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イン/ポライトネス研究の新たな地平

批判的社会言語学の広がり

編著:大塚生子
編著:柳田亮吾
編著:山下仁

紙版

内容紹介

イン/ポライトネス研究は新たなステージへ
政治、AI、ソーシャルメディア、マウンティングなど「協調」と「非協調」、「ポライト」と「インポライト」のスペクトラムを捉える。本書は、複雑化、多様化する社会の幅広いコミュニケーションへと視野を広げ、イン/ポライトネス研究の地平を開くことを目的とする。

目次

まえがき 大塚 生子・柳田 亮吾・山下 仁  1
イン/ポライトネスと利害・関心 4
イン/ポライトネスと感情 7
本書の構成 12
参考文献 19

第1章 イン/ポライトネス研究の新たな地平を目指して 柳田 亮吾  21
1. はじめに 21
2. ポライトネス研究の誕生と発展 21
2.1. 伝統的なポライトネス研究 22
2.2. インポライトネス・ルードネス研究の胎動 27
2.3. ポライトネス研究の隣接分野:批判的談話研究 30
3. イン/ポライトネスへの談話的アプローチ 33
3.1. 1次的ポライトネスと2次的ポライトネスの区別 34
3.2. 話し手中心主義への批判 35
3.3. ポライトネス偏重への批判 37
3.4. 均質な文化観への批判 38
4. イン/ポライトネス研究の広がり 40
4.1. イン/ポライトネス研究の対象 41
4.2. 表出的イン/ポライトネス 43
4.3. 分類的イン/ポライトネス 47
4.4. メタ語用論的イン/ポライトネス 48
4.5. イン/ポライトネスと利害・関心、感情 50
5. おわりに 53
参考文献 53

第2章 イン/ポライトネスと感情 大塚 生子  59
1. はじめに 59
2. イン/ポライトネス研究の射程 60
2.1. 一次的評価と二次的評価 61
2.2. より広い枠組みを求めて 66
3. イン/ポライトネスと「感情」 69
3.1. イン/ポライトネス研究における「感情」 69
3.2. 感情とは何か? 72
4. 事例分析 74
4.1. 「表示されない感情」にまつわる問題 74
4.2. 実質的利害を超越する感情 82
4.3. 感情の「不適切」な表出は「失敗」か? 87
5. おわりに:感情の可能性と不可能性 91
参考文献/資料 92

第3章 協調的ではないコミュニケーション――協調の原理、ポライトネス理論とジークフリート・イェーガーの装置分析 山下 仁  95
1. はじめに 95
2. 協調の原理の問題 96
2.1. 協調の原理と含みについて 96
2.2. 協調の原理の合理性について 99
2.3. 協調の原理と含みのつながりに関する説明について 101
2.4. 含みという概念に関する説明について 103
3. ポライトネス理論 105
3.1. ロビン T. レイコフ 106
3.2. ペネロピ・ブラウンとスティーブン・C.・レヴィンソン 108
3.3. その他のポライトネス理論 112
4. 批判的談話分析、批判的談話研究の概観 117
4.1. 批判的談話研究の概観とウェルフェア・リングイスティックス 117
4.2. ジークフリート・イェーガーの装置分析 119
5. 国会での議論 122
6. おわりに 128
参考文献 129

第4章 断絶のコミュニケーションをイン/ポライトネスの観点から考える 石部 尚登  133
1. はじめに 133
2. 断絶のコミュニケーション 135
2.1. ポライトネス理論からみた立花発言 135
2.2. インポライトネス理論からみた立花発言 138
2.3. 政治的ディスコース 141
3. 複数の多様な聞き手 144
3.1. イン/ポライトネス研究における二者間モデル 145
3.2. 参与枠組み 147
3.3. 複数の聞き手が話し手の発話行為に与える影響 150
4. 再び立花発言について考える 152
4.1. 立花発言における聞き手 152
4.2. 複数の聞き手を措定することでみえてくるもの 153
5. おわりに 156
参考文献 156

