子

第1部 《情報伝達》における恒常性と可変性
 「天正遣欧使節」─スペイン史料からの再考◆滝澤修身 
 見立てと写しのアイヌ戯画─メディアとしての〈夷酋列像〉◆白石恵理 
 楊守敬の借用─知的「発見」には誰が署名するか◆多田伊織 
 偽作と傑作との〈あいだ〉─一九二八と三一年の日華古典名画展開催の意義再考◆範麗雅
 [コラム]文化伝播の経糸と緯糸─ 絣(かすり)織り文化の世界史における伝播経路◆江口久美

第2部 《枠組》と選択的透過性─「バケツ理論」から「ザル理論」へ
 ベトナム漆画の誕生─技術と美術の弁証法◆二村淳子 
 太鼓台が地域社会の意識を刷新する─「新居浜太鼓祭り」探訪◆倉田健太 
 《間─日本の時空間》展─「こと」としての日本の美学◆寺本学 
 「あいだ」から見る「もうひとつ、これから書かれる歴史」
   ─杉本博司の「歴史の歴史」とその周辺の論考◆近藤貴子 
 [コラム]〈あいだ〉をとりもつ仕事─京都芸術センターの取り組みから◆山本麻友美
 [コラム]書画と絵画のあいだ─富山の「竹久夢二画会」と美術ジャーナリスト◆九里文子

第3部 《インドラ網》─因果律から縁起へ
 炎の試練:反植民地主義思想の往還
   ─A.K.クーマラスワーミと柳宗悦との〈あいだ〉を繋ぐもの◆稲賀繁美 
 生と死の間─賢治の刹那滅とライプニッツのモナド的時間を思う◆金子務 
 文学における境界(あいだ)と詩的狂気◆テレングト・アイトル 
 仏教とキリスト教の〈あいだ〉の象徴─太平洋のマリア観音像を巡って◆君島彩子 
 ヤノベ・ケンジ─変容する情報と移り行く形態と◆デンニッツァ・ガブラコヴァ 
 [コラム]Porosite ポロジテ◆糸永・デルクール 光代

第4部 《輪廻転生》─時代錯誤から自己同一性の再定義へ
 東洋人アメリカ発見説とその転生─日本の写しとしてのインカ帝国幻想◆橋本順光 
 すべてはいまもそこに─オーストラリア先住民族美術と転生する祖霊のソングライン◆中村和恵 
 両大戦間のエドゥアール・マネ─生誕百年記念展の転生とアナクロニズム◆藤原貞朗 
 境界者の詩学と民族運動の〈あいだ〉
   ─サロジニ・ナイドゥの末弟ハリンドラナトを中心に◆堀まどか 
 [コラム]メディア技術に潜む精神性(スピリチュアリティ)と輪廻転生◆大西宏志 

第5部 《接触界面》屈曲・吸着・発散
 明治期日本における学知の接近・遭遇・発散
   ─外山正一における社会学の位置を事例として◆鈴木洋仁 
 歴史学と「職場の歴史」との間─第二次大戦後復興期の事例から◆竹村民郎 
 ウェイリー訳『源氏物語』という《接触界面》とジェンダー観の屈折
   ─ヴァージニア・ウルフとマルグリット・ユルスナールをめぐって◆村中由美子 
 [コラム]東西文明の《接触界面》としてのキリスト教文学◆相原雅子 
 [コラム]極東と南米の接触界面─移民船による動植物の〈うつし〉◆根川幸男 
 [コラム]近代日本における鏡の普及と身体意識の変容
        ─大正期の洋間と「文明ノ程度」◆戸矢理衣奈 

第6部 《中動態》受動でも能動でもなく
 イメージが見えてくるとき─存在と現象のあいだの移り行き◆三木順子 
 「語りかける異質性」と能動・受動の二元論を越える契機
   ─アンガス・ウィルソンのみた英訳版『細雪』の最後の二行◆片岡真伊 
 シュリー・オーロビンド・アーシュラム─アートと生活の間
   ─アントニン・レーモンドのインド─ポンディシェリのゴルコンデ宿舎の建築をめぐって◆ヘレナ・チャプコヴァー 
 [コラム]宣教師の日本語文学─宣教と受容の両方通行◆郭南燕 
 [コラム]「ウツワ」作為と無作為の間に陶芸創作の原点を探る◆近藤高弘 
 [コラム]屍体と祖国─カテブ・ヤシンにおける集合性の詩学◆鵜戸 聡 
 [コラム]宗教間対話の桎梏を越えて─〈中動態〉によって見えてきたもの◆髙橋勝幸

第7部 《主体の解体》と《相互性》
 〈あいだ〉の都市、〈あいだ〉の芸術家
   ─イスタンブルのパリ人、レオン・パルヴィッレと仕事の周辺 ◆ジラルデッリ青木美由紀 
 人間と教育のあいだ─映画「ブラックボード」を例に◆宮崎康子 
 日活映画における「自己決定」をめぐるテーマの系譜学
   ─中平康・蔵原惟繕から神代辰巳への流れ◆千葉慶 
 「動物保護管理法」による人・犬・猫の接触の変貌
   ─犬・猫の殺処分は如何にしてはじまったのか◆春藤献一 
 [コラム]洞窟の身体と自己変容─人はなぜ地中の「穴」へと惹かれるのか◆今泉宜子 [コラム]「アニミズム的エートス」と「近代化」の狭間に立たされた日本人
       (アニミズムは「ダークマター」)◆上野景文 
 [コラム]ダウンロード違法化拡大◆山田奨治 

研究会の概要─あとがきにかえて・「書式と書誌についての追記」◆稲賀繁美 
研究会実施日程一覧
人名索引
執筆者紹介
欧文要旨

著者略歴

編:稲賀 繁美
1957年生まれ、国際日本文化研究センター・総合研究大学院大学教授。
最近の主要な著書に『接触造形論』(名古屋大学出版会、2016年)、『絵画の臨界』(名古屋大学出版会、2013年)、編著に『海賊史観からみた世界の再構築』(思文閣出版、2017年)ほか。
他著:新井 菜穂子
1961年生まれ、北京工業大学外国専家。
主要論文:「『尾蠅欧行漫録』に見える「電発」について」『国語語彙史の研究』第38輯、(和泉書院、2019年)、「デジタル時代の複製」『海賊史観からみた世界史の再構築』、稲賀繁美編、(思文閣出版、2017年)、「日本人の空気観 ─電気・空気・雰囲気という漢語をめぐって─」『「心身/身心」と環境の哲学』、伊東貴之編、(汲古書院、2016年)、「『妙貞問答』の書誌について」『妙貞問答を読む』、末木文美士編、(法蔵館、2014年)ほか。
他著:滝澤 修身
長崎純心大学教授、前国際日本文化研究センター客員教授。
La Historia de los Jesuitas en Japón (Siglos XVI-XVII), Universidad de Alcalá, 2010; Los Jesuitas en el Japón de los Samuráis (Siglos XVI-XVII), Digital Reason, 2018.

ISBN:9784909832122
出版社:花鳥社
判型:A5
ページ数:792ページ
価格:12800円(本体)
発行年月日:2019年09月
発売日:2019年09月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB