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「身の上」の歴史社会学

明治時代の自己物語から考える近代化と共同性

著:矢﨑 千華

紙版

内容紹介

「物語」という様式の歴史性を考え直すこと、そして、それを踏まえて「近代化」と「共同性」について論じること。

明治時代の「身の上相談」や日記、投書に記述されている人びとの「身の上」を自己物語として読み解き、個々人がそれぞれに固有の「物語」を語りうるようになった過程と、「物語」を語ることの社会的な機能について詳細に論じた画期的論考。

目次

序章 「身の上」の歴史社会学と自己物語記述様式    
1 「物語」のはじまりを問う
2 本書の目的
3 なぜ明治時代か――「近代化」と「ことば」
4 自己物語としての「身の上」
5 言語編成を見る――分析視角
6 「物語り」から「物語」へ
7 自己物語と「共同性」
8 本書の構成  

第1章 自己物語記述様式の成立を支える諸状況
1 本章の目的
2 『國語元年』における日本語表象――「全国統一話しことば」
3 識字をめぐる諸状況――教育・出版・活字
4 「読む」態度あるいは方法の変容
5 「国語」の創造   
6 言文一致と「主体」の発見
7 「ことば」と認識
 
第2章 「ことば」を分析する方法
1 本章の目的
2 ディスコース分析の利点と難点
3 ストーリーの社会学の利点と難点
4 構造的ナラティヴ分析の展開 
5 ナラティヴの構造と言語編成
6 本書の方法論的視座

第3章 「身の上」の成立
1 本章の目的
2 分析の対象と視点
3 「身の上相談」の言語編成
4 「身の上」の成立――「身の上」として語ること
5 「身の上」の記述を可能にしたもの
6 「物語」と生活世界の記述

第4章 自己物語と「共同性」の生成 
1 本章の目的
2 日記に現れる自己物語を分析すること
3 「物語」を捉える視点――物語論と自己論から
4 日記に現れる自己物語
5 「物語」という様式と「共同性」の生成

第5章 女性と「不幸の共同体」
1 本章の目的
2 分析の対象と方法
3 「不幸」についての記述
4 「不幸」を受け入れるということ
5 「不幸の共同体」  

終章 自己物語記述様式の成立と「共同性」
1 本章の目的
2 自己物語記述様式の成立
3 「私たち」と「共同性」
4 「物語」と「共同性」

あとがき
参考文献
参考資料

著者略歴

著:矢﨑 千華
矢﨑千華(やざき・ちか)
1983年生まれ。 熊本大学文学部卒業。関西学院大学大学院社会学研究科博士課程後期課程単位取得満期退学。博士(社会学)。
関西学院大学先端社会研究所リサーチアシスタントを経て、2019年度より関東学院大学社会学部現代社会学科講師。
主な論文に、「「身の上」の成立――『女学雑誌』「いへのとも」からはじまる紙上「身の上 相談」」(『ソシオロジ』58(2)、2013年)、「明治時代における女性と「不幸 の共同体」―― 婦人雑誌の投書から検討する」(『関 西学院大学先端社会研 究所紀要』(13)、2016年)、「「身の上」の歴史社会学――明治時代における 自己物語記述様式の成立過程から」(博士学位論文、2018年)など。

ISBN:9784865001105
出版社:生活書院
判型:A5
ページ数:248ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2020年02月
発売日:2020年03月09日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB