【略目次】/01 忘れられた「第三の聖人」 ──聖シントペルトゥス(8–9世紀)津田拓郎/02 「世界で最高の騎士」 ──ウィリアム・マーシャル(12–13世紀)有光秀行/03 奮戦するパリ大学総長──ジャン・ジェルソン(14–15世紀)鈴木道也/04 ブルゴーニュ公国を生きる──ユーグ・ド・ラノワ(14–15世紀)畑奈保美/05 都市を演出する詩人──アントニス・ド・ローフェレ(15世紀)池野健/06 カトリック聖職者の失敗した宗教改革─フランツ・フォン・ヴァルデック(15–16世紀)永本哲也/07 国王の天地学者として生きる──クリスティアン・スクローテン(16–17世紀)小川知幸/08 三十年戦争末期ヴュルテンベルクの預言者──ハンス・カイル(17世紀)出村伸/09 啓蒙の世紀の商人──ドミニク・オーディベル(18–19世紀)府中望
【詳細目次】
まえがき
第1章 忘れられた「第三の守護聖人」──アウクスブルク・ノイブルク司教聖シントペルトゥス(†807?)津田拓郎
1│シントペルトゥスの生涯
忘れられた治癒聖人/同時代史料の情報/『聖マグヌス伝』
2│崇敬のはじまり
『聖ウルリヒ伝』/崇敬情報の登場/『聖シントペルトゥス伝』
3│崇敬の高揚
列聖と奉遷/崇敬の危機とその克服/治癒をもたらす頭蓋
4│崇敬のおわり
修道院解散と「迷信」批判/現代におけるシントペルトゥス/なぜシントペルトゥスは治癒をもたらしたのか?/聖人のライフ・ヒストリー
第2章 「世界で最高の騎士」──ウィリアム・マーシャル(ca.1146-1219)有光秀行
1│イングランドから大陸へ──修行の日々
生まれ/人質になる/ノルマンディーへ/イングランドへ、大陸へ
2│二人のヘンリ王に仕える──出世、失意、復権
ヘンリ若王/帰還と結婚
3│馬上槍試合の世界
4│アンジュー帝国に生きる──「帝国」と「辺境」
ひろがる所領/リチャード一世
5│ジョン王──ふたたび失意と復権
ジョン王の側近/不遇の時代/再びジョン王のもとへ
6│「国王と王国の保護者」──晩年と死
7│ウィリアム・マーシャルの生きた騎士社会
第3章 奮戦するパリ大学総長──ジャン・ジェルソン(1363-1429) 鈴木道也
1│妹への手紙
神を讃える一週間/手紙を書く 手紙を読む
2│教会の統一を目指して
パリからブルッヘへ/「巡礼」の日々
3│中世の大学
「王の娘」/ナヴァール学寮
4│王国の統一を願って
コンスタンツへ/暴君殺害は許されるか/コンスタンツで
5│巡礼の終わり
リヨンへ/「最もキリスト教的な博士」
第4章 ブルゴーニュ公国を生きる──ユーグ・ド・ラノワ(1384-1456)畑奈保美
1│金羊毛騎士
ブルゴーニュ公フィリップと金羊毛騎士団/フランドルの貴族ラノワ家/若き騎士
2│ブルゴーニュ公に仕えて
ブルゴーニュ対アルマニャック/フランスの支配とトロワ和約/ブルゴーニュ家のネーデルラント拡大/ホラントの統治
3│イングランドとフランスの間で
情勢の変化/アラス和約/イングランドとの戦争/ラノワ家の文書/フランドルの反乱/イングランドとの和平
4│老いた騎士の奉仕
晩年のユーグ/終の棲家
第5章 都市を演出する詩人──アントニス・ド・ローフェレ(ca.1430-1482) 池野健
1│都市の詩人になった石工
アマチュア詩人への都市年金/都市公認の詩人はなぜ必要とされたか
2│中世の都市文化に育まれた才能──ローフェレの生涯と業績
早熟の詩才/敬虔な宗教詩人/都市儀礼の演出家
3│ローフェレの生きた時代──中世後期ネーデルラントの都市社会
都市と宗教:兄弟会の発達/ブルゴーニュ公国の拡大
4│『すばらしきフランドル年代記』と都市入市式
