西晋一郎の思想
広島から「平和・和解」を問う
著:衛藤 吉則
紙版
内容紹介
本書は、「京都の西田(幾多郎)、広島(文理大)の西」と称された倫理学者西晋一郎の思想を「平和・和解」の視点から読み解いたものである。西は、戦前・戦中にわが国の国体論を導く一方、大戦末期に論語を題材に天皇陛下への御進講で、「食」や「兵」に比し「信」の重要性を訴えた。しかし、戦後は、西田の思想がひきつづき高い評価を得るのとは逆に、西の思想は、「国家主義的イデオロギー」の保持という漠たる指標のもと、意識的・無意識的に〈封印〉されていく。本書では、西が中心に据える〈虚〉という概念に注目し、彼の思想を、戦前における東西の思想的蓄積と発展のうちに位置づけ直し、「平和・和解」理論としての可能性を問うた。第二部では、未整理であった広島大学所蔵の膨大な西晋一郎関連資料の目録をデータ化し収録した。