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体制転換期ネパールにおける「包摂」の諸相

言説政治・社会実践・生活世界

編著:名和克郎
他著:石井 溥
他著:中川加奈子

紙版

内容紹介

多民族・多言語・多宗教・多文化性を前提とした連邦民主共和制に向けた転換期のネパールを生きる人びとの歩み、その主張と実践がおりなす布置を「包摂」を梃子に明らかにすると同時に、「包摂」をめぐる現象を民族誌的状況(生活世界)の中に位置付け、「統合」から「包摂」へと転換した「民主化」のいまを描きだす。

目次

はじめに
名和克郎

凡例

序 章 体制転換期ネパールにおける「包摂」の諸相――言説政治・社会実践・生活世界
名和克郎
I 本書の企図 2/II 近現代ネパール国家と住民 5/III ネパールにおける「包摂」 12/IV 本書の構成 18

第1章 近現代ネパールにおける国家による人々の範疇化とその論理の変遷
名和克郎
I はじめに 36/II 1854年ムルキ・アイン―国家単位でのカースト的ヒエラルヒーの設定 39/III パンチャーヤット時代―少数民族政策の欠如 50/IV 1990年憲法―民主化とマイノリティ問題の表面化 56/V 1990年憲法下における出自に基づくマイノリティの運動と政府の対応 61/VI マオイストの主張―様々な「解放」への戦い 65/VII 2007年暫定憲法―集団的多様性と「包摂」 68/VIII 2015年憲法へ 71/IX おわりに 77

第2章 ネパールの「カースト/民族」人口と「母語」人口――国勢調査と時代
石井溥
I はじめに 90/II 近現代ネパールの国家形成、国民形成と国勢調査90/III 国勢調査の手引き書にみる 「ジャート」「ジャーティ」「ジャナジャーティ」 95/IV 1991年、2001年、2011年の国勢調査結果の「カースト/民族」集計比較 98/V 言語(母語)人口と「カースト/民族」108/VI 結論 115/表1~12 123

第3章 国家的変動への下からの接続――カドギのカースト表象の展開から
中川加奈子
I はじめに 132/II 先行研究 132/III カドギたちによる運動の展開 136/IV 新たな社会環境への接続 146/V NKSSの役割の変化155/VI おわりに 161

第4章 ガンダルバをめぐる排除/包摂――楽師カースト・ガイネから出稼ぎ者ラフレへ
森本泉
I はじめに 166/II 排除/包摂をめぐって ダリットと移民 169/III ガンダルバをめぐる変化―生業とアイデンティティ 173/IV グローバル化と社会空間の変容―アイルランドに渡った兄弟の事例 182/V おわりに 191

第5章 ネパール先住民チェパン社会における「実利的民主化」と新たな分断――包摂型開発、キリスト教入信、商店経営参入の経験
橘健一
I はじめに 200/II ネパール先住民チェパンと2000年以降の山村社会の変化 201/III 社会の変化と新たな言説の広がり 205/IV 包摂型開発の成功 209/V キリスト教への入信の進展 220/VI バザールの商店経営への参入 226/VII 実利的民主化と新たな社会的分断 228

第6章 何に包摂されるのか?――ポスト紛争期のネパールにおけるマデシとタルーの民族自治要求運動をめぐって
藤倉達郎
I はじめに 234/II マデシ自治州運動 236/III タルー自治州運動244/IV 結びにかえて 251

第7章 そこに「女」はいたか――ネパール民主化の道程の一断面
佐藤斉華
I はじめに 258/II 女性による/についての/のための言説 259/III ネパール女性をめぐる諸言説―評価 279/IV おわりに 286

第8章 テーマ・コミュニティにおける「排除」の経験と「包摂」への取り組み――人身売買サバイバーの当事者団体を事例に
田中雅子
I はじめに 298/II 社会的スティグマを抱える人びとにとっての当事者団体 300/III ネパールにおける人身売買 306/IV 人身売買サバイバーの当事者団体シャクティ・サムハ 311/V 人身売買の被害に遭ったサバイバーが経験した排除 314/VI 当事者団体としての包摂の実践323/VI 結論―当事者団体による活動の到達点と課題 328/おわりに 330