一四六八年ブルゴーニュ公の結婚儀礼:年代記に描かれた君主の結婚/儀礼に現れる都市の名誉
5│劇場としての中世都市
第6章 カトリック聖職者の失敗した宗教改革──フランツ・フォン・ヴァルデック(1491-1553)永本哲也
1│激動の時代を生きた聖職者にして君主
剣と甲冑とともに描かれた司教/フランツが生きた時代/伯の子フランツ、司教に選ばれる
2│司教が主導する宗教改革
宗教改革のはじまり/フランツがルター主義に傾倒した理由/説教師の派遣と同盟への参加をめぐる交渉
3│三司教領での宗教改革の制度化
オスナブリュック司教領での改革/ミュンスター司教領での改革/ミンデン司教領での改革
4│絶え間ない争い
領邦諸身分との争い/説教師を求めて/シュマルカルデン戦争
5│カトリックへの回帰
オスナブリュック司教座聖堂参事会との争い/宗教改革の撤回
6│他者の言葉が映し出す人物像
政治と宗教の密接な関係/フランツ・フォン・ヴァルデックはどんな人物だったか?
第7章 国王の天地学者として生きる──クリスティアン・スクローテン(ca.1525-1603)小川知幸
1│コスモグラフィー(天地学)のはじまり、そして、地図製作という仕事
コスモグラフィーとは/地図の織りなす世界/技能者たち
2│ウェストファリアの片隅に生まれて
ゾンスベック、カルカー/修業時代
3│「国王の天地学者」
コスモグラフ・ドゥ・ロワとは/旅と測量、富と名誉
4│二つのアトラス
アトラス・ブリュッセル/スペインの侵攻/アトラス・マドリード/人文学者として
5│国王フェリペのために
アトラス献呈の言葉/フェリペ二世
6│信じられた世界
苦悩と死/生き続ける中世の世界
■スクローテンの「アトラス」はどのように発展したか
第8章 三十年戦争末期ヴュルテンベルクの預言者──ハンス・カイル(ca.1615-?)出村伸
1│熱狂──天使の出現
ゲルリンゲン村/ハンス・カイルについての史料/最初の天使の出現/二度目の天使の出現/人々の興奮/活版印刷と「奇蹟」の流布
2│苦境──三十年戦争期のヴュルテンベルクとハンス・カイル
ハンス・カイルと戦争/三十年戦争期のヴュルテンベルク/兵士としてのハンス・カイル/ぶどう農夫としてのハンス・カイル
3│反響──当局の対応とカイルの逮捕
「奇蹟」にかんする調査/ハンス・カイルの逮捕と自白/ヴュルテンベルクからの追放
4│宗教──神の裁きとしての戦争と領邦教会
人間の罪にたいする神の裁きとしての戦争解釈/ヴュルテンベルクの預言者として/ヴュルテンベルク教会当局による預言の鑑定
5│異郷──ハンス・カイルのその後
第9章 啓蒙の世紀の商人──ドミニク・オーディベル(1736-1821)府中望
1│港町、名も無き町、国歌の町の商人
ラ・マルセイエーズの都市/ギロチンを逃れた商人
2│マルセイユ商人の肖像
オーディベル家の来歴/マルセイユ商人を結ぶ血のネットワーク
3│ヴォルテールとの交流
「思想家」オーディベル/ヴォルテールとの馴れ初め/ヴォルテールへの献身/同時代人との知的交流
4│開明的な商人
オーディベルの国家観/財政改革の議論/アンシャン・レジームの改良か、破壊か
5│革命への接近と離反
革命への傾倒/いかにして恐怖政治を生き延びたか/革命からの離反
6│伝統と革新の振り子
近世と近代のはざまで/啓蒙思想家か、復古主義者か/個人に投影された時代
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あとがき 283
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執筆者一覧 1
索引 3
参考引用文献一覧 13
図版出典一覧 16