先代旧事本紀論
史書・神道書の成立と受容
編:工藤 浩
他著:松本 直樹
他著:小村 宏史
内容紹介
偽書には偽書の価値がある。
九世紀初頭に編纂された歴史書・神道書でありながら、不審箇所が多く、近世以降は偽書として低く見られてきた『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』。
記・紀神話享受史の研究において近年脚光を浴びる書をここに再評価。
日本文学・日本史学・神道学・日本語学の四領域から迫る!
『先代旧事本紀』研究のための基本文献リスト収載。
目次
はじめに◆工藤浩
Ⅰ 構想と神話・伝説・系譜
1 神から人への「系統史」―『先代旧事本紀』の構想と構成―◆松本直樹
はじめに/「神代史」各巻の内容/「神代史」各巻の構想/「神代史」の構造
2 『先代旧事本紀』における出雲系神格の位置―「天璽瑞宝十種」の造形に関する一試案―◆小村宏史
瑞宝十種と鎮魂祭、およびウマシマヂ/「蛇比礼」「蜂比礼」「品物比礼」―オホナムチとオホモノヌシ/「生玉」「足玉」「道反玉」「死反玉」―ヌナカハヒメとタケミナカタ/「瀛津鏡」「辺津鏡」―宗像・賀茂の神/「八握剣」について/おわりに
3 地祇本紀のオホナムチ―系譜の分析を中心に―◆伊藤剣
はじめに/大年神流の神統譜/『先代旧事本紀』のオホナムチ㈠―オホナムチの亦名/ 『先代旧事本紀』のオホナムチ㈡―大三輪神との一体化/『先代旧事本紀』のオホナムチ㈢―系譜条にみる倭の神としての性格/杵築大社の祭神/オホナムチを倭の神にした意図/おわりに
4 「天孫本紀」所載系譜をめぐって◆工藤浩
アメノカゴヤマ系譜/ウマシマヂ系譜/ニギハヤヒ系譜への統合/「天孫本紀」所載系譜の受容/おわりに
5 「国造本紀」研究の現状と課題◆鈴木正信
はじめに/江戸時代の研究/幕末から戦前までの研究/戦後の研究/今後の展望/おわりに
コラム 可美真手命とその銅像―明治天皇が求めた臣下の理想像◆小林真美
コラム 『先代旧事本紀』が拓くヤマトタケルの子・武田王の伝説◆小林真美
コラム 記述の小異と皇位継承へのまなざし◆星愛美
Ⅱ 神道思想と享受
6 『先代旧事本紀』と祭祀―『釈日本紀』にみる呪力の受容―◆渡邉卓
はじめに/『釈日本紀』「開題」引用の『先代旧事本紀』/『釈日本紀』「述義」引用の『先代旧事本紀』/祭祀文献としての認識/呪力の移動/おわりに
7 山崎闇斎と『先代旧事本紀』―基礎的考察―◆西岡和彦
はじめに/闇斎の神書評価と『先代旧事本紀』の位置/闇斎が用いた『先代旧事本紀』の底本とその校訂/神書『先代旧事本紀』と注釈書『旧事大成経』/おわりに
8 学問・注釈の世界における『先代旧事本紀』◆福田武史
はじめに/『令集解』引用文存疑/『先代旧事本紀』による『日本書紀』注釈―『釈日本紀』/おわりに
コラム アーネスト・サトウが手にした『先代旧事本紀』◆小林真美
Ⅲ 写本と表記
9 『先代旧事本紀』の諸本研究をめぐる現状と課題◆松本弘毅
はじめに/諸本一覧とこれまでの研究/想定諸写本系統図/各写本について(一) ⑨石川忠総本・⑩卜部一本/各写本について(二)卜部兼右本/各写本について(三)卜部兼右本系諸本/各写本について(四)その他の兼永本の転写本/未検討写本/行方不明写本/おわりに―旧事本紀の写本系統を追究する意味
10 『先代旧事本紀』における熟字と単漢字―「誕生」と「生」をめぐって―◆奥田俊博
問題の所在/『先代旧事本紀』の「誕生」の用法と『日本書紀』の対応記事/漢語「誕生」の用法と『先代旧事本紀』/『先代旧事本紀』における「誕生」と「生」
コラム 今後の研究課題について◆工藤浩
『先代旧事本紀』研究のための基本文献リスト
あとがき◆工藤浩
執筆者紹介