第5 章 「マウンティング」をイン/ポライトネス研究から考える 大塚 生子  161
1. はじめに 161
2. 「マウンティング」「マウントをとる/とられる」とは 164
2.1. 一次的使用 164
2.2. 関連先行研究 167
3. 談話分析 171
3.1. 分析データ 171
3.2. 談話分析 173
3.2.1.談話例1 173/3.2.2.談話例2 177
4. マウンティングとイン/ポライトネス 182
4.1. 「円滑なコミュニケーション」と聞き手の評価 183
4.2. 話し手のフェイス 185
4.3. 品行と感情 187
4.4. 参与の枠組み 191
5. おわりに 194
参考文献 196

第6章 参与者が傷ついたとされるコミュニケーションのイン/ポライトネス――Twitterにおける事例から 中川 佳保  201
1. はじめに 201
2. 先行研究 202
2.1. ことばによる傷つきに関する先行研究 202
2.2. ことばによる傷つきの研究に対するポライトネス理論の貢献可能性 206
3. 理論的背景 208
3.1. B&L(1987)のポライトネス理論 208
3.2. 本稿で用いる枠組み:談話的アプローチにもとづいて 209
3.2.1.インポライトネスの考慮 210/3.2.2.話し手中心主義からの脱却210/3.2.3.フェイス 211
3.3. フェイスと傷つきの関係 212
4. 事例分析 213
4.1. Twitterおよびデータについて 213
4.2. 分析 217
4.2.1.Dからの攻撃とTの反撃 217/4.2.2.ツイートという形での反撃218/4.2.3.読み手によるTのフェイスの回復 219/4.2.4.リプライへの応答 221/4.2.5.さらなる応答 222
5. 考察 223
5.1. 傷つきについての示唆 223
5.1.1.分析総括 223/5.1.2.傷ついた者に対する第三者の位置取り 224
5.2. 傷つき研究におけるフェイスという観点の限界 225
6. おわりに 228
参考文献 229

第7章 医療隠語に見るイン/ポライトネス・ストラテジー ポポヴァ エカテリーナ  233
1. はじめに 233
2. 医療ポライトネスについて 234
3. 医療隠語とは何か 238
3.1. 本稿における隠語の定義 238
3.2. 医療現場において使用される隠語 240
4. 調査概要 242
4.1. 調査方法 242
4.2. 調査協力者 244
5. イン/ポライトネスとしての医療隠語の使用 245
5.1. ①(ポライトネス)医療従事者⇔医療従事者/(発話)医療従事者⇄医療従事者 245
5.2. ②(ポライトネス)医療従事者⇒患者/(発話)医療従事者⇄医療従事者 249
5.2.1.患者の羞恥心への配慮 249/5.2.2.患者の不安への配慮 253
5.3. ③(ポライトネス)医療従事者⇒第三者/(発話)医療従事者⇄医療従事者 262
5.4. ④(ポライトネス)患者⇔医療従事者/(発話)患者⇄医療従事者266
6. 結論と今後の課題 268
引用文献 270

第8章 組織ディスコースにみるポライトネスとパワー行使の一考察 高木 佐知子  273
1. はじめに 273
2. 先行研究 275
3. データと方法論 279
4. 分析と考察 281
4.1. 上司から部下に対するパワー行使 281
4.1.1.パワー行使が明示的になされた場合 281/4.1.2.パワー行使が非明示的になされた場合 284
4.2. 部下から上司に対するパワー行使 287
5. まとめ 292
参考文献/データ 294

第9章 公的機関で使用される「やさしい日本語」とポライトネス――若い世代の日本在住外国人の意識に着目して 王 一瓊  297
1. はじめに 297
2. 「やさしい日本語」について」 299
2.1. 多様な「やさしい日本語」 299
2.2. 「やさしい日本語」の課題 300
3. ポライトネスについて 301
3.1. ポライトネスとインポライトネス 301
3.2. ポライトネスと「やさしい日本語」 303
3.3. 公文書を「やさしく」するためのジレンマとポライトネス 304
3.4. 本稿の位置付け 305
4. 調査概要 306
4.1. 調査方法 306
4.2. 調査協力者の概要 309
4.3. 質問項目 309
5. 調査結果 310
5.1. 外国人住民の言語使用実態 310
5.2. 「やさしい日本語」の捉え方 312
5.3. やさしい日本語の可能性:外国人住民たちの提案 318
6. 分析及び考察 320
6.1. その実用性から、「やさしい日本語」は「易しい」か 321
6.2. 「優しさ」の観点から、「やさしい日本語」は丁寧か 322
6.3. 外国人は「やさしい日本語」を必要としているのか 323
7. 終わりに:「やさしい日本語」の可能性 325
参考文献 326