第9章 ストリート・チルドレンの「包摂」とローカルな実践――ネパール、カトマンドゥの事例から
高田洋平
I はじめに 336/II 子ども、日常的実践、ストリート空間 339/IIIカトマンドゥのストリート空間 343/IV ストリート・チルドレンの日常的実践 349/V おわりに 371

第10章 乱立する統括団体と非/合理的な参与――ネパールのプロテスタントの間で観察された団結に向けた取り組み
丹羽充
I はじめに 378/II ネパールのプロテスタンティズムと統括団体―歴史的概観 381/III 「真の」代表の座をめぐって 388/IV 非/合理的な参与 394/V おわりに 401

第11章 「包摂」の政治とチベット仏教の資源性――ヒマラヤ仏教徒の文化実践と社会運動をめぐって
別所裕介
I はじめに―「仏教」をめぐる政治動態 410/II 中国の開発資本と「発展のため」の仏教 419/III ヒマラヤ仏教徒の文化実践と社会運動 425/IV ターニング・ポイントとしてのルンビニ観光年 442/V おわりに―HBによる文化実践と社会運動 446


第12章 移住労働が内包する社会的包摂
南真木人
I はじめに 452/II 移住労働は社会的包摂に寄与するか 454/III ネパールにおける移住労働 455/IV 移民送り出しシステムと仲介者 457/V 移住労働の実態 465/VI 社会的送付と社会的包摂 473/VII おわりに 479

第13章 多重市民権をめぐる交渉と市民権の再構成――在外ネパール人協会の「ネパール市民権の継続」運動
上杉妙子
I はじめに 486/II 「ネパール市民権の継続」運動の背景 490/III在外ネパール人協会と「ネパール市民権の継続」運動 497/IV 考察516/V 結論 519

第14章 現代ブータンのデモクラシーにみる宗教と王権――一元的なアイデンティティへの排他的な帰属へ向けて
宮本万里
I はじめに 526/II 国会と国会議員の役割 529/III ポリティクス(政党政治)からの距離をめぐって 533/IV デモクラシーと王権 535/V 市民の権利と宗教者であること 539/VI 選挙委員会の権限と役割 545/VII 公共的な空間と差異の政治 546/VIII おわりに 550

おわりに

索 引

執筆者紹介

著者略歴

編著:名和克郎
東京大学東洋文化研究所教授。博士(学術)。専攻は人類学、ヒマラヤ民族誌。著書に『ネパール、ビャンスおよび周辺地域における儀礼と社会範疇に関する民族誌的研究─もう一つの<近代>の布置』(三元社、2002年)、共編著にSocial Dynamics in Northern South Asia Vol. 1 & Vol. 2 (Manohar, 2007)、『グローバリゼーションと〈生きる世界〉─生業からみた人類学的現在』(昭和堂、2011年)他がある。
他著:石井 溥
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所名誉教授。社会学博士。専攻は文化人類学、ネパール文化・社会研究。共編著に『現代ネパールの政治と社会─民主化とマオイストの影響の拡大』(明石書店、2015年)、Social Dynamics in Northern South Asia Vol. 1 & Vol. 2 (Delhi: Manohar, 2007)、主な論文に、「流動するネパール─あふれるカトマンドゥ盆地」『南アジアの文化と社会を読み解く』鈴木正崇(編)、pp. 435-71、慶応義塾大学東アジア研究所(2011年)他がある。
他著:中川加奈子
人間文化研究機構総合人間文化研究推進センター研究員/国立民族学博物館「南アジア研究」拠点研究員。博士(社会学)。専攻は人類学、社会学、ネパール地域研究。著書に『ネパールでカーストを生きぬく─供犠と肉売りを担う人びとの民族誌』(世界思想社、2016年)、主な論文に、The Role of Women’s Self-Help Networks in Anti-caste Discrimination Movements in Nepal. In Rethinking Representations of Asian Women: Changes, Continuity, and Everyday Life, N. Ijichi, A. Sato, R. Sakurada eds. (Palgrave Macmillan, 2015) 他がある。

ISBN:9784883034338
出版社:三元社
判型:A5
ページ数:592ページ
定価:6300円(本体)
発行年月日:2017年03月
発売日:2017年03月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB