まえがき
1. イオン結晶における物性の概略
1-1 イオン結晶の周期性
1-2 イオン結晶における構造のいろいろ
1-3 イオン結晶を加熱する;格子欠陥とイオンの拡散
1-4 イオン結晶における電気的性質(伝導性と誘電的性質)と磁気的性質
1-5 イオン結晶における光学的性質
1-6 超イオン導電体における諸性質
1-6-1 超イオン導電体の構造
1-6-2 超イオン導電体における可動イオンの集団運動
1-6-3 超イオン導電体における可動イオンの移動に際して周辺の電子軌道の再編
参考文献
2. イオン性化合物の熱力学的性質
2-1 相平衡と物質の状態
2-2 イオン性化合物における統計熱力学と熱容量
2-3 イオン結晶は高温で何故融解し溶融塩になるのか(熱力学的理解と動力学的理解)
2-3-1 フレンケル(Frenkel)理論の再構築
2-3-2 融解前駆現象と比熱の異常増加との関係
2-3-3 イオン結晶における融解前駆現象と電気伝導度
2-4 金属性液体,共有結合性化合物液体および溶融塩の相違点
参考文献
3. 溶融塩における熱力学的性質
3-1 単体液体における内部エネルギー
3-2 溶融塩における内部エネルギー
3-3 溶融塩を含む液体の比熱
3-4 液体における圧縮率と音速
3-5 相転移の熱力学
3-6 液体を中心にした相転移の熱力学
3-7 液体-気体相転移
3-8 表面張力
参考文献
4. 二元系溶融塩の状態図(組成-温度);溶質添加による溶媒の融点降下についての熱力学
4-1 よく知られている理想的希薄溶液(ideal dilute solution)における融点降下の理論
4-2 固相で完全に二相分離し,液相で完全に一相になる系(古典的議論)
4-3 固相で完全に二相分離し,液相で完全に一相になる系(近年に展開された手法)
4-4 固相が完全に固溶し,かつ液相が完全に一相となる二元系の融点降下理論 I(理想溶液の場合)
4-5 固相が完全に固溶し,かつ液相が完全に一相となる二元系の融点降下理論 II
4-6 固相で完全に二相分離し,液相で完全に一相になるけれども,構成成分の大きさが著しく異なる場合
4-7 具体的計算例―Li2CO3-K2CO3系―
4-8 具体的応用例―Na2CO3-K2CO3系―
4-9 二元系溶融塩の固相の成分,1および2の近傍で固溶体を持つ場合
4-10 三元系のそれぞれの二成分が固相で二相分離する場合の融点降下の理論
4-11 計算機シミュレーションによる混合熱の導出
4-12 CALPHAD 法
参考文献
5. 溶融塩におけるイオン間相互作用ポテンシャル,遮蔽効果
5-1 はじめに
5-2 イオン性凝集体のイオン間ポテンシャルについての研究経緯―剛体イオンモデル(Rigid Ion Model)
5-3 イオンの変形に伴うポテンシャルの導入―シェルイオンモデル(Shell Ion Model)
5-4 分極可能イオンモデル(Polarizable Ion Model)
5-5 前節の分極可能イオンモデル(Polarizable Ion Model)に対する評価
5-6 分極と誘電率について
5-7 溶融塩におけるイオン間ポテンシャルの最適表示
5-8 具体的応用例
参考文献
6. 溶融塩における構造
6-1 X線回折による単体液体の構造
6-2 液体における動径分布関数の理論
6-3 構造因子(structure factor)
6-4 溶融塩を含む二元系液体における構造因子および動径分布関数
6-5 二元系液体におけるゆらぎと構造因子
6-6 二元系液体の散乱理論と構造因子
6-7 二元系液体における部分構造因子の実験的導出
6-7-1 同一試料に対してX線,中性子線および電子線回折をおこなう
6-7-2 アイソトープ・エンリッチメント法(Isotope enrichment method)
6-7-3 X線異常散乱法による部分構造因子の導出
6-7-4 X線回折,中性子線回折およびRMC法の組み合わせ
6-8 溶融塩におけるイオン間相互作用ポテンシャルと部分動径分布関数
6-9 溶融塩構造の逆モンテ・カルロ・シミュレーション(Reverse Monte Carlo Simulation)
6-10 液体における動的構造
6-11 溶融塩における動的構造因子
6-12 非弾性X線散乱実験を用いた溶融塩における動的構造因子の実験
参考文献
7. 溶融塩における輸送現象;電気伝導
7-1 Newtonの運動方程式と溶融塩における電気伝導度
7-2 溶融塩におけるランジュヴァン方程式と電気伝導度