第10章 大学「初修外国語教育」におけるジェンダー、セクシュアリティを考える 糸魚川 美樹  329
1. はじめに 329
1.1. 問題の所在 329
1.2. 無意識の差別、偏見 331
1.3. ジェンダー、外国語教育、ポライトネス研究 333
2. スペイン語学習を通して出会うジェンダー、セクシュアリティ 335
2.1. スペイン語の性とジェンダー化 335
2.2. 「性を正す」という行為 338
2.3. 文法上の性と女の不可視化 341
2.4. 教科書におけるジェンダーのステレオタイプ 343
2.5. 外国語教育における異性愛主義 346
3. 言語規範への抵抗 348
4. おわりに:批判的な視点を養う場として外国語教育 351
参考文献/資料 352

第11章 ポライトネスの観点から見た中国語の「新敬語」――「亲」を手掛かりとして 毋 育新  355
1. はじめに 355
2. 「礼」と中国語の敬語 356
3. 文化大革命時の敬語 360
4. 敬語の「復権」 362
5. AIが造る「新敬語」 364
6. 日本語のケース 366
7. 「新敬語」のメカニズム 368
8. 終わりに 370
主要参考文献/例文出典 370

執筆者紹介 373

著者略歴

編著:大塚生子
大塚 生子
【現職】大阪工業大学工学部講師
【専門】社会言語学、語用論
【主要業績】「論文」「ママ友の対立場面におけるイン/ポライトネス分析―感情と品行のフェイスワーク」滝浦真人・椎名美智編著『イン/ポライトネス―からまる善意と悪意』ひつじ書房、2023年、29-59。「日常会話における差別の(再)生産について―ヘイトスピーチ(差別的談話)をミクロレベルで考える」『大阪工業大学紀要』2019年、Vol. 64. No. 2. 37-52。「イン/ポライトネスと会話における『期待』―夫婦間会話の対立場面の談話分析を通して」三牧陽子、村岡貴子、義永美央子、西口光一、大谷晋也編『インターカルチュラル・コミュニケーションの理論と実践』くろしお出版、2016年、101-115。
編著:柳田亮吾
柳田 亮吾
【現職】実践女子大学文学部英文学科専任講師
【専門】社会言語学・語用論・(批判的)談話研究
【主要業績】「著書」Letʼs Learn: Engineering English for Practical Applications. 共著、大阪大学出版会、2020年。
「論文」「身体の政治・ジェンダー・イン/ポライトネス」滝浦真人・椎名美智編著『イン/ポライトネス―からまる善意と悪意』ひつじ書房、2023年、103-131。「ポライトネスと利害・関心―東京都議会やじ問題をてがかりに」『ことばと社会』編集委員会編『ことばと社会』19号、三元社、2017年、178-202。
編著:山下仁
山下 仁
【現職】大阪大学大学院人文学研究科教授
【専門】社会言語学
【主要業績】「著書」「怒りの隠蔽―聞き手に怒りをもたらす言語機能について」柿原武史、仲潔、布尾勝一郎、山下仁編著『対抗する言語―日常生活に潜む言語の危うさを暴く』 三元社、2021年、339-369。
「論文」”Die Invektiven verschleiernde Funktion der Sprache”, Hiroyuki Miyashita, Yasuhiro Fujinawa, Shin Takama eds. Form, Struktur und Bedeutung-Festschrift für Akio Ogawa, Stauffenburg Festschriften, 2020年、387-406。「社会言語学からみたこれからの言語・コミュニケーション教育の課題」佐藤慎司、村田晶子編著『人類学・社会学的視点からみた過去、現在、未来のことばの教育―言語と言語教育イデオロギー』三元社、2018年、94-119。

ISBN:9784883035793
出版社:三元社
判型:A5
ページ数:384ページ
定価:3500円(本体)
発行年月日:2023年10月
発売日:2023年10月31日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VSL
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:DS