闘乱の日本古代史
つくられた偉人たち
著:松尾 光
内容紹介
視点を変えて、古代史の常識を問いなおす。
「乙巳の変」「白村江の戦い」「壬申の乱」など古代の争乱において、今まで常識とされてきた事象ははたして正しいのか。
蘇我入鹿、中大兄皇子、大海人皇子、藤原不比等、阿弖流為、桓武天皇、空海……偉人として評価されてきた古代びとは、当時の人々の目にはどう映り、時代のなかでどのように生きてきたのか。
古代社会の史実を丹念に踏まえることで、これまで見えてこなかった偉人たちの姿が浮かびあがる。
目次
はじめに
第一章 古代東アジア世界の激動と争乱
卑弥呼のほのかなる面影─倭姫命
一 倭姫命という人物
二 「倭姫命=卑弥呼」説の根拠
三 倭姫命説は当たっているか
聖徳太子時代の課題
一 中央集権体制の創出をめざして
二 仏法興隆の主導権奪取を目指して
三 大王家の威信回復を目指して
大化改新前後の国造とその周辺
一 改新政策と国造の去就
二 郡司登用氏族の例証
三 登用された郡司氏族の実態
四 戸籍記載の人名をめぐって
『日本書紀』の乙巳の変を読む
一 入鹿を宮に招く
二 暗殺の準備と躊躇
三 入鹿の弁明と中大兄皇子の糺弾
四 古人大兄皇子の驚き
五 蘇我蝦夷の自殺
蘇我入鹿と乙巳の変─ゆがめられた敗者像
一 乙巳の変の舞台設定の謎
二 中大兄皇子の断罪と入鹿の発言の謎
三 古人大兄皇子擁立の実否
四 山背大兄王殺害事件の謎
五 入鹿暗殺の理由は何か
白村江の戦い─中大兄皇子は敗北したのか
一 予定されていた戦争
二 白村江の戦いへの道
三 中大兄皇子が考えていた戦略
白村江の戦いと朝鮮三国
一 白村江の戦いの様相
二 高句麗の国内事情
三 新羅の国内事情
四 百済の国内事情
大友皇子とその後裔
一 大友皇子の立場
二 大友皇子の即位
三 大友皇子と壬申の乱
四 大友皇子の没後と末裔
天武天皇の天文・遁甲
一 空前の勝利
二 天帝の意を知る占い
三 壬申の乱で何を占ったのか
古代争乱の軍事学
一 邪馬台国から大和王権成立まで
二 大和王権の外征と内乱
三 律令国家と軍団兵士・軍事施設
空前絶後の簒奪王・天武天皇─悪の歴史(一)
一 皇太子だったとは、ほんとうか
二 挙兵は正当防衛といえるか
第二章 天平政界の再編と暗闘
悪魔の守護神・藤原不比等─悪の歴史(二)
一 長親王の立場から
二 大夫氏族の立場から
三 庶民の立場から
天平という時代
一 「天平」時代の時期とその理念
二 天平を冠した四つの時代の特色
気づかぬ聖帝・聖武天皇─悪の歴史(三)
一 未曾有の疫病流行にどう対処したか
二 眼前で立て続けに起きる政変をどう捌いたか
女帝確立への階梯─中継ぎから自立へ
一 皇后から天皇へ
二 女帝としての仕事
三 変質する女帝
四 女帝の制度的確立を目指して─井上皇后の謀反
桓武天皇の即位事情とその政治構想
一 渡来系氏族と白壁王
二 山部王の登極
三 桓武天皇の政治構想
桓武天皇はなぜ祟りと信じたのか
一 怨霊という認識
二 早良親王の冤罪と死
三 桓武天皇の怨霊思想
蝦夷社会と阿弖流為
一 蝦夷とはどういう存在か
二 東北動乱はどのように推移したか
三 東北地方での軍事衝突は、なぜ起きたのか
四 阿弖流為の戦い
空海と高野山をめぐって
一 空海の誕生と生育
二 空海の転身
三 恵果の伝法と帰朝
四 高野山入部
余章
知られざる年号
一 元号はどういう広がりを見せたか
二 日本の私年号にはどのような意図があるか
三 ありえない年号・あるはずの年号とは
古代天皇系図
あとがき