古代日本文学が物語る婚姻・出生伝承
著:青柳 まや
内容紹介
伝承はどのように生み出され、なぜ記されたのか。
古事記、日本書紀、風土記、万葉集、日本霊異記などを対象に、王権神話に関わる婚姻や、異類婚姻譚、異常出生譚を取り上げ、それぞれを文学史的流れの中に位置づける。
個別の文献や話型の枠を越えて広く見渡し、伝承の背後に隠された古代人の世界観を解き明かす。
目次
凡例
序章 伝承を読み解く方法―本書の目的と構成―
一 本書の目的と研究方法
二 取り上げる作品とその意味について
三 本書の構成と各章で取り上げる伝承の概要
第一章 『古事記』『日本書紀』の神々に見る婚姻伝承の差異
第一節 山の神オホヤマツミ―女神から男神への成立事情―
一 はじめに
二 『日本書紀』のオホヤマツミ
三 『古事記』のオホヤマツミ
四 『日本書紀』と『古事記』におけるオホヤマツミ像の比較
五 まとめ
第二節 天孫の母ヨロヅハタヒメ―降臨神話の系統との関わり―
一 はじめに
二 ヨロヅハタヒメの登場場面の確認
三 ヨロヅハタヒメの神名の差異と天孫降臨神話の展開
四 「栲」の語の意味と「栲幡」の名について
五 まとめ
第二章 天皇の婚姻・出生伝承と神話の再利用
第一節 大后ヒバスヒメ―新しいタイプの皇后誕生―
一 はじめに
二 『日本書紀』との比較
三 「大后」の呼称
四 ヒバスヒメの薨去について
五 ヒバスヒメとサホビメ
六 サホビメの排除
七 まとめ
第二節 醜女マトノヒメ―神話を書き換え利用する王権の物語―
一 はじめに
二 マトノヒメの位置
三 イハナガヒメ神話との比較
四 「見畏」の語について
五 サホビメとの関係
六 マトノヒメの死
七 まとめ
第三節 采女童女君一夜孕みの話型から排除されゆく女性―
一 はじめに
二 春日和珥氏について
三 采女について
四 童女君の名称と人物像ついて
五 一夜孕みと父親の疑い
六 父親の判明
七 まとめ
第三章 『風土記』に見る巫女的女性の婚姻・出生伝承
第一節 ワキイラツメの逃走婚―『播磨国風土記』比礼墓説話―
一 はじめに
二 〔Ⅰ〕景行天皇の下向について
三 〔Ⅱ〕ワキイラツメの婚姻について
四 〔Ⅲ〕ワキイラツメの死と墓について
五 まとめ
第二節 異類婚の失敗―『肥前国風土記』褶振説話―
一 はじめに
二 褶振説話異伝との比較
三 〔Ⅰ〕鏡の渡段の考察
四 〔Ⅱ〕褶振峰段の考察
五 〔Ⅲ〕後日譚の考察
六 まとめ
第三節 母子の別離と在地信仰の終焉―『常陸国風土記』晡時臥山説話―
一 はじめに
二 説話の舞台
三 ヌカビコとヌカビメ
四 正体不明の男の訪問
五 子の出生
六 子の成長
七 母子の別離
八 ヌカビコ震殺
九 社の造立と祭祀形態の変化
十 まとめ
第四章 始祖・神婚伝承から『日本霊異記』仏教説話への変容
第一節 仏舎利を握った娘―信仰の力を示す装置―
一 はじめに
二 女子の出生
三 仏舎利の出現
四 女子の死
五 説話解釈
六 まとめ
第二節 ヨロヅノコの死―仏教信仰の拡大と非仏教信仰の衰退―
一 はじめに
二 歌謡の流行
三 ヨロヅノコについて
四 正体不明の男の求婚
五 ヨロヅノコの死
六 鏡作坐天照御魂神社の祭神について
七 説話解釈
八 まとめ
第三節 舎利菩薩の誕生―民衆教化のための説話生成―
一 はじめに
二 妻の出産
三 肉塊の出生と女子の誕生
四 女子の成長と出家
五 尼と二人の僧侶
六 大安寺の戒明
七 舎利菩薩
八 説話解釈と自土意識
九 まとめ
第四節 石の出生―自土意識と共同体伝承―
一 はじめに
二 県の氏の女に関する考察
三 石の出生
四 父の判明
五 説話解釈
六 まとめ
第五章 『万葉集』巻第十六に歌われる古代人の婚姻観
一 はじめに
二 当該歌の人物について
三 「嗤」について
四 歌の表現について
五 左注について
六 婚姻と美醜
七 まとめ
終章 古代文学史の中の婚姻・出生伝承と課題
一 はじめに
二 第一章について
三 第二章について
四 第三章について
五 第四章について
六 第五章について
七 婚姻・出生伝承の文学史的な流れ
八 今後の課題
初出論文一覧
参考文献
後書き
索引(主要語彙/神名・人名/研究者名)