修道制と中世書物 完結
メディアの比較宗教史に向けて
他編:大貫俊夫
他編:赤江雄一
他編:武田和久
内容紹介
キリスト教修道制の霊性と中世の書物文化、その分かちがたい関係の諸相を見定める一方で、日本の中世仏教との比較を通じて、その核心に迫ろうとする野心的な論集。
印刷技術発明以前の「書物」のメディアとしての特性に改めて着目し、主要な担い手たるキリスト教修道制が、宗教的実践の過程でそこにもたらしたさまざまな影響について、日本の中世における寺社文書・経典の例と比較しつつ、新たな側面から光をあてる共同研究の成果。
信仰生活・布教活動とメディアの相互関係について、聖書/経典、典礼、説教、修道院創建史/寺社縁起といった論点を核に、キリスト教修道制と日本の中世仏教、それぞれの場合を比較対照し、その相似と差異を浮き彫りにする「総論」と、彩飾写本、動物寓話集、聖務日課書、聖人伝(西洋)、また寺社縁起、札所縁起(日本)など、要所となる興味深いトピックに着目して掘り下げる各論10編からなり、総論と各論、また西洋編と日本編が重層的に響き合う。図版97点、うちカラー79点。
目次
■第Ⅰ部 総論【大貫俊夫+赤江雄一+武田和久+苅米一志】
Ⅰ─1 キリスト教修道制における書物メディアとその展開
Ⅰ─2 日本中世仏教における書物メディアとその展開
■第Ⅱ部 書物文化の醸成
Ⅱ─1 西欧初期中世秘跡書写本の装飾イニシアル──vere dignumとte igiturのイニシアル・ページの機能をめぐって【安藤さやか】
Ⅱ─2 二重修道院の書物──セッカウ修道院の書物係ベルンハルト(1140-80/85)の足跡を追って【林賢治】
■第Ⅲ部 書物による知の継承・改変
Ⅲ─1 世俗知から宗教知へ──ボエティウス『哲学のなぐさめ』に見る知的世界観の変容【阿部晃平】
Ⅲ─2 西欧中世の修道院と動物寓意テキストについて──Dicta Chrysostomi版フィシオログス写本の分析から【長友瑞絵】
Ⅲ─3 ドイツ語圏英雄伝承の教化素材化──ニーベルンゲン伝説およびディートリヒ伝説を題材に【山本潤】
■第Ⅳ部 歴史叙述とアイデンティティ
Ⅳ─1 托鉢修道会のアイデンティティと書物【梶原洋一】
Ⅳ─2 『キリストの生涯についての黙想』をめぐる二大托鉢修道会のイメージ戦略【荒木文果】
Ⅳ─3 聖マルゲリータ・ダ・コルトーナをめぐる記憶の政治と書物──13–14世紀転換期におけるフランチェスコ会・イタリア都市・聖人崇敬【白川太郎】
■第Ⅴ部 日本中世との比較
Ⅴ─1 聖地と日本仏教史の再創出──『金剛山縁起』の偽撰と受容【川崎剛志】
Ⅴ─2 「東国の王権」を守護する観音──真名本『曾我物語』・『源平闘諍録』・坂東三十三所縁起【宗藤健】
編者・執筆者略歴
索引
ISBN:9784896943634
。出版社:八坂書房
。判型:A5
。ページ数:416ページ
。定価:6500円(本体)
。発行年月日:2024年03月
。発売日:2024年04月12日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QRMB。