フェルメールの絵画空間:図学から読み解く
著:佐藤 紀子
内容紹介
フェルメールの描いた情景を、私たちはどのように感じとっているのだろうか。
画面に残された画家の信念と幾何学とを図学的な手法で結びつけ、
絵画の規範としての見えない秩序を構図から読み解こうとする試論。
目次
【目次】
はじめに
第 1 章 絵画と透視図法
立ち現れる仮象空間
1 透視図法と構図
1.1 透視画の種類
1.2 透視図法 ――視点と画面
1.3 陰影の透視図
2 視覚経験の可視化
2.1 俯瞰的空間 ――チマブーエ
2.2 経験的透視図法 ― ―ジョットの絵画空間
2.3 透視図法の萌芽 ― ―ウゲートの絵画空間
3 仮想の建築
3.1 アルベルティの透視図法
3.2 ピエロ・デッラ・フランチェスカの透視図法
3.3 理想の建築 ― ―ピエロ・デッラ・フランチェスカの絵画空間
4 優れた技法書
4.1 「距離点」とは何か ― ―パノフスキーの解釈
4.2 ブッカーの解釈
4.3 床の境界線
4.4 架空の距離点
4.5 日常風景に紛れ込む異空間
5 絵画を分析する
5.1 分析図の作成
5.2 分析図をみる
第 2 章 フェルメールの絵画空間
日常をトリミングする
1 フェルメールの構図
1.1 類型的な構図
1.2 近景・中景・遠景 ― ―《モナ・リザ》と《絵画芸術》
1.3 パラメデスの床
1.4 光景を描く
2 近景に描く
2.1 《マリアとマルタの家のキリスト》
2.2 《ディアナとニンフたち》
2.3 《取り持ち女》
2.4 《眠る女》
3 奥行きを描く
3.1 《窓辺で手紙を読む女》
3.2 《恋文》
3.3 《ヴァージナルの前に座る女》
3.4 《信仰の寓意》
3.5 《手紙を書く女と召使い》
3.6 《絵画芸術》
4 距離の違いを描く
4.1 《稽古の中断》と《士官と笑う娘》
4.2 《牛乳を注ぐ女》と《水差しを持つ女》
4.3 《真珠の首飾り》と《リュートを調弦する女》
4.4 《青衣の女》と《天秤を持つ女》
4.5 《天文学者》と《地理学者》
5 タイルの床を描く
5.1 《二人の紳士と女》と《紳士とワインを飲む女》
5.2 《音楽の稽古》と《合奏》と《ヴァージナルの前に立つ女》
第 3 章 カメラ・オブスクラの役割
《絵画芸術》をめぐって
1 カメラ・オブスクラの存在
1.1 スゥイレンスの研究
1.2 ワドゥムの研究
1.3 ステッドマンの研究
1.4 レンズの性能
1.5 室内を装飾する床
1.6 室内を数量化するタイル
2 インスピレーションの源
2.1 カメラ・オブスクラとピンホール
2.2 カメラ・オブスクラの範囲
2.3 《牛乳を注ぐ女》と描かれたモデルたち
2.4 カメラ・オブスクラと画面構成
2.5 視点の融合
3 調和と黄金比
3.1 17世紀の黄金比
3.2 黄金比と仮象空間の構築
3.3 ユークリッドと透視図法
第 4 章 絵画の規範
共有の基盤
1 比例と平面幾何
1.1 デ・ホーホの構図
1.2 古典主義の影響
1.3 建築と尺度
1.4 中世の幾何学
2 《聖プラクセディス》の分析
2.1 三つの《聖プラクセディス》
3 フェルメールの贋作
3.1 建築家から画家、そして贋作者へ
3.2 フェルメール作を描く
3.3 本物と型
結び