関西大学東西学術研究所研究叢刊 61
風景論
東アジアから見る・読む・考える
編著:中谷 伸生
他著:村木 桂子
他著:桑野 梓
内容紹介
風景とは何か、という問題設定の下、日本美術を中心に、西洋美術や日本史や宗教学の論考を収録して、若手研究者たちによる斬新な研究を紹介する。これらの論考は「東アジア」という視点から考察されたものである。絵画史が多くを占めているが、近年、関心をもたれつつある多様な「風景画」をめぐる論攷となっている。
目次
はじめに
1
仙境に架かる橋
―狩野山雪筆《長恨歌画巻》を手がかりにして(村木桂子)
一 「愛と死」を描く「長恨歌」
二 狩野山雪筆《長恨歌画巻》の概要
三 長恨歌図に見る仙境の風景
四 中国絵画にみる山雪本のイメージソース
五 亭橋のある風景
六 近世初期の蓬莱仙境
海北友雪筆総持寺縁起絵巻について―描かれた境内からみる制作年代―(桑野梓)
一 総持寺と総持寺縁起絵巻
二 総持寺の歴史
三 海北友雪筆「総持寺縁起絵巻」について
四 描かれた風景
「秋草の美学」から考える日本と中国絵画における風景の表現(施燕)
一 「秋草の美学」から考える意味
二 源豊宗という人物
三 「秋草の美学」とは
四 日本絵画にみる「秋草の美学」
五 「龍」とは
六 風景の表現
七 改めて「秋草の美学」とは
浦上春琴の山水図をめぐって―《雨後山水図》と《蘭亭図》―(中谷伸生)
一 春琴筆《雨後山水図》
二 春琴の略歴
三 春琴の人柄
四 春琴作品の評価
五 春琴筆《蘭亭図》
六 蘭亭図の構成と細部描写
七 《益王重刻小蘭亭図巻》と王羲之『蘭亭序』
八 《雨後山水図》と《蘭亭図》
創られる風景―近世大坂の名所と風景―(内海寧子)
一 風景と名所について
二 近世大坂の名所見物
三 新しく創られる名所
四 まとめ
大和絵風景画における古典とモダン―松岡映丘筆《さつきまつ浜村》の分析を通して―(日並彩乃)
風景画におけるやまと絵の近代化とは何か
一 写実と様式の逆説:《夏立つ浦》から《さつきまつ浜村》へ
二 古典とモダン:風景画から風俗画へ
三 名も無き風景
大和絵風景画が表現したもの
土田麦僊《大原女》の風景(豊田郁)
一 《大原女》の制作経緯
二 大原女というモティーフ
三 西洋近代絵画からの着想
四 「クラシック」な美への憧憬
五 《大原女》における古典と近代
青木繁の絵画における人物のいる風景(髙橋沙希)
一 青木繁の魅力
二 当時の洋画界
三 初期作品(一八九六―一九〇三)
四 中期作品(一九〇四―一九〇七)
五 後期作品(一九〇八―一九一〇)
六 青木繁の人物描写
マックス・エルンストと空間表現、そして自然風景空間とイマージュの成立(嶋田宏司)
一 マックス・エルンストと風景、および空間
二 論文「色彩の生成について」にみる空間の意識
三 メカニックなオブジェ素描と地面
四 教材カタログの塗り潰しコラージュ
五 デ・キリコの都市空間とエルンストの自然風景
六 パリ期の風景表現
七 森の絵画シリーズ
八 怪鳥ロプロプという自然のイマージュ
風景を構成する「見えないもの」について―「バリ島の風景」を事例として―(磯忠幸)
一 天国のイメージと宇宙空間
二 リアルさの根源―現実とイメージの重層性
三 映像の解剖―映像人類学の試み
四 バリ島の風景を描く―シュピースと「風景とその子供たち」
五 「絵画」の導入―新しい表現様式としての「絵画」―
六 バトゥアンの絵画―「サクティ」が構成する世界―
七 見えないものを見る
八 風景を読解する
あとがき
著者紹介
ISBN:9784873547213
。出版社:関西大学出版部
。判型:A5
。ページ数:348ページ
。価格:4700円(本体)
。発行年月日:2020年03月
。発売日:2020年04月07日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AFC。