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生活の「自立・自助」と社会的保障 グローバリゼーションと福祉国家

著:相澤 與一

紙版

内容紹介

 私は,2020年のことし米寿です。この資本主義社会では,昔から,庶民が歳をとると貧乏になるのは世の常といえるですが,私もその例にもれません。私も,まずしい国民の一人として,生活保障の国家的政策装置であってほしい社会保障に強い関心をもっているのですが,今日の社会保障は,逆に経済のグローバル化と財政危機のもとでの自民党による国家権力の支配によって改悪の一途をたどり,差別と収奪の手段としても悪用されているのです。たとえば国保と健康保険の差別や国保税の強制押収,医療保険と介護保険などへの3割負担の拡張や,生活保護基準をさえ下まわる基礎年金までも一律に引き下げるマクロ経済スライドなど,枚挙のいとまがありません。
 ただし,日本の政府だけでなく,多くの主要国がグローバリゼーションとネオ自由主義に加担して各国民の生存権を保障する福祉国家としての働きを弱め,その存在意義を疑われる事態に直面しているのです。アメリカ政府のコロナへの対応がその典型です。本書は,こういう新たな局面への対応を視野にいれながら,グローバル化のもとでの福祉国家のあり方について,基本問題と若干の改革課題を再考察しようとするものです。(本書 「はじめに」より)

目次

第1章 私の社会保障研究の観点と方法  
第2章 社会保障制度の諸定義への反省  
 第1節 社会保障制度審議会の1950 年勧告  
 第2節 制度審議会の1995 年勧告における構造改革論  
第3章 資本主義的な生活原則としての「自立・自助」原則の二面性
 第1節 資本主義的受救貧困の抽象的な必然性
 第2節 救貧および公的扶助による社会的生活保障の必然性
 第3節 共済保険から社会保険を経由して社会保障に至る必然性
 (補論)relative deprivation を人権剥奪的な社会的貧困にして要扶助貧困とみること
第4章 資本主義的な「自立・自助」原則の歴史的展開  
 第1節 清教主義的倫理としての「自立・自助」原則の生い立ちとその社会的強制 
 第2節 英国の自由主義時代の社会政策と新救貧法体制  
 第3節 熟練労働者たちの集団的自助運動の展開  
 第4節 19 世紀末葉以降における「自立・自助」原則の動揺と国営労働者保険の生成  
第5章 国家独占資本主義化のもとでの社会保障の形成とその諸矛盾  
 第1節 両大戦間における「全般的危機」対応の社会保障的変容  
 第2節 べヴァリッジ・モデル=社会保険本位の社会保障の脆弱性  
むすびに代えて   
 (1)民主主義と生存権保障  
 (2)グローバリゼーションと福祉国家,福祉連帯  

著者略歴

著:相澤 與一
福島大学名誉教授

ISBN:9784883522613
出版社:創風社
判型:A5
ページ数:81ページ
価格:900円(本体)
発行年月日:2020年07月
発売日:2020年08月05日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS