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シリーズ日本語の醍醐味 5

没落時代

著:尾崎 士郎

紙版

内容紹介

【2023年5月現在、新本が定価(2,600円+税)で購入可能】

「滝は没落の象徴である。その没落がいかに荘厳であるかということについて説こう。」(「滝について」より)
ひたひたと迫りくる没落の翳。落魄への共感。坂口安吾がそのみずみずしい「香気と悲しみ」を讃えた知られざる新興芸術派、尾崎士郎の切情あふれる短篇集。 ※雑誌『没落時代』の復刻ではありません。

 生家の没落、兄の自殺、宇野千代・梶井基次郎との恋愛事件……。放浪に次ぐ放浪のなかで、尾崎士郎は自分の心のありようを模索する純粋で新しい、しかも狂的で切ない短篇をほそぼそと書きつづけた。「人生劇場」の思わぬ大ヒットのかげで、埋もれてしまった新興芸術派としての資質は、これらの短篇で再発見されることだろう。
 終生の友・坂口安吾が「素直で、豊かで、香気と悲しみにみち、年少多感の詩嚢からちよつとこぼれた数滴のすぐれた魂の香りを遺憾なく花さかしめてゐる」と評して自ら編纂した『秋風と母』所収全篇と、おもに戦前の単行本初収録作品を多数収めた全27篇。誰も読んだことのなかった尾崎士郎は、没落に淫し、詩の海を漂っている。

※七北数人氏を監修者に迎えた「シリーズ 日本語の醍醐味」は、“ハードカバーでゆったり、じっくり味わって読みたい日本文学”をコンセプトに、手に汗握るストーリーではなく、密度の濃い文章、描写力で読ませる作品、言葉自体の力を感じさせる作品を集成してゆきます。

目次

滝について
獄中より
予は野良犬の如くかの女を盗めり
賭博場へ
影に問う
三等郵便局
秋風と母
山峡小記
河鹿
鶺鴒の巣
秋日抄
鳴沢先生
微妙なる野心
酔抄記
海村十一夜話
秋情抄
蜜柑の皮
落葉と蝋燭
侠客


春の夕暮
林檎
春風堤
馬込村
「没落時代」
没落主義に関して
 
解説/七北数人

著者略歴

著:尾崎 士郎
1898年、愛知県幡豆郡横須賀村(現西尾市吉良町)生まれ。早稲田大学政治経済科に在学中、社会主義運動に身を挺し除籍される。1921年、処女作「獄中より」が『時事新報』の懸賞短篇小説にて2位入選。同年、長篇『逃避行』を改造社から刊行。1923年、宇野千代と結婚。1927年、伊豆湯ヶ島で知り合った梶井基次郎と千代の関係を疑い、夫婦仲に亀裂が生じる。1929年、千代と別れ、『没落時代』を創刊。1933年、「人生劇場」の新聞連載開始。これが単行本になると、劇化、映画化が相次ぎベストセラーになる。日中戦争以後、従軍記者として戦地へ赴くことが多く、戦後、戦争責任を追及され公職追放に遭う。1964年、腸癌により死去。 『人生劇場』で文芸懇話会賞、『天皇機関説』で文藝春秋読者賞を受賞。戦前に12巻本の選集が編まれ、没後、全集が刊行された。

ISBN:9784904596074
出版社:烏有書林
判型:4-6
ページ数:328ページ
定価:2600円(本体)
発行年月日:2013年07月
発売日:2013年07月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