現在、独立行政法人日本学生支援機構から奨学金を借りている学生は全学生の約40%、実に5人に2人は学費を賄うために借金をしている計算になる(平成27年度・日本学生支援機構調査)。そして、その「借金」を背負った若者が、卒業後の就職によっても十分な収入を得られない一方で、借金の返済に苦しむという構図がある。実際、返済に苦しむ元学生も増加の一途であり、法的手続に移行した件数(支払督促申立件数)は平成16年に208件にとどまっていたものが、平成23年には1万件を突破、その後も高止まりの状態が続いている。
そのような中、高学費と将来に多額の負担となる奨学金制度について問題意識を持つ北海道の学生・弁護士・司法書士・大学関係者・ジャーナリストなどが2013(平成25)年7月に北海道学費と奨学金を考える会(インクル)を立ち上げた。
インクルが少しずつ奨学金の返済に苦しむ若者に認知されてくるに伴い、多数の意見や相談が寄せられるようになった。その中には、奨学金が返済できなかったり、理不尽な形で返済を求められる等、法的な処理が必要になることもあった。これらのニーズに対応するため、インクルに加入する弁護士が中心となって北海道奨学金弁護団が結成された。北海道奨学金弁護団は結成以後約4年にわたり、数々の訴訟を手がけ、返還に悩む元学生を支援してきた。
本書は、インクルのこれまでの活動をもとに、奨学金の返還に悩んでいる人をエマージェンシーレベルとして3つの段階(①奨学金の返還ができなくなりそうなとき、②奨学金の返還ができなくなったとき、③支払督促異議申立て期間を経過したとき)に分類。それら段階に応じて、解決策を提示し、必要な書類の書き方や収集すべき資料を例示するなど、実践的な内容となっている。また、マンガを用いることによって、当事者が読みやすいものとなっている。奨学金の返還に悩んでいる人はもとより、奨学金返還に悩む人のご家族、教育関係者・法律関係者等の支援者においても参考にしていただくことができる。
【Emergency Level 1】 奨学金の返済ができなくなりそうなとき
1 こんなときは、今すぐ返還猶予を願い出よう!
2 こんなときは、返還免除を申請しよう!
3 家族はみんな肩代わりするの?
【Emergency Level 2】 奨学金が返済できなくなったとき
1 支払えないとき、こんなに不利益がある!?
2 裁判所から書類がきたら……
3 支払督促を受け取ったら、すぐに動こう!
【Emergency Level 3】 支払督促異議申立期間を経過したとき
1 あきらめないで!裁判で主張しよう!!
2 まだまだあきらめないで!救済のための最終手段‼
コラム1 高校の現場から 学ぶ自由と幸せな人生を
コラム2 大学の奨学金窓口から 札幌市内私立大学における奨学金返還説明会での取組み
コラム3 返還当事者から 奨学金と私
巻末付録 奨学金相談窓口一覧