本書の内容と構成—とてもみじかい導入部—
第一部◉上代日本語の述語形式(複語尾とその周辺)
0. はじめに
1. 文と述語、そして述語形式にかんする基本的な考え
1.1.(単)文の基本構成
1.2. 述語用言のはたらきと「複語尾」
1.3. 二類の複語尾のレヴェルのちがいと出現順序の先後
補説 山田文法との関連
2. a)動詞のあらわす内容の変換にかかわる複語尾
2.1. 受身・使役などにかかわる複語尾
2.2. 完成・継続・結果(パーフェクト)などにかかわる複語尾
3. b)文全体の意味にかかわる複語尾と叙法的意味の体系
3.1. b類複語尾の全体像
3.2. 既然の現実の確言—連用形分出の複語尾(「き」と「けり」)—
3.3. 非現実事態の想像—未然形分出の複語尾—
3.4. 現実(未確認)の確言・想像/非現実の確言—終止形分出複語尾を中心に—
3.5. 動詞の基本形述語の位置づけと事態の感覚的把握にかかわる複語尾
3.6. 語彙の転換から文の意味の転換へ—a類複語尾とb類複語尾の交渉—
4. c)用言以外に接する(接し得る)形式—体言の述語化—
4.1. 名詞につづく「なり」
補説 いわゆる「連体なり」のこと
4.2. 比況の「ごとし」
5. まとめ
第二部◉古代語の述語形式にかんする各論
第一章 a類複語尾にかかわる議論
第一節 「(ら)ゆ」「る」(上代)
0. 目的と対象
1. 用法概観
1.1. 受身系列用法
1.2. 自発系列用法(自発と可能)
1.3. 暫定的な整理と問題点
2. 用法を位置づけなおす
2.1. 用法間のつながり
2.2. 全体を束ねる共通性は見いだせるか?
3. まとめ
第二節 「り」「たり」 93
0. はじめに
1. 用法の類型
1.1. A「結果存在」
1.2. B「結果状態」
1.3. C「維持」
1.4. D「進行」
1.5. E「動作パーフェクト 1(動きの完了と痕跡存在)」
1.6. F「動作パーフェクト 2(動きの完了と効果存在)」
1.7.「単なる状態」のあつかい
2. 用法の整理
2.1.「モノ/動き」、「痕跡/効果」
3. 変化と用法の積層
3.1.「文法化」の事例としての「り」「たり」
3.2.「り」「たり」の語彙的性格の残存—文法変化と用法の層—
3.3. 変化の検討—運動・結果存在詞から運動動詞パーフェクト形へ—
4. おわりに
第三節 中間的複語尾(「つ」「ぬ」などの位置づけ)
0. はじめに
1. 複語尾論の問題
1.1. 述格に立つ動詞・存在詞の二面性と複語尾の二種
1.2. 問題点
2. 第一種の場合:非現実表現の現実描写への転化
3. 第二種の場合:属性転換語尾とその複語尾化
3.1. 属性転換語尾の設定
3.2. 属性転換語尾の下位類とその根拠
3.3. 複語尾化(のさまざま)
4.【補論】積み残した問題など
4.1. 第一種と第二種とのかかわり
4.2. 現代語での対応物
5. まとめ
第二章 b類複語尾とその周辺
第一節 連用形分出の複語尾—「き」「けり」と「けむ」「けらし」(上代)—
0. はじめに
1. 各形式の使われ方の実態
1.1.「き」—単なる過去—
1.2.「けり」—特殊な過去—
1.3.「けむ」—不確定性と伝聞性—
1.4.「けらし」—他形式とのかさなり—
2. 過去領域の特性と四形式
2.1. 現在領域のあらわし分けとの比較
2.2. 過去領域の特性
補説 「つ」の近過去用法
3. おわりに
第二節 未然形分出の複語尾—「ず」「む」「まし」「じ」とその周辺—
第一論文 「ず」「む」「まし」「じ」の認識・判断系用法
