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プラセボ学

著:中野 重行

紙版

内容紹介

プラセボ学の第一人者である著者渾身のライフワーク、ここに結実!

■本書の柱の一つは,薬物治療における改善率を構造的理解に基づいて考察することにあります。また,プラセボ使用における永遠のテーマ “倫理的ジレンマ” を乗り越えるための試みも示しました。
■さらなる治療医学の進歩にむけて,またプラセボに関する研究の発展を願うという意味を込めて,本書のタイトルをあえて「プラセボ学」とさせていただきました。<プロローグより抜粋>

臨床研究に携わる方,薬物治療や治癒の本質を考察したい方,臨床薬理学の知識をさらに深化させたい方,すべての方必読の書です。

目次

プロローグ

1章 プラセボ投与時に見られる改善率 ―二重盲検ランダム化比較試験(RCT)のプラセボ対照群に焦点を当てて―

1. 治験を含む臨床試験でプラセボ投与群の改善率はどの程度認められるのか:二重盲検ランダム化比較試験(RCT)の結果から
2. プラセボに関する用語と定義

2章 プラセボ投与時に見られる有害事象または副作用 ―二重盲検ランダム化比較試験(RCT)のプラセボ対照群に焦点を当てて―

1. 「有害事象」「副作用」「薬物有害反応」という用語について
2. プラセボ投与時に見られる有害事象または副作用
3. 「プラセボ効果」と「プラセボ反応」という用語について
4. 「ノセボ効果」というとらえ方の問題点

3章  プラセボ効果(反応)の構造的理解

1. Post hoc fallacy(前後即因果の誤謬)
2. 「プラセボ効果」と「プラセボ反応」という表現について
3. 時間の経過に伴う病状や症状の変化
4. 「プラセボ効果(反応)」の構造的理解
5. 薬効の構造的理解

4章 医薬品の臨床試験におけるプラセボの誕生とプラセボ対照群の必要性
1. 臨床評価のためには比較試験が何にもまして重要である
2. 臨床評価のための比較試験でランダム化(無作為化)が必要な理由
3. 臨床薬効評価法におけるプラセボの誕生:臨床評価のための比較試験で二重盲検法が必要な理由
4. 薬物の有効性と安全性を科学的に評価する際に、なぜプラセボ対照群が必要になるのか

5章 プラセボ効果(反応)に関与する要因
1. 生体の有する「自然治癒力」
2. 暗示効果または期待効果
3. 条件づけ
4. 患者と医療者の間の信頼関係
5. 患者の治療意欲
6. 患者への適切な説明(服薬指導)

6章 対照群にプラセボを使用する際の基本的な考え方

1. 対照群にプラセボを使用する際に考慮する必要のある要因
2. 臨床試験で有用性の実証された標準薬の有無と被験者の被るリスクの程度による分類

7章 プラセボ対照群を使用する臨床試験を実施する際の工夫と留意点

1. 対照群に使用するプラセボとして必要となる条件
2. 試験デザイン上の工夫と留意点
3. プラセボを使用することにより被験者が被る可能性のあるリスクを,臨床試験チーム全体で背負う姿勢の重要性
4. 被験者へのプラセボの説明のしかた

8章 プラセボ対照二重盲検比較試験における盲検性の水準とその確保

1. 被験薬の特性以外の要因から薬剤の盲検性に問題が生じたケース
2. 被験薬そのものの特性から薬剤の盲検性に問題が生じる可能性
3. 被験薬の薬理作用から薬剤の盲検性が守れなくなる可能性

9章 プラセボの使用に関する倫理的ジレンマとそれを乗り越える試み

1. 「プラセボ対照ランダム化比較試験」以前の時代におけるプラセボの使用について
2. 「プラセボ対照ランダム化比較試験」の時代になってからのプラセボの使用について
3. 世界医師会のヘルシンキ宣言にみられるプラセボの使用に関する考え方
4. プラセボジレンマとその解決策として考えられること

10章 プラセボ反応(効果)の治療における意義

1. 薬物投与時にみられる病態・症状の改善についての理解のしかた
2. プラセボ投与群にみられる改善は治癒のプロセスの本質を理解するうえで重要
3. 暗示効果
4. 自然治癒力(自己回復力)について

11章 薬物治療の効果を高めるためのストラテジー(1) ─プラセボ投与時の改善率を高めると患者にはどのような恩恵があるのか─

1. 薬物治療の効果に関する構造的理解
2. プラセボ投与時の改善率(N+P)を高めることにより患者が受けることのできる恩恵
3. 薬物治療の効果(D+N+P)を高めるために

12章 薬物治療の効果を高めるためのストラテジー(2) ─ライフスタイルの改善により「自然治癒力」を高める─
1. 薬物治療効果を構造的に理解することにより見えてくるもの
2. プラセボ関連誤謬(錯覚):Placebo related fallacy(中野)
3. ライフスタイルの改善により「自然治癒力」を高める

補遺 プラセボの説明のしかた ─ランダム化比較試験で対照群にプラセボを使用する際の患者への説明─                              1. 「ロールプレイ法により学ぶ治験のインフォームドコンセント」と題する実習
2. プラセボについて説明することの難しさ
3. プラセボに関する医療者の理解度
4. 被験者の治験内容の理解度:とくに「プラセボ」について
5. インフォームドコンセントについて
6. プラセボに関する説明を患者に対してする際の留意点
7. ランダム化比較試験(RCT),とくにプラセボを患者に説明する場には,コミュニケーションのエッセンスが詰まっている

著者略歴

著:中野 重行
大分大学名誉教授、臨床試験支援財団理事長。
専門は臨床薬理学、心身医学、医療コミュニケーション。医学博士。
岡山大学医学部卒。岡山大学医学部第一内科、九州大学医学部心療内科、九州大学薬学部薬理学、岡山大学医学部脳研、愛媛大学医学部薬理学を経て、スタンフォード大学医学部臨床薬理学部門に留学。大分医科大学臨床薬理学教授、大分大学医学部附属病院長、大分大学学長補佐、国際医療福祉大学大学院教授、大分大学医学部創薬育薬医療コミュニケーション講座客員教授などを歴任。
日本臨床薬理学会名誉会員(元理事長)・専門医・指導医、日本臨床精神神経薬理学会名誉会員(元会長)、日本心身医学会功労会員・認定医・指導医、日本内科学会認定医。
第1回昭和上條医療賞を受賞(2014年)。2019年秋の叙勲(瑞宝中綬章)を受ける。
近著に『これからのクスリとのつき合い方と薬の育て方』、『コミュニケーションは「やわらかな1.5人称」』(いずれもメディカル・パブリケーションズ)などがある。
中野重行ONLINE(http://www.apmc.jp/)

ISBN:9784897754079
出版社:ライフサイエンス出版
判型:A5
ページ数:184ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2020年03月
発売日:2020年03月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MB