序に代えて
親友(心友)と剣道八段は剣道の神様から授かったごほうび
39歳三段で剣道再開。すぐに四段を受審するも剣道形で不合格。それから奮起し五段、六段、七段までは一発合格
形審査で落ちたことが契機で藤井稔範士に師事する。読書で剣道の奥深さを感じ、道連広報誌に書評を連載
七段取得後も掛かる稽古を心がけた。医学も剣道も向上心を持ち続けること
自分はどうなりたいかではなく。自分はどうありたいか
第一章◉八段審査1回目の巻 平成30年(2018)11月30日 東京・日本武道館
お互いが相手に尊敬の念を抱くことがお互いの向上になる
「やればできる」ではなく、「やれば成長する」の精神
極度の緊張で唇が震えて金縛り状態に。冷ややかな視線の中、やっと椅子から立ち上がる
自分のやる気を引き出すペップトーク。「~するな」ではなく「~しよう」と肯定する
昭和の指導法から脱却。褒めて伸ばす方向へ
息子の教育から学ぶ。相手に尊敬される自分でありたい
第二章◉八段審査2回目の巻 令和元年(2019)5月2日 京都・京都市体育館
不合格はさわやかに受け入れよう
八段戦決勝、栄花直輝選手の面に感動。水泳北島康介選手に習う八段合格の記念撮影姿をイメージ
竹刀袋に「七転八起」の文字。私は実践できるだろうか? ああ打ち軽し、ああ人間も軽しが出てしまう
だんだん八段は遠くなる。一本一本相手の心を打つ技が必要と実感
吉田松陰の言葉「人は志と仲間で成長する」を信じて
第三章◉八段審査3回目の巻 令和元年(2019)11月29日 東京・エスフォルタアリーナ八王子
次回は審査員の魂を揺さぶる気根で臨むと決意する
ラグビー日本代表に感動する。審査員の心を打つ有効打突を求めたい
1回目「はったり」で撃沈。2回目「攻撃は最大の防御なり」で撃沈。今回は「棚からぼた餅」でやはり撃沈
自分を過大評価してしまう。試合形式の審査で風格失格
剣道も教育も三磨の位を実践した林滿章校長が八段合格。習う(予習)・稽古(授業)・工夫(復習)すること
激励をしてくれた人、自信を持たせてくれた人、支援を与えてくれた人。私の人生はそういう人たちに支えられている
高校担任の言葉が励みに。「勉強で失うものは何一つない。がむしゃらに努力してみるか」
先生がたの言葉を咀嚼してできる方法を工夫。できるまでやり抜く気持ちを持つ
第四章◉八段審査4回目の巻 令和2年(2020)10月20日 東京・エスフォルタアリーナ八王子
八段は向こうからやって来ない。失敗しても何度でも起き上がって挑戦しよう
受審者の心が折れない成績開示評価を望む。私案=A「大変よくできた」、B「もう少し」、C「また頑張ろう」
恥ずかしながらここで一句:胸を張りオレ強いぞと見栄を張り。初太刀を取られて途中から記憶喪失に
挑戦なくして成長なし。挑戦を諦めたら失敗になる。図太い心が生まれるのは結果を求めない心
胸に突き刺さる言葉「失敗は転ぶことではなく、起き上がらないこと」
第五章◉八段審査5回目の巻 令和3年(2021)5月2日 京都・京都市体育館
恩師の言葉「目標があれば、いつも青春」を思い出し、また次に向けて頑張るぞ
審査出発日、わが家の桜は八分咲き。都の桜は満開か
平常心はどこかへと飛んでいった、穴があった入りたい出来事が二つも
合気になれない原因は相手ではなく自分にあった
継続は力なり。小さな努力の積み重ねが大きな結果を生む
「目標があれば、いつも青春」青春に年は関係ない
第六章◉八段審査6回目の巻 令和3年(2021)11月26日 東京・日本武道館