0. はじめに
1. 全体の見通し
2. 非現実領域の切り分けの様相
2.1.「ず」—現状不成立/可能的事態の重ね合わせ—
2.2.「む」—未来時点・可能性領域での成立—
2.3.「まし」—可能性領域のみでの成立—
2.4.「じ」—未来・可能性領域での不成立—
3.「意志・願望」系の用法・ナ行系終助詞とのかかわり
4.「べし」と「む」「まし」
5. おわりに
第二論文 広義希望表現形式(「ず」「む」「まし」「じ」の位置づけ)
0. 議論の前提
0.1.(広義)希望表現
0.2. 注目したい点—整理の観点—
0.3. 五類型
1. 整理と概観
1.1. A「概念的な表現」—「ほし」「ほる」—
1.2. B「希望喚体からの拡張」—「もが(も)」と「てしか(も)」—
1.3. C「内容提示」—要求/禁止表現—
1.4. D「従属節からの再解釈」
1.5. E「非現実叙法」
2. まとめ
第三節 終止形分出の複語尾—「らし」と「らむ」と「べし」—
第一論文 「らし」
0.「らし」をめぐる問題と議論の構成
1.「推量」説の限界—「非推量」説の必然性—
1.1.「根拠ある推量、確かな推量」説の検討
1.2.「推量」説一般の問題点
2.「らし」の叙法にかんする理解
2.1.「らし」の性格をどこに求めるか
2.2.「らし」の叙法
3.「らし」の用例の整理—「見えないこと」の類型—
3.1. イ「物理的に遠」の場合
3.2. ロ「一般的真理をあらわす事態」
3.3. 用法の広がりにかんするまとめ
4. 構文的ふるまいの解明
4.1. 仮定条件の帰結句
4.2. 疑問文
4.3. 構文的ふるまいにかんするまとめ
5. 分出活用形の意味
6. まとめ
第二論文 上代の「らむ」と「らし」
0. はじめに
1. 上代語の述語体系への理解と「らむ」の位置
2. 上代「らむ」の用法
2.1. A「現実未確認事態の思い描きとして理解できるもの」
2.2. B「眼前事態への不信感・拒絶感」
3. A類用法における「らし」との対立
3.1. 推論の方向性/平叙・疑問(A1とA 3)
3.2. 因果関係推量(A2)
3.3.「伝聞」用法の「らし」と「らむ」(A4)
4. B類用法の理解—拡張適用—
5. まとめ
第三論文 中古の「らむ」
0. はじめに
1. 上代の「らむ」—「らし」との対立を中心に—
1.1.「らむ」の述べ方と用法
1.2. A種の領域における「らむ」と「らし」
1.3. B種用法
2. 中古への変化—三代集と源氏物語—
2.1. 用法の変化—用法の拡大と分布の変化—
3. 中古以降のB種用法の理解—三代集での増加と「らむよ」—
3.1. 三代集での「かなの意に通ふらん」増加はB種用法の一般化か
3.2.「〜なれや…らむ」の文型
3.3.「〜なれや」の再解釈(佐伯 1958)
3.4.「らむ」の理解の変化
3.5.「らむよ」の問題
4. まとめ
第四論文 「べし」
0. はじめに
1.「べし」の性格に対する理解
2. 用法の概観
2.1. A「(直前)状況」が根拠になっているもの
補説 A種からの展開:「比喩・誇張」
2.2. B「法則・性質・予定」—世界/場面のしくみ—が根拠になっているもの
2.3. C「価値・規範」が根拠となっているもの
補説 C種の特殊ケイス(「要求」・「許可」・「願望」)
2.4. X非現実事態成立の主張の含意(A.B種の複数から生ずる意味)
3.「べし」の意味・用法の関係
4. おわりに
第四節 動詞基本形と「終止なり」
第一論文 動詞基本形
0. 前提
