第1部 重加算税の賦課要件
第2部 取消判決・裁決
事例1 申告手続の委任を受けた代理人が、仮装行為により納税額を零とする申告をする一方、納税者に対しては納税額が発生しているとして、納税額を納税者から受領したことについて、納税者が、故意に、所得の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装したものとはいえないとして、重加算税を賦課することはできないとされた事例
(大阪高裁平成3年4月24日判決・TAINS Z183-6701)
事例2 法人の経理部長が代表者の意図するところに合わせて上場株式の売付を代表者名義の口座で行ったように移し替えた上、当該株式の売却日以降にその取得資金を代表者に対する貸付金として経理したことについて、代表者に、法人に帰属するものをことさら代表者個人に帰属するものとして仮装する意図ないし認識があったとするには無理があるとして、重加算税の賦課決定処分が取り消された事例
(東京高裁平成5年3月24日判決・TAINS Z194-7108)
事例3 土地建物の売買価額を1億7,000万円とする当初の契約は白紙撤回されたものであり、納税者は当該土地建物の売買代金を、代替物件の納税者なりの評価額である9,000万円と認識していたと認められるから、税金分として現金で取得した部分を除き、事実の隠ぺい・仮装をしたことには該当しないとして重加算税の賦課決定処分の一部が取り消された事例
(東京高裁平成8年5月13日判決・TAINS Z216-7726)
事例4 納税者が3区画の土地を譲渡したにもかかわらず、1区画分のみを確定申告したことについて、取引及び登記等に事実の隠ぺい又は仮装は認められず、調査時にも事実の把握を困難にさせるような特段の行為は認められないなどとして、重加算税の賦課要件は満たさないとされた事例
(平成10年5月28日裁決・審判所HP)
事例5 他社に賃貸中の建物で、自己の居住用の一部として従前どおり使用していたものが居住用財産の譲渡所得の特例の適用対象となる「居住用家屋」の範囲に含まれないにもかかわらず、納税者はこれに含まれるものと認識し、その認識に基づき売買契約書に当該建物の使用状況を記載したことのみをもって、隠ぺい又は仮装に当たるということはできないとされた事例
(平成10年9月30日裁決・審判所HP)
事例6 法人が木材の輸入取引において仕入れに計上した取引額の一部に、当事業年度以外の事業年度の損金の額に算入すべきものがあるが、当該金額については、架空、金額の水増し又は重複計上などによって過大に計上したものとは認められず、損金算入時期の誤りによるものと認められるから、隠ぺい仮装したことには当たらないとされた事例
(平成12年1月31日裁決・審判所HP)
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事例50 売上金額の一部とそれに対応する必要経費の金額を含めなかったほか、適当な金額を記載した収支内訳書を作成したことについて、納税者に当初から過少申告の意図があったと認められるものの、隠ぺい仮装と評価すべき行為とは認められず重加算税の賦課要件を満たさないとされた事例
(令和元年6月24日裁決・審判所HP)