八段審査は「わび」「さび」の枯れた剣道では評価されないと再認識する
家庭でも我慢修行の日々。女房の温かな心遣い? きっと我慢から道が拓けると信じて
六・七段は高齢者の「わび」「さび」の枯れた剣道を評価。しかし、八段はその延長線上にないと再認識する
考える人ならぬ悩む人に。悩んだ結果、審査員が期待していると思えばパフォーマンスが上昇する
前日の合格率の高さに胸がワクワクとトキメク。八段は左手の手元が1回でも上がると、心が動いたことになる
相手の一人が一次合格。私もいい立合をしたとボジティブ思考
八段審査では攻められても、心を動かさず心を止めない不動の構えが求められる
検証 八段合格のために足りない6点を洗い出す。人生で大切なことは転ぶ回数より起き上がる回数だ
第七章◉八段審査7回目の巻 令和4年(2022)5月2日 京都・京都市体育館
努力は報われる。いや報われない努力もあるが、諦めず継続すれば桜咲く
女子ジャンプの高梨沙羅選手に学ぶ「人間形成への道」
努力を通して知識や技術を身につくと楽しくなり熱中できる
密かに古川先生の降臨を祈るが……。またしても自己満足の世界へ
収穫あり。二次合格者は攻めて勝って打ち切っていた
第八章◉八段審査8回目の巻 令和4年(2022)8月12日 名古屋・枇杷島スポーツセンター
六・七段合格のゲンの良い名古屋で八段審査会。しかし七転び八転び
「あと一歩です」の評価を引っ提げて、いざ、名古屋の陣へ
パワースポット熱田神宮に参拝。母の容態が気になって気持ちが奮い立たず
着替えする隣でおにぎりを食べていた彼が八段合格。私の運は母が生き抜いてくれたことに。それでいい
八段審査員の目が厳しいのは、自分と同等以上の技量を求めているから
人生いろいろ。泣いて笑って、笑って泣いて、今日も明るく生きようよ
第九章 八段審査9回目、そして最終回の巻 令和4年(2022)11月25日 東京・日本武道館
ま、まさかのまさかで八段合格。常日頃、手を合わせていた母。なにかいいことがあると「それは私が祈っていたからよ」
審査1か月ほど前、母は安らかに天国へと旅立った。二次審査前、母の笑顔を思い浮かべ「祈ってくれよ」と
ねんりんピック参加、剛直で気骨ある個性豊かな札幌市チーム。不測の事態が起こり4人で戦う。何事も前向きに前向きが良い
剣道観を変えた3日間の先生方の金言。きっかけと理解力がマッチングすれば人は変われる、変われた
面手ぬぐいを着けた瞬間、人違いで声をかけられる。思わず笑い、そのハプニングで気持ちが楽になる
二次審査直前、天井を仰ぎながら、母に「祈ってくれよ」と心の中でお願いする
夜空に向かって母と葛西に「ありがとう」「ほんとうにこんな俺でいいのか」と自問する
良師古川和男範士との出会い。悪癖を取る基本稽古の積み重ねが糧に
あとがきに代えて
親友であり心友であり続ける葛西良紀へ
こんなに早く別れが来るとは。人生の無常を感じる。「火星ちゃん、なぜ君なんだ」。あの笑顔が忘れられない
君がいるだけでその場が明るくなった。紋別と東京で学生時代を謳歌した日々がよみがえる
39歳、君のカッコイイ姿を観て剣道再開。60歳でようやく君と互角にできるようになった
君の「や~」という気合を聞くと嬉しかった。時々、喜びを分かちあいたいので夢に出てきてくれよ
本当の友とは自分のことのように喜んでくれる友
五年後の追伸 君の元気ハツラツ笑顔は今も心の中で生きている
君と出会わなければ八段合格はなかった。成功も幸運も出会った人が運んでくれる
コラム「燈燈無尽」 葛西良紀(京極剣道連盟会長・剣道教士七段)