略語集 9
はじめに(高橋杉雄)13
INF条約破棄の背景と影響/現行のミサイル技術/ミサイル迎撃システムの開発と課題/本書の構成
第1章 ポストINF時代の安全保障(森本 敏)29
INF条約失効がもたらすもの 29
INF条約の役割と機能/INF条約消滅後の課題
INF条約交渉とその成果 32
冷戦期の米ソ戦略兵器制限交渉/INF交渉の合意と条約批准
米ロのINF条約違反と中国の対応 38
INF条約がもたらした影響/条約違反をめぐる米ロの対立/台頭する中国の戦略とミサイル能力
戦略兵器システムとINFの関係 45
拡散する核戦力の脅威/START条約延長と米中ロの思惑
ポストINF打撃システム配備に関する諸問題 49
INF条約失効後のミサイル開発/米国のINF射程ミサイルの配備計画/中国に対抗するためのミサイル配備/報告書が示す米国のミサイル配備計画/欧州、中東・湾岸地域へのミサイル配備の狙い/INF射程ミサイルの軍備管理の構想と問題点/多国間交渉と中国の非対称的ミサイルの脅威
ポストINF打撃システム配備と日本の安全保障 61
ポストINF交渉に対する日本の原則/日本の安全保障政策とその選択肢/日本が保有すべきミサイル防衛システム
第2章 ポストINF時代の抑止戦略(高橋杉雄)72
「ポストINF条約時代」の到来
「INF条約時代」における抑止戦略の展開 74
「INF条約時代」における抑止概念の変化/精密誘導兵器の発展と拡散:「精密誘導兵器レジーム」の出現/「大国間競争の復活」と「INF時代」の終焉
今後の抑止戦略におけるポストINF打撃システム 79
ポストINF打撃システムの軍事的な特徴/ポストINF打撃システムをめぐる論点の整理
ポストINF時代の戦略環境と抑止戦略 85
ポストINF時代のヨーロッパ/ポストINF時代のアジア太平洋地域
ポストINF条約時代の抑止戦略の課題 94
「セオリー・オブ・ビクトリー」とポストINF打撃システム/米国の「セオリー・オブ・ビクトリー」/戦略的安定性を強化するための軍備管理
第3章 ポストINF時代の軍備管理(戸﨑洋史)106
中距離ミサイル問題と日本の課題
核軍備管理の停滞と中距離ミサイル問題 109
核軍備管理をめぐる2010年代の動向/焦点としての中距離ミサイル問題
「新しい枠組み」の課題と日本 119
「新しい枠組み」の論点/対象国とその安全保障利益の調整/冷戦期以後の核軍備管理の目的/対象となる兵器システムをどのように規定するのか/軍備管理交渉に消極的な中国
「新しい枠組み」に向けた軍備管理 135
戦略対話、リスク低減および透明性/能力面での軍備管理の可能性/「新しい枠組み」の追求
第4章 NATO「二重決定」とINF条約(合六 強)150
INF条約の形成と評価 150
冷戦期の「成功」事例
NATO抑止態勢の形成と変容 153
1950年代:核依存への道/1960年代:拡大抑止の信頼性低下と核拡散への懸念/1970年代:パリティの成立とその影響
ソ連のSS‐20配備と「グレーエリア問題」162
配備決定の背景/SS‐20をめぐる二つの評価/カーター政権の消極的姿勢
「二重決定」をめぐる同盟政治 168
中性子爆弾問題をめぐる失敗/政策の転換と信頼性回復の試み/「二重決定」に至る同盟協議
INF交渉からINF条約へ 179
交渉開始と争点/交渉再開から条約締結へ/INF交渉における日本の役割/INF条約の教訓
第5章 ロシアにとってのINF問題(小泉 悠)201
「冷戦の亡霊」と21世紀型「大国間競争」201
条約違反をめぐる米ロの対立
ロシアのINF条約違反疑惑とは何か? 205
疑惑の浮上に至る経緯 /9M729をめぐる「同一性」問題/ロシアによる「9M729」の公表/9M729の配備状況/UAV、標的ミサイル、イージス・アショアに関するロシアの主張
ロシアはなぜINFを必要としたか? 223
冷戦の亡霊/世界第2位の核超大国/台頭する中国への脅威認識/「ユーゴ・ショック」/エスカレーション抑止論をめぐって/それでも残る疑問
INF条約後のロシアの核戦力 243
「鏡面的に対称的な措置」/想定されるポストINF打撃システムとその軍事的効用/ポストINF打撃システムが日本に及ぼす影響
第6章 ポストINF時代の米国の国防戦略と戦力態勢(村野 将)255
米ロ関係とINF問題 256
軍備管理・条約遵守問題としてのINF/ロシアによる条約違反の継続と対抗手段の模索
米中関係とINF問題 264
米国の国防戦略と戦力態勢の見直し/アジア太平洋地域における陸上戦力の再評価/統合作戦構想の発展とポストINF打撃システムの必要性
ポストINF打撃システムの軍事的効用と開発状況 273
ポストINF打撃システムのプログラム化/地上配備型巡航ミサイル(GLCM)の利点と課題/地上発射型対艦攻撃用トマホークの導入と運用構想/地上発射型弾道ミサイルの利点と課題/地上発射型弾道ミサイルの開発状況
ポストINF時代の米国と同盟国 288
ポストINF打撃システムと同盟国の課題/ポストINF打撃システムの運用シナリオ/ポストINF時代の同盟国に求められる主体性
終章 ポストINF時代の日本の課題(高橋杉雄)300
ポストINF打撃システムの戦略的意義 301
ネットワークが支配する現代の戦いの様相/中国の精密攻撃能力の強化/日本自身の問題としてのポストINF時代の安全保障/ポストINF打撃システムと専守防衛/地上発射型ミサイルの非脆弱性を高める方策
ポストINF条約における日本の抑止戦略:一つのイメージ 311
軍備管理をめぐる中国の論点すり替え/ポストINF条約時代の「セオリー・オブ・ビクトリー」/対中国の「セオリー・オブ・ビクトリー」/日米同盟の「セオリー・オブ・ビクトリー」/ヨーロッパから東アジアに移った議論の中心地域
■座談会──
総括:ポストINFの世界はどうなるか? 325
米国のセオリー・オブ・ビクトリー/冷戦期との類似性/ロシアのセオリー・オブ・ビクトリー/ロシア軍産複合体の影響力/中国のセオリー・オブ・ビクトリー/日本のセオリー・オブ・ビクトリー/米中間の戦域打撃戦力のギャップ/精密誘導兵器とエスカレーション/ポストINF打撃システムと中国/中国を軍備管理に引きずり出すには/中ロの軍事協力/新たな軍備管理を求める欧州/地上発射型トマホークは有効か?/巡航ミサイルと中距離弾道ミサイルの組み合わせ/ポストINF打撃システム配備の政治的問題
おわりに(森本 敏)380
執筆者略歴 385