出版社を探す

寺田寅彦「藤の実」を読む

他著:山田功
他著:松下貢
他著:工藤洋

紙版

内容紹介

ある日、寺田家の庭で起きた藤の実の一斉爆発、同じように上野の清水堂で遭遇した銀杏の一斉落葉、そして同時期に起きた娘の怪我や家族の事故…。随筆「藤の実」は、これら一連の出来事を通して、寺田寅彦が物事の偶発する「潮時」について考察をめぐらした短い作品です。
本書では、この名品を物理学、植物学、文学(俳諧論)のそれぞれの立場から現代的な視点で読み直し、その本質を問い直します。関連付録には、寅彦門下 平田森三が書いた入門記事のほか、随筆の背景がわかる同時期の寅彦作品(スケッチ入り)も数篇収録。寅彦日記や書簡から読み解いた詳しい注釈も付け、口絵では、著者の一人が実際に藤の実の射出実験をした記録写真や、寅彦の論文草稿・メモの写真も紹介します。
「藤の実」では、流感の流行や地震の群発、山火事の多重発生、その他、事件事故の多発など、「縁起が良くない」だけでは説明のつかない様々な出来事についても寅彦流の鋭い視線が注がれます。偶然と必然の間に潜むものとは何か、本書は、物事の「潮時」に切り込んだ寺田物理学のエッセンスと寅彦の自然観に迫ります。本随筆は国語教科書にも載った寅彦作品です。

「寅彦のこの随筆の趣旨は、自然界や日常生活で引き続いて起きるいろいろな現象や事件が偶然なのか必然なのかという率直な疑問の提起である。」(本書「まえがき」(松下貢)より)

目次

(口絵には寺田寅彦のメモや共著論文草稿など収録)

●まえがき

●藤の実(吉村冬彦)

●寺田寅彦の「藤の実」を読む(山田功)

●「藤の実」によせて:偶然と必然のはざま(松下貢)

●植物生態学からみた「藤の実」(工藤洋)

●寺田寅彦「藤の実」に見る自然観(川島禎子)

●付録
藤の莢の不思議な仕掛(平田森三)
破片(抄)(吉村冬彦)
雪子の日記(寺田寅彦)
鎖骨(吉村冬彦)

●寺田寅彦 略年譜

著者略歴

他著:山田功
1941年、名古屋市生まれ。愛知県立高校教員(物理)を経て現在、寺田寅彦記念館友の会副会長、および中谷宇吉郎雪の科学館友の会幹事。主な著書に『教科書に掲載された寺田寅彦作品を読む』(リーブル出版)、『本と私』(岩波新書、「寺田寅彦の自想本」を執筆)がある。2006年に「セロファンで折った雪の結晶を偏光板でみる装置」で学研科学大賞奨励賞を受賞。2019年には写真展「彩氷」(薄氷の偏光写真)を中谷宇吉郎雪の科学館で開いた。
他著:松下貢
1943年生まれ。東京大学大学院理学系研究科物理学博士課程修了。理学博士。日本電子開発部、東北大学助手、中央大学教授を歴任。中央大学名誉教授。専門は複雑系科学。主な編著書に、『統計分布を知れば世界が分かる―身長・体重から格差問題まで』(中公新書)、『フラクタルの物理Ⅰ・Ⅱ』『物理学講義』シリーズ(裳華房)、『生物に見られるパターンとその起源』(東京大学出版会)などがある。趣味は簡単な肴を作り、ハタハタ寿司、豆腐のもろみ漬けなどの発酵食品はネットで取り寄せ、全国各地の地酒で家飲みすること。
他著:工藤洋
1964年生まれ。京都大学大学院理学研究科植物学専攻博士課程修了。博士(理学)。米国スミソニアン環境研究センター研究員、東京都立大学理学部生物学科助手、神戸大学理学部生物学科准教授を歴任。京都大学生態学研究センター教授。専門は植物生態学、分子生態学、植物の季節応答のしくみを研究。主な編著書に『エコゲノミクス―遺伝子から見た適応』がある。趣味は登山と自然観察。

ISBN:9784908941313
出版社:窮理舎
判型:4-6
ページ数:132ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2021年12月
発売日:2021年12月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PD