いま一度、医療や介護について真剣に考えてみてほしい ― 「はじめに」より
日本は世界一の高齢社会を迎え、医療や介護の需要は膨らみ続けています。医療技術や医療サービスは日々進化し、患者の要望に応えようとしてきました。半面、医療側には高齢化の進行が速すぎて対応しきれない、もしくは旧態依然とした古い体質が災いし、患者さんを幸せにする医療が提供できていない面もあります。
一方で、患者さん側にも医療への盲信や知識不足の為に、人生後半の生き方を無駄に過ごしている面があるように思えるのです。病院や医者の言いなりになり、必要でない薬を処方されていたりします。いつの間にか医療に依存し、自分の望みや考えがどこにあったのかもわからなくなり、意見も言えなくなっていないでしょうか。
誰にでも死はいつか訪れます。あなたやあなたの家族は、残された人生の時間をいかに生きるのか考えたことがあるでしょうか。生き生きと自分のやりたいことをやって過ごすのか、それとも毎日の大部分を病院通いと薬の整理に費やすのか。ぜひ、あなたも患者という立場から、いま一度医療や介護について、考えてみてほしいのです。
本書の充実した構成のご紹介 ~ あくまでも、患者さん目線を大事にしました
本書は、こうした自分の健康と親の老後を考える60歳以上の方々に読んでいただきたくて筆を執りました。人生後半に生き生きと人生のステージを歩んでもらうために、7つの壁を示しながら、医療との上手な付き合い方を伝授いたします。
■第1の壁・「健康診断」
誰もが当たり前のように受けている健康診断や検査は、ほんとうに必要なものなのでしょうか。健康であるにもかかわらず、異常があるかのように錯覚していないでしょうか。油断していると、たちまち病名をつけられ、医療のベルトコンベアに乗せられてしまいます。
■第2の壁・「医者」
私たちは「医者の言うことは100%正しい」と無意識に感じていないでしょうか。難しい試験を突破したのだから、間違ったことを言うはずはないと考えていませんか。医者にもわからないことがたくさんあることを、知ってほしいと思います。病名がつけられず、診療方法もはっきりしない場合が多々あるものです。
■第3の壁・「薬」
病院で処方される薬は、すべてほんとうに必要なものなのでしょうか。特に高齢者ほど多種類の薬を服用しています。医者はそのことを理解して、処方しているでしょうか。薬に依存しない生き方を考えてみます。
■第4の壁・「節制」
生活習慣病を心配するあまり、好きなお酒やタバコをやめ、異性への関心も諦め、自動車の運転も家族から止められていませんか。65歳を過ぎたら、好きなことをやって生きた方が長生きするかもしれません。自分の「第2の人生」について考えてみましょう。
■第5の壁・「うつ・認知症」
意外に多いのが老人性うつが認知症と誤診される例。老化が進めば脳機能も衰えてきますし、生きる目的を見失えばだれもが心を閉ざしてしまいがちです。うつと認知症の違いを正しく知り、壁を突破する方法を考えます。
■第6の壁・「介護・入院」
60歳を過ぎれば、誰もが親の介護に直面し、また自らも大きな病気を抱え入院するケースもあります。親の最後は病院でお世話になりますか、それとも自宅で看取りますか。いざという時のために、いまからシミュレーションしておくことをお勧めいたします。
■第7の壁・「死」
私自身も60代の半ばに差し掛かり、親しくしていただいた先輩や友人を亡くしました。死は突然訪れます。考えもしないような事故で、命が絶たれることがあります。誰にでも訪れる人間の「死」について考えていきます。
7つの壁のどれもが、これから乗り越えなければいけない壁です。あなたのちょっとした知識や決断が、これからの人生を左右することになるのです。