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森鴎外の西洋百科事典

『椋鳥通信』研究

著:金子 幸代

紙版

内容紹介

雑誌「スバル」において、森鴎外は1909年(明治42)から1913年(大正2)にわたり、『椋鳥通信』(計55回)を連載した。その内容は文壇動向だけにとどまらず多様で幅広い欧米各地の情報を伝えている。その情報源となったものはドイツの新聞「ベルリナー・ターゲブラット」の記事であり、梗概・翻訳の名人である鴎外がそれをもとに自分の見解をうまく盛り込み、同時代の西洋の社会、文化、政治を紹介している。その記事は作家としての鴎外の秘密、また人間鴎外の素顔も窺える重要で興味深い「作品」である。本書はその『椋鳥通信』の研究書であり、『椋鳥通信』に関連する論文5篇と、巻末に資料として「ベルリナー・ターゲブラット」の記事と雑誌「スバル」および『鴎外全集』第27巻とを対照した表を付す。

目次

◇はじめに
◇『椋鳥通信』における鴎外の引用戦略―「市民的公共圏」を求めて
はじめに/一 鴎外の引用戦略/二 「市民的公共圏」/三 『椋鳥通信』における政治問題/四 原文引用の戦略
◇森鴎外の『椋鳥通信』―『さへづり』・『沈黙の塔』へ
一 文芸誌「スバル」への連載/二 「無名氏」とは誰か/三 女性投稿雑誌「女子文壇」への転載/四 『さへづり』と『椋鳥通信』/五 革命と大逆事件・『沈黙の塔』
◇二十年後の海外通信員―『舞姫』と『椋鳥通信』
一 紀行文/二 留学の目的/三 「民間学」と海外通信員/四 『椋鳥通信』が伝えようとしたもの/五 エリスと海外通信
◇森鴎外とミュンヘン画壇―『独逸日記』から『椋鳥通信』まで
一 ミュンヘンでの出会い/二 「美術都市」ミュンヘンの栄光と没落/三 帰国後の原田直次郎と鴎外/四 『椋鳥通信』の美術記事と青春の残照
◇森鴎外のドイツ観劇体験―日本近代劇の紀元
はじめに/一 ライプツィヒ時代/二 ドレスデン時代/三 ミュンヘン時代/四 ベルリン時代と帰国後の演劇への関心
◇あとがき
◇初出一覧
◇資料 『椋鳥通信』の原典「ベルリナー・ターゲブラット」(1911年10月〜1912年12月)

著者略歴

著:金子 幸代
お茶の水女子大学大学院修士課程修了、一橋大学大学院博士後期課程満期退学、富山大学名誉教授。専攻は日本近代文学・比較文学。主に森鴎外研究(特にドイツ留学時代、および日独の女性解放運動との関係)、女性雑誌の研究、映画と文学の文化史的研究を行う。
主要著書=『鴎外と〈女性〉―森鴎外論究』(1992年、大東出版社)、『鴎外と神奈川』(2004年、神奈川新聞社)、『鴎外と近代劇』(2011年、大東出版社)、『鴎外女性論集』(編・解説、2006年、不二出版)、『『女子文壇』執筆者名・記事名データベース』(監修・解説、2011年、不二出版)、『小寺菊子作品集』 (編集・解説、2014年、桂書房)等。

ISBN:9784903251158
出版社:鴎出版
判型:A5
ページ数:244ページ
価格:4500円(本体)
発行年月日:2019年05月
発売日:2019年05月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DNL
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