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学術選書 070

諸文明の起源 10

ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀

著:樺山 紘一

紙版

内容紹介

ヨーロッパ近代文明を概観し、その誕生の様相を全体として跡づけることは、通例の歴史記述では至難であるが、それを可能にした文化資料がある。巨大な覇権国家スペインから独立を勝ち取ったオランダの「黄金世紀=17世紀」がもたらした、ユニークで豊かな絵画作品群である。市民絵画ともいうべき特異な流派が描く風景画・静物画・肖像画・生活風俗画から、来たるべきヨーロッパ近代文明の開放的な諸相が垣間見られる。

目次

口 絵
はじめに ヨーロッパ近代文明の曙

序章 歴史のなかの一七世紀オランダ
1 はじめに
2 ヨーロッパ国際政治のなかで
3 政治・経済・社会の枠組
4 思想と芸術のステージで
5 描かれた黄金世紀の評価

第1章 自然の景観——人間が創った国土
1 オランダの土地と風土
2 気象と時間
3 静物と家畜
4 恵みと災いのあいだ
  〈恵み〉 a 田畑と作物  b 園芸と果樹  c 牧畜  d 漁撈 
  〈災い〉 a 嵐と難破  b 洪水と高潮  c 火災
5 動物たちの驚異
  a 博物学の領界  b 仮託された人間——猿  c 驚異の動物たち——鯨と象
  d 禽獣のユートピア

第2章 社会の景観——フランス・ハルスの眼に映った
1 団体と集会のイメージ
2 社会景観というもの
3 治安と救護
4 都市と建築——広場と水路
5 国土と地図

第3章 日常の景観——暮らしの豊かさはどこから
1 祝祭と社交の季節
2 「ステーン風放縦」をめぐって
3 生活と風俗のかぎりない愉楽
4 学校、遊び、家庭、祈り
  a 学校  b 遊び  c 家庭  d 祈り

第4章 人間の探求——レンブラントの世紀の写像
1 はじめに——四つの視角から
2 〈解剖学講義〉と医学・科学
  a アムステルダムの解剖学実習  b ライデン大学と医学
  c オランダの光学と物理学  d デカルトの存在  e 出版文化の隆盛
3 人倫としての「ダナエ」のかなた
  a 裸体の表現  b 裸婦像の倫理  c オランダの立ち位置
  d グロティウスとアルミニウス
4 「モーゼと十戒の石版」と歴史
  a 「十戒」の石版をめぐって  b 主題としての旧約聖書
  c アムステルダムのユダヤ人  d バタフィアという故郷
  e スカリージェルの古代史
5 光のなかの肖像
  a 最晩年の自画像  b カラヴァジョとフェルメールの光  c 光の科学と形而上学

第5章 異境の目撃——南アメリカからの贈物
1 「東インド」と「西インド」
2 ナッサウ伯のブラジル遠征
3 エクハウトの民族図誌
4 ポストのブラジル風景画
5 メーリアンの卓抜な好奇心

第6章 戦争と平和——ネーデルランドからウェストファリアへ
1 ブレダの戦い——ベラスケスとカロ
2 絵画のモデルとしての戦争
3 戦略と武器の革新
4 戦争の世紀の見取図
5 寛容の倫理、和解の理性
6 ウェストファリアの模索

あとがき
参考文献
図版一覧表
索 引

著者略歴

著:樺山 紘一
 印刷博物館館長。東京大学名誉教授。専門は、西洋中世史(フランス中世史)、西洋文化史。 1941年東京都生まれ。1965年東京大学文学部卒業、1968年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1969年京都大学人文科学研究所助手。1976年東京大学助教授、1990年東京大学教授、2001年退官。この間、文学部長(1997年4月〜1999年3月)、史学会理事長(1999年6月〜2001年5月)を歴任。2001年国立西洋美術館館長を経て、2005年10月より現職。2005年紫綬褒章受章。

ISBN:9784876988709
出版社:京都大学学術出版会
判型:4-6
ページ数:335ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2015年06月
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1DDF