序章 福清出身の華僑・華人をめぐる視点
1 問題の所在
2 先行研究についての検討
3 本書の視座と研究方法
4 本書の構成
第1章 福清出身者の日本移住と呉服行商
はじめに
1 福清人の日本移住の歴史
2 明治初期の福清出身者
3 呉服行商人の福清出身者の来日とその実態
4 まとめ―近代日本の新たな社会構造のなかで生存空間を見出す
第2章 福清の呉服行商人と近代日本の農村社会―ある華僑の回想録への解読を通して
はじめに
1 福清呉服行商人と日本農村の近代産業化
2 「変わらない」農村の慣習と行商人
3 村の一員か、厄介なよそ者か
4 まとめ―日本社会を逆照射する
第3章 ドキュメントから見る福清華僑の「移動」
はじめに
1 日中戦争勃発前の暮らしと移動
2 日中戦争下の華僑
3 戦後の華僑の「帰国」と「探親」
4 まとめ―「大きな歴史」のなかに福清出身者の「移動」と暮らしを位置づける
第4章 戦後における職業転換とコミュニティの再編
―福岡、熊本、鹿児島在住華僑を中心に
はじめに
1 一九世紀末から二〇世紀初頭の福清人と中華料理店経営
2 熊本林一族によるスーパーマーケット経営への展開
3 熊本の華僑コミュニティと同郷者ネットワーク
4 鹿児島県の華僑
5 まとめ―地方における福清出身華僑の職業転換とコミュニティの再編
第5章 移住・再移住と地方都市の近現代化―三重県と島根県へ移住した福清出身者
はじめに
1 和歌山県から三重県・尾鷲市へ―林孫琪の貸金業への転身
2 尾鷲市に移住したほかの福清出身者
3 津市唯一の華僑として―蔡義雄一家の移住
4 経済成長期の尾鷲と福清出身華僑の移住
5 島根県の福清出身者と華僑コミュニティ
6 まとめ―日本の流通革命とともに
第6章 福清華僑二世による同郷紐帯の継承と同郷意識―旅日福建同郷懇親会の設立と活動
はじめに
1 戦前の福清出身者による同郷団体
2 華僑青年運動と福建出身の二世華僑
3 戦後の福建出身者による同郷団体の復活と連携
4 日中国交回復前の旅日福建同郷懇親会
5 日中国交回復後の同郷懇親会
6 旅日福建同郷懇親会の活動から見る二世華僑の民族意識と同郷意識
7 「ポスト二世」の福清出身者コミュニティと旅日福建同郷懇親会の新たな機能
8 まとめ―継承されていく同郷紐帯と同郷意識
第7章 「異郷」から「故郷」へ―神戸普度勝会における「孤魂」の行方を追って
はじめに
1 神戸華僑による普度
2 華僑と死者供養
3 「普度」と福清出身華僑
4 まとめ―「異郷」が「故郷」に変わった時
第8章 文化的・社会的システムとしての「故郷」―移住、文化継承とコミュニティの「連続性」
はじめに
1 「復活」した宗族
2 「福清人」による移住の連続性
3 宗族の「復興」と福清出身華僑
4 移住の連続性と伝統文化の新たな担い手
5 まとめ―文化的、社会的システムとしての「故郷」
第9章 「民族」や「人種」を超えて―絵本作家・画家葉祥明のコスモロジー
はじめに
1 葉祥明の平和絵本と「葉祥明の世界」
2 「世界」への認識の形成
3 画家としての使命感への融合
4 まとめ―コスモポリタンという生き方
第10章 文化人類学における華僑華人研究の意義と方法
はじめに
1 「華僑華人」研究は何を問題にしてきたの
2 華僑華人研究の系譜
3 これまでの華僑華人研究の主な理論的枠組みと著作
4 まとめ―華僑華人研究の試み
終章 福清出身華僑と近現代日本
1 呉服行商を主な生業とした一九世紀末から終戦まで
2 局部集中的な定住が進む戦後混乱期から一九八〇年代まで
3 「新」華僑が増加する一九八〇年代半ば以後
4 同郷・同族ネットワークと文化継承に果たす「故郷」の役割
5 福清出身華僑が生きてきた近現代日本
6 方法としての華僑華人研究
あとがきにかえて―謝辞
参考文献
索引