庭園思想と平安文学
寝殿造から
著:倉田 実
内容紹介
寝殿造の「庭」を新たな視点で捉えなおす。
『源氏物語』『枕草子』『うつほ物語』『伊勢集』『和泉式部集』ほか、王朝文学作品に描かれた様々な「庭」。貴族は庭に何を求めていたのか、史実と虚構から考察。庭園史や考古学の知見も得て作品中の庭を捉え、平安文学を読み解く。
目次
凡例
序 平安時代の庭
Ⅰ 神仙庭園から浄土庭園へ
第1章 『源氏物語』の神仙庭園― 「胡蝶」巻の六条院―
はじめに
一 「胡蝶」巻の船楽の段
二 春秋優劣論の場としての庭―天・地・人の調和世界
三 庭への視界―建物から
四 庭への視界―南池・中島から
五 春の町の植栽―百花繚乱
六 地被としての苔の植栽―春の緑色
七 南池・中島と築山―大海の象徴
八 船楽と舟遊び―南池の興
九 舟中歌会の和歌表現―庭褒め
十 仙境幻想―庭の理想性
十一 篝火の庭―夜の儀式
おわりに
第2章 『狭衣物語』の浄土寺院と浄土庭園―道長の法成寺と頼通の平等院の影―
はじめに
一 嵯峨の院の御堂
二 亀山のいかめしき寺
おわりに
Ⅱ 実在した寝殿造の庭
第3章 藤原敦忠「音羽山荘」の庭―『伊勢集』の遣水の滝を詠む和歌―
はじめに
一 伊勢の音羽山荘の歌
二 小野の音羽・山科の音羽・清水寺の音羽
三 遣水について
四 山荘と遣水
五 音羽山荘の遣水と滝
六 遣水を詠む和歌
七 伊勢詠の影響
おわりに
第4章 藤原頼通創建「高陽院」の池庭
はじめに―高陽院の時期区分
一 高陽院造営の次第
二 高陽院池庭の景観
三 高陽院の立石・滝・泉
四 高陽院の四つの池
五 高陽院水閣歌合
おわりに
第5章 再建「高陽院」について
はじめに
一 再建の次第
二 再建高陽院新宅移徙は長久二年四月以降か
三 再建高陽院の池庭
四 再建高陽院の建物
おわりに
Ⅲ 平安朝女性文学と前栽
第6章 歌人の庭―『伊勢集』から―
はじめに
一 前栽作り
二 前栽による隣家との交渉
三 前栽の贈答
四 前栽に書きつけた歌
五 前栽の花見
六 物思いを誘う前栽
おわりに
第7章 家の女の庭―『蜻蛉日記』から―
はじめに
一 前栽の「つくろひ」
二 前栽の贈答
三 庭への視線
おわりに
第8章 女の家の庭―『和泉式部集』『和泉式部続集』から―
はじめに
一 前栽の風情を詠む連作歌群
二 花は心の見なし・花ぞこの世の絆し
三 荒れたる宿
四 草葉へのまなざし
五 孤愁を誘う庭の花
六 前栽の贈答
おわりに
第9章 宮廷の庭―『枕草子』から―
はじめに
一 木守という者
二 牛を繋ぐ木
三 庭に下りる女房たち
四 前栽の露の美
五 池の水草と蓮
おわりに
Ⅳ 物語文学の庭
第10章 音楽の庭―『うつほ物語』仲忠の三条京極邸―
はじめに
一 「楼の上・上」巻以前の庭
二 三条京極邸の構想
三 三条京極邸のプラン
四 三条京極邸移徙
五 「合はす」「合ふ」秘琴伝授
六 秘琴伝授披露
おわりに
第11章 春秋優劣論の庭―『源氏物語』の六条院―
はじめに
一 春秋優劣論前史
二 「薄雲」巻の春秋優劣論
三 「少女」巻の春秋優劣論
四 「胡蝶」巻の船楽
五 秋好中宮の季の御読経
六 「御法」巻の紫上追悼歌
おわりに
第12章 紅梅の庭―『源氏物語』の二条院と紫上の最期―
はじめに
一 紫上と春
二 紅梅史
三 末摘花と紅梅
四 紅梅の色と香―「梅枝」巻
五 白梅にかかわる女君
六 「幻」巻の紅梅
七 匂宮三帖の匂宮と紅梅
八 宇治十帖の紅梅
おわりに
初出一覧/引用図版出典/あとがき
歴史人名索引/歴史文献書名索引/庭園・建築関係事項索引