7-3 溶融塩における速度相関関数
7-4 溶融塩の伝導度に関するグリーン-久保の公式(Green-Kubo formulae)
7-5 伝導度係数とランジュヴァン方程式における記憶関数γ±(t )について
7-6 記憶関数のラプラス変換値γ~(0)の導出
7-7 理論的に導出される速度相関関数
7-8 ここまで展開してきた理論の欠陥(もしくは近似の限界)
7-8-a 統計力学における伝統的な理論展開によりZ σ±(t )とγ(t )を求める方法
7-8-b 具体的計算
7-8-c γ~(ω)が求まったとき,Z σ±(t )へどう進めるか
7-8-d 上記理論の実際の応用
7-9 計算機シミュレーションによる溶融塩の速度相関関数
7-10 非等価溶融塩における電気伝導度
7-11 擬二元系溶融塩の電気伝導度
7-12 溶融AgI-AgBr系の部分伝導度
7-13 溶融AgI-CuI系の部分伝導度
7-14 溶融AlF3の電気伝導度
参考文献
8. 溶融塩における輸送現象の理論的基礎
8-1 ランジュヴァン(Langevin)方程式採用の妥当性への基礎付け
8-2 速度相関関数について
8-3 速度相関関数Zσ±(q,ω)へ向けて
8-4 外部からの電場によるイオンの分布の変化に伴う伝導度の表式の修正
8-5 交流伝導度
8-6 σ±(ω)の具体的表示の例―溶融NaClの場合―
8-7 伝導度と拡散係数における記憶関数(memory function)の相違について
8-8 Br・schらの超イオン導電体における伝導度理論との関連について
8-9 溶融塩の電気伝導の知見の重要性
参考文献
9. 溶融塩におけるイオンの拡散係数
9-1 液体における拡散
9-2 溶融塩における伝導度と拡散係数の大きな相違
9-3 溶融アルカリ・ハロゲン化物におけるイオンの拡散係数(MDシミュレーション)
9-4 一般化されたランジュヴァン方程式―拡散係数と伝導度の相違に関連して
9-5 自己速度相関関数Z D±(t )≡ <υi±(t )υi±(0)>の短時間範囲内の表現
9-6 自己速度相関関数におけるイオン間相互作用の寄与α+およびα-の導出
9-7 拡散に関する記憶関数γD±(t )について
9-8 溶融NaClに対する拡散係数のMDシミュレーション
9-8-1 Z D±(t )のMDシミュレーションから求められたγD±(t )
9-9 溶融塩におけるイオンの拡散係数の測定方法-伝統的(traditional)
9-10 溶融塩におけるイオンの拡散係数の測定方法-新しい方法
参考文献
10. 溶融塩における熱伝導
10-1 研究目的
10-2 液体における古典的な熱伝導度理論
10-3 液体における熱伝導度の分子論的理論
10-4 揺動散逸定理に基づく熱伝導度の理論(グリーン-久保の理論)
10-5 局所的な熱ゆらぎの大きさが熱伝導の度合いを示す
10-6 混合液体における熱伝導度
10-7 溶融塩における熱伝導度
10-8 熱の流れから導いた熱伝導度とエネルギーの流れから導いた熱伝導度の同等性
10-9 単体液体の場合の具体的計算例
10-10 溶融塩系における熱伝導度の具体的計算例
10-11 フォノン伝導による熱伝導度との比較
10-12 補足A:熱伝導の流体力学的取り扱い
10-13 補足B:熱伝導度に関与する局所圧力と剛体球イオンの充填率
参考文献
11. 溶融塩における粘性
11-1 粘性とは
11-2 粘性係数ηと体積粘性係数ζのグリーン-久保公式
11-3 ηとζ導出のための計算式
11-4 単純液体におけるηとζの具体的計算例
11-5 溶融塩における粘性係数ηおよび体積粘性係数ζ
11-6 溶融塩における粘性の具体的計算例
11-7 Kirkwood-Rice学派によって得られた粘性の分子論的表示
11-8 Eyringらの反応速度論に基づく粘性係数と拡散係数との関係
11-9 マグマの粘性
参考文献
12. 光散乱
12-1 ラマン散乱
12-2 レーリー-ブリルアン散乱
12-3 (塩+微量金属)の溶融した状態におけるF中心
参考文献
13. イオン性の不完全な溶融塩
13-1 イオン性と共有結合性とが共存する溶融塩
13-2 金属性とイオン性とが共存する溶融塩; Ag-chalcogenides(Ag2S, Ag2Se)
13-3 温度変化に伴い結合変化する溶融塩
13-4 金属元素同士の結合による溶融塩
参考文献
14. 室温溶融塩(イオン性液体)
参考文献
あとがき
単位換算表
索引