1. 基本形の性格のとらえ方
1.1. 基本形の「消極性」の中身—「無色性」と「無標性」—
1.2. b)「無標性」の強調—基本形の述語体系への位置づけ—
1.3. a)「無色性」を強調する立場—吉田(1991)、大木(1997)、土岐(2010)—
1.4. a)b)両面を認める立場
1.5. 議論の目標と立場—体系的記述の効いてくるところ—
2. 用例の具体的整理と問題点
2.1.「無標性」が前面に出た用法と「無色性」が前面に出た用法
2.2. 留保—中古会話文の実態にかんする指摘—とひとまずの対応
3. 穏当な理解は奈辺にあるか。
4. 残る問題—まとめにかえて—
第二論文 「終止なり」
0. はじめに—問題と議論の構成—
1. 事実
1.1. 上代
1.2. 中古
2. 解釈
2.1. 上代—述語体系における「終止なり」の位置—
2.2. 中古—上代からの変化—
3. 体系変化
3.1. 変化の体系的要因—「らし」の古語化とその補填—
3.2.「らし」と「終止なり」との異なり—体系の論理と成員の論理—
4 まとめ
第三部◉形式と意味の諸相
第一章 喚体的名詞一語文(現代語)—文の意味の分化の論の前提として—
0. はじめに
0.1. 喚体的名詞一語文とは
0.2. 議論の構成と内容
1. 研究史から垣間見える問題点
1.1. 喚体の喚体たる所以
1.2. 喚体の二種
1.3. 喚体と述体の交渉
1.4. 問題点—まとめ—
2. 喚体の分化—問題B—
2.1. 注目したい事実
2.2. 位置づけ—意味分化への理解—
3. 喚体的名詞一語文の特殊性—問題A—
3.1. ふたたび、喚体的名詞一語文とは
3.2. モノ表現のコト表現への転化—コト表現としての喚体的名詞一語文—
4. 喚体と述体の交渉——問題C——
4.1. モノ表現としての喚体的名詞一語文—形容詞文主語との対応—
4.2. 名詞要素の統合原理としての係り結び
5. 共同注意との関連—名指すことと指差すこと、判断と社会性—
6. まとめ
第二章 非引用の「〜すと……」
0. はじめに
1. 非引用タイプの「〜すと……」—二つの事象(動き・状態)の時間関係から—
1.1. ①「先−後」
1.2. ②「同時」
1.3. ③[後−先]
2.「〜すと……」①〜③の分化への理解
3.「と」の性格と「〜すと……」
3.1.「と」のはたらきの理解
3.2. 非「引用」の「〜すと……」の位置づけ
3.3.「名詞相当語句+と」などとの対応
4. その後の展望—見通しのみ/「と」のその後の確認—
5. 積み残した問題など
第三章 「恒常」と「一般」
0. はじめに
1. 先行研究における「恒常条件」「一般条件」の位置づけ
1.1. 定義
1.2. 条件表現の体系内の位置づけ
1.3.「恒常条件」「一般条件」の位置づけ—ふたたび定義の問題—
2.「恒常性」と「一般性・法則性」
補説 D. Humeによる「因果の批判」
3. 条件表現体系の変化
3.1.「広義恒常条件」と条件表現の体系
3.2. 条件表現体系の変化に対する解釈
4. まとめ
附録一 複語尾体系論攷(初期の見通し)
1. 問題意識と対象、方法論
1.1. 目的と対象
1.2. なぜ上代語か
1.3. なぜ終止形分出複語尾か
1.4. 複語尾をどう考えるか
1.5. 終止形分出複語尾にかんする基本的な視点
2. 議論構成
2.1. 内容と構造
2.2. 具体的内容と方針
附録二 本書各部の初出情報・執筆経緯・修正点・補足コメントなど
あとがき—ながいながいつけたりの話—
詳細目次
人名索引