複数の言語で生きて死ぬ
編:山本 冴里
内容紹介
地球には7000もの言語がある。人は、社会や歴史と複雑に絡まりあう言語に束縛され、翻弄されながらも、また言語によって道を探り拓いてゆく。言語の境界に生きることをテーマに、人間の生と死についてその想いや出来事を描く。
■本書帯より
地球には7000もの言語があって、複数の言語を使う人がたくさんいる。境界に生きることには時に困難が伴うけれど、一つの言語に囚われないことで、視界が広がっていく。そこからは、他者とともによりよく生きていくためのヒントが見つかるだろう。
■「まえがき」より
地球上には、7000ともいわれる数の言語があることをご存知でしたか。この本は、人間は生涯にわたってそうした言語を習いおぼえ、失い、常に複数の言語と関わりながら生きているという認識のうえに書かれています。複数の言語と絡みあう人間の生と死について、筆編者らを触発してやまない、記憶に残る人、資料、物語について語っていきます。
目次
第一章 夢を話せない:言語の数が減るということ
言語の数は変化する/失われていく言語/支配被支配の関係と言語シフト/後光のようなもの
第二章 夜のパピヨン:言語の数が増えるということ
言語を分けるもの/日本語というとまるで/夜のパピヨン/エスキーナでオニブスをペガして
第三章 移民と戦争の記憶:ことばが海を渡る
プロローグ/海を渡った日本語/海外の日本語の水脈と戦争/海を渡る人々/戦争の時代の「わたし」/人間の共通性/虚像に隠された顔/過去を引き継ぐ者として/痛みにことばを与える/エピローグ
第四章 ペレヒルと言ってみろ:「隔てる」ものとしてのことば
涙を流しながら/血溜りの中に/「かれら」の析出と「われわれ」との区別/踏み絵として、烙印として、抵抗の旗印としての言語
第五章 「あいだ」に、いる:言語の交差域への誘い
金網の、あちらとこちら/『宝島』/『デフ・ヴォイス―法廷の手話通訳士』/『ジャッカ・ドフニ―海と記憶の物語』/おわりに
第六章 彼を取り巻く世界は、ほとんど無に近いくらいに縮んでしまった:ことばの断絶と孤独
リヨン駅で/アメリカン・スクール/自分だけに閉ざされて/希望としての対等可能性
第七章 「伝わらない」不自由さと豊かさ:複数の言語で生きるという現実
三つの場所での出会いと経験/バンコクは東京のようになってほしいんです/お腹が痛いので、薬をもらえませんか/日系人は許してもらえない/不自由と困難さはどのように乗り越えていけるのか
第八章 内戦下、日本語とともに生きる:ことばを学ぶ意味
ダマスカスの友/日本語の響きに魅せられて/内戦の恐怖と日本語/内戦下、日本語とともに生きる/ことばを学ぶ意味
第九章 「韓国語は忘れました」:人にとって母語とは何か
忘れさられた言語/シホさんとの出会い/外国語に順番はない/歩み寄ることば/人が言語を持つ意味
第十章 こうもりは裏切り者か?:他者のことばを使う
裏切り者のこうもり/日本語を喋ることと、英語を喋ること/政治的、社会的状況の変化と街なかに見られる言語/日本から来ました、と言えない/和解
終章 複数の言語で生き死にするということ:人間性の回復をめざして
プロローグ/支配被支配の関係―植民地・戦争・差別/集団から個へ、対等と自由のための境界/複数のことばの活動によって生き死ぬとは?/ことばの活動によって人間性を回復する/エピローグ