「ヌース自分史選書」の記念すべき第1回目の作品
「特集インタビューを対談と書いたのは、何号目かの特集インタビューが終わった後で、「これは対談だよね」と言われたことに起因します。先生からそう言われて、確かにそんな号もあったと思っていました。振り返ってみると、対談っぽくなった号は私がしっかりと準備をして、その学者の著書の内容をある程度理解し、その先生との相性的なことも関係して話が噛み合ったり議論っぽくなったりしていました。その真逆のケースもあって、私の能力不足で先生の話される内容についていけず、ただインタビュー項目を読みあげるだけになった号もありました。言い訳になりますが、インタビュー依頼書を出して断られた場合もあり、そんな時はまた、他の学者を探して、その著書を読み、インタビュー依頼書を作成して発送しなければなりません。
定期刊行物ですから、毎号発行日が決まっていますので、特集テーマに関する準備やその学者の著書内容を理解する時間に皺寄せがきます。全く準備ができずにインタビューに臨むことになってしまったこともあります。先生の著書をほとんど読まずに臨めば、どうしても話についていけなくなる。そんな時は、「対談」とは正反対の、ただ、ひたすら、分からないまま、分かったような顔をして(頷きながら)、お話を聞くだけになってしまうのです。ただ、それでも、録音はしっかりと残っていますから、テープ起こしをしてインタビュー原稿に纏めていると大いに勉強になりました。学校の勉強でいえば、予習をせずに復習をみっちりするという形になります。日本最高峰の学識経験者のお話ですから、超一流の名講義を文字にしていくことで、世の中のためになる素晴らしいインタビュー記事になりました。そんなこともあり、その時の私の状況によって、とても「対談」にはならないということが一つと、もう一つは対談として依頼書を書くと「対談相手は誰だ?」と聞かれた場合に困るな、というのがありました。「私(宮本明浩)です」と答えても、見ず知らずの偉大な学者にとって「はぁ?」ということになってしまう。「何がご専門ですか?」と聞かれる可能性もある。「どういうご経歴ですか?」と聞かれる可能性もある。全て正直に答えると、まず、ご承諾は得られないでしょう。しかし『ロゴスドン』編集部から、先生のご専門の何々についてインタビュー をさせて頂きたいという依頼なら、バックナンバーさえしっかりしていればご承諾が頂けます。
内容が対談っぽくなった時は、私自身の充実感というのは物凄くありました。正に、私にとっての珠玉の体験になったと言ってもいいでしょう。どの学者が対談になったのかは、特集インタビューを収載した書籍『学問の英知に学ぶ』(ヌース出版)でご確認頂ければと思います。第一巻から第六巻まで発行させて頂きましたし、全巻在庫がありますので、お買い求め頂ければ幸いです。このシリーズには、諸学問の総称としての哲学を前提とした日本最高峰の学者の英知が凝縮されています。」
(本文<偉大な学者との対談は珠玉の体験>より)