序
本書の主題と目的
研究史の概観
研究のアプローチ、方法論、史資料
本書の構成
第一章 社会主義ユーゴスラヴィアとナショナリズム ――結合と分離の力学
1 ナショナリズムとその諸相
ナショナリズムが意味するもの
ユーゴスラヴィアにおけるナショナリズムの三つの相
2 ユーゴスラヴィアの成立と連邦制にみる自決
自決に基づく連邦制
連邦制における民族と共和国
3 分権化の推進とナショナリズム
「自主管理」の導入と分権化
「クロアチアの春」
4 一九七四年憲法体制の成立と体制の危機
一九七四年憲法と「緩い」連邦制
経済危機と体制批判
5 「危機」の解決に向かう共和国とナショナリズム体制危機への二つの共和国の対応
――スロヴェニアとセルビア
共和国内の路線の統一とナショナリズム
二共和国の対立と国家解体
第二章 1987年セルビアの党内論争とナショナリズムをめぐる議論
――パラチン事件とセルビア党中央委員会第8回総会
1 前史―― 一九八七年までのセルビア政治と共和国党指導部
コソヴォをめぐる問題とナショナリズム
一九八七年の党指導部内の変化と派閥対立
2 パラチン事件
事件の概要
事件への反応・対応
事件の解釈とナショナリズム
3 共和国党指導部内の論争と第八回総会
論争の経緯と構図
「統一」の論理
4 ナショナリズムをめぐる議論
『ポリティカ』編集評議会の議論
反ナショナリズムの伝統
ナショナリズムをめぐる相違
第三章 1980年代末の大衆的な政治運動とナショナリズム
――ヴォイヴォディナの諸集会についての一考察
1 体制危機下のストと政治行動
経済と政治の危機、ストの多発
コソヴォ問題に対するセルビア内の動向
2 ヴォイヴォディナにおける大衆的な政治運動
集会の発生と展開
諸集会の帰結と結果
集会の拡大と他地域との連関
3 諸集会における多面性と統一性
集会の主体とその多様性
目的および要求の複数 動員の背景と論理
4 諸集会とナショナリズム
ナショナリズムの自制と集会の多民族性
ナショナリズムの表出
集会とナショナリズムをめぐる見解の相違
「ナロード」の主体をめぐる評価とナショナリズム
第四章 社会主義体制終焉に伴う政治的分化とナショナリズム
1 1989年の政治的帰結――共和国間の対立と一党体制の終焉
セルビアとスロヴェニアの対立とその拡大
ナショナリズムの顕在化と急進化
社会主義体制の終焉、揺らぐ連邦制
2 複数政党制への移行と諸政党の誕生
東欧の体制変動とセルビアにおける政治的な一体化
諸政党の形成
一九九〇年一二月の選挙
3 「セルビアは立ち上がった!」
――「三月九日」と「テラジエ議会」
ベオグラード、一九九一年三月
選挙後の約一〇〇日
「三月九日」の参加者とデモの様相
「テラジエ議会」の要求と参加者
「テラジエ議会」における集会の様相
ウシュチェにおける集会の様相
第五章 戦争と「民族」内部の分断にみるナショナリズム
1 「大セルビア」への転換と戦争の勃発
戦争までの経緯とその背景――「セルビア人問題」
「一九九一年三月」の舞台裏
大セルビアとミロシェヴィチの急進化
2 「親ミロシェヴィチ」とナショナリズム――戦時体制の形成
戦場のセルビア人勢力と民兵
戦時の社会とその諸相
政権の持続と変化
3 「反ミロシェヴィチ」とナショナリズム――「もうひとつのセルビア」
野党の連携と対立
反戦運動・市民運動の展開
学生の抗議行動
終章
本書のまとめ
ユーゴスラヴィア解体におけるナショナリズム
終わりに
関係略年表
地図
主要参考文献