出版社を探す

アタマとココロの健康のために

社会学的知の実践:レイシズム・ミソジニー感染防止ワクチンとハラスメント依存症治療

著:ましこ・ひでのり

紙版

内容紹介

差別、ヘイトスピーチ、ハラスメントなど社会的ウイルスから身をまもり、被害者/加害者にならないための社会学 
ヒト(宿主)に寄生することで暴力性を発揮させる社会的ウイルスに感染しないこと、発症しないようにおさえこむにはどうしたらいいのか。「レイシズム系」「男尊系」「階級差別」「独善的潔癖症」「アンチ思想的多様性」「コロニアリズム系」の各ウイルスの感染経路をたち、パンデミックをひきおこさないためになすべき方策を考えていく。

目次

はじめに 9

1章 「社会的ウイルス」感染防止のために 17
 1-0 「社会的ウイルス」とは一体なにか? 18
 1-1 レイシズム系ウイルス 18
  1-1-1 本質と感染経路:本質主義/優生思想/排外主義 18
  1-1-2 具体的対策:時空上の「旅行」による比較対照 20
 1-2 男尊系ウイルス 21
  1-2-1 本質と感染経路:「オトコはつらいよ」という自己満足的なヒロイズム 21
  1-2-2 具体的対策 23
  1-2-3 補論:反動としてのミサンドリーと女性戦士 24
 1-3 階級差別ウイルス 25
  1-3-1 本質と感染経路:資産/地域格差を能力差と錯覚させるメカニズム 25
  1-3-2 具体的対策 27
 1-4 独善的潔癖症ウイルス 29
  1-4-1 本質と感染経路:無自覚な自己中心性がもたらす独善性=錯覚の産物としての唯我独尊 29
  1-4-2 具体的対策:「外部」を汚濁と侮蔑・忌避する感覚からの「卒業」 30
 1-5 アンチ思想的多様性ウイルス 33
  1-5-1 本質と感染経路:視野のせまさ=自己中心性がよびこむ思想的非寛容 33
  1-5-2 具体的対策:視野狭窄をさけるための「外部」の意識化 36
 1-6 コロニアリズム系ウイルス 37
  1-6-1 その本質:他空間に対する侵略・寄生 37
  1-6-2 その感染経路:植民者たちから現地エリートへ 41
  1-6-3 具体的対策:略奪・強奪行為に対する羞恥心の涵養 42

2章 「ハラスメント依存症」治療のために 51
 2-1 「ハラスメント依存症」の本質:ハラッサー(攻撃者)とハラッシー
  (被害者) 53
 2-2 「ハラスメント依存症」の治療とコピー回避:治療/透明化/抑止 55
 2-3 「ハラスメント依存症」とコピー回避からみた社会学周辺の知 64

3章 加害者性= 「中年化」という病理をさけるために 75
 3-0 「中年化」とは:理念型としての「オヤジ化/オバサン化」 76
 3-1 「オヤジ化」とは:「男尊系ウイルス」による病理の進行 77
  3-1-1 男性むけ「グラビア」自体が、女性にとって環境セクハラとなりえるのはなぜか 81
  3-1-2 「オヤジ化」の主要被害者がわかい女性だけではない理由 83
 3-2 「オバサン化」とは:「男尊系ウイルス」によるミソジニーの内面化 87
 3-3 「中年化」防止のために、なにをすべきか:健全な羞恥心維持のためのモニタリング 89

4章 アンチウイルス/攻撃依存症抑止技法としての社会学 95
 4-1 近現代の誕生と並行していた社会学 96
 4-2 リベラリズム(解放思想)と並行してきた社会学 99
 4-3 被害者にならないための護身術としての社会学 101
 4-4 加害者にならないための「姿見」としての社会学 107
 【コラム】社会学って、結局なに?:「社会学的想像力」と「窓の学問」 112

5章 補論1:差別周辺のソボクな疑問にこたえて 123
 Q0 マジョリティ/マイノリティ、ってなに? 125
 Q1 差別と区別のちがいとは? 127
 Q2 差別のなかで、一番重大なものはなに?:量的差別として突出した女性差別 129
 Q3 差別かどうかは、差別されたと感じた自称被害者の主観できまるの? 131
 Q4 ヘイトスピーチと差別表現のちがいとは? 134
 Q5 レイシズムとは? 136
 Q6 欧米や韓国では黒人差別がねづよいといわれるけど、日本では? 141
 Q7 黒人差別・部落差別以外の日本型レイシズムとして深刻なものはなにか?:在日コリアンおよび沖縄差別 143
 Q8 ミソジニー/レイシズム以外で深刻な差別問題といえば? 145
 Q9 それ以外で深刻な差別問題はないのか? 148
 Q10 差別しないために必要なことはなにか?:健全な悲観主義にも  とづくモニタリングによる加害リスクの最小化 152

6章 補論2:無自覚なハラスメントのコピーとしての日本近代史 163
 6-1 日本近代史イメージ再考 164
 6-3 右派ナショナリストたちにとっての戦後日本 166
 6-4 戦前日本のふりかえり:ハラスメント史観からみた帝国日本 169

7章 補論3:大学・大学院で「まなびなおす」という意味 179
   大学など、高校以降で勉強することの意味と、おぼえておいた方がいいこと
 7-1 「児童生徒」の教育機関から、「学生」の学習空間へ 180
 7-2 大学での勉強とそれ以外の本質的ちがい 182
 7-3 「卒業論文」など大学独自の制度、そして時間割にならぶ講義科目の含意 187
 7-4 単位取得は自分自身への「長期投資」。大学/院修了者の蓄積は社会への「長期投資」 195
 7-5 授業へののぞみかた 200

おわりに 208

参考文献 211
索 引 214

著者略歴

著:ましこ・ひでのり
1960年うまれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了(博士:教育学)。現在、中京大学国際教養学部教授(社会学)。
主要著作:『増補新版 イデオロギーとしての「日本」』『増補新版 たたかいの社会学』『幻想としての人種/民族/国民』『社会学のまなざし』『愛と執着の社会学』『加速化依存症』『ゴジラ論ノート』『コロニアルな列島ニッポン』『言語現象の知識社会学』『あそび/労働/余暇の社会学』など(以上、三元社)。
共著に真田・庄司編『事典 日本の多言語社会』(岩波書店)、前田・野村編『朝倉漢字講座5 漢字の未来』(朝倉書店)、『ことば/権力/差別』(三元社,編著)、『行動する社会言語学』(三元社、共編著)、大橋・赤坂・ましこ『地域をつくる―東海の歴史的社会的点描』(勁草書房)、田尻・大津 編『言語政策を問う!』(ひつじ書房)、米勢・ハヤシザキ・松岡編『公開講座 多文化共生論』(ひつじ書房)、M. ANDERSON, P. HEINRICH ed.“Language Crisis in the Ryukyus”Cambridge Scholars Publishingほか

ISBN:9784883034703
出版社:三元社
判型:4-6
ページ数:224ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2018年12月
発売日:2018年12月14日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB