千葉大学考古学研究叢書 7
北方考古学の新潮流
「逆転編年」説の検証と「オホーツク文化」年代観の改訂
著:柳澤 清一
内容紹介
環オホーツク海域における通説編年体系を覆す「新しい編年体系」を立証する。
近年、北方史の世界では研究の成果が広く語られている。しかしながら、それらを支える編年体系には、1964年に学説が対立して以来、長年に亘って放置されてきた問題点が存在する。本書では、千葉大学による10余年の調査成果をふまえて、そうした問題点を学史的に解き明かすとともに、北海道島と大陸の双方において10年単位の暦年代を付与した小細別編年を仮設し、「遼時代の素焼土器」の年代を「10世紀の末頃」に比定したうえで、通説の北方編年体系に代わる、「新しい北方編年体系」(第3版)を再提案している。
附篇として、学説の対立を導いたウトロチャシコツ下遺跡「未公表」資料の論考を収録。
目次
序言
第1章 道東「北方編年」説の学史的な検討
第1節 いわゆる「東大編年」と山内博士「北方編年」説の相克
第2節 佐藤達夫の道東「北方編年」の成り立ち
第3節 「オホーツク文化」と擦文文化の接触、同化・融合説―展示図録・概説書「模式図」の成り立ちとその実態 ―
第2章 道東・南千島編年の見直し
第1節 擦紋Ⅱ・Ⅲ期における「道東」通説編年の検証―トコロチャシ跡遺跡の新「共伴」資料に触れて―
第2節 知床・標津における竪穴住居跡の変遷と「トビニタイ土器群Ⅱ」の成立
第3節 環根室海峡圏における貼付紋系土器の広域対比―南千島への「駆逐・移動」説をめぐって―
第3章 道北(島嶼域)・オホーツク海沿岸編年の再構築
第1節 礼文島浜中2遺跡(1990年度)調査資料の編年
第2節 紋別・枝幸・稚内における「オホーツク式土器」と擦紋土器編年の対比―道北・道東「地域差」編年説の見直し―
第3節 北見国「枝幸1・2・5号竪穴」土器から見た北海道・サハリン島編年の見直し―「南貝塚式」と「終末期」の擦紋土器をめぐって―
第4章 渡来文物と土器交流から見た「オホーツク文化」新年代論の検討
第1節 香深井1(A)遺跡における「オホーツク式土器」年代観の改訂―異系統土器の「混在」と「共伴」の狭間から―
第2節 道北(島嶼域)「北方編年」における年代観の改訂―浜中2遺跡出土の須恵器片をめぐって―
第3節 道東における「オホーツク文化」年代観の改訂―「遼時代の素焼土器」と伴出遺物をめぐって―
附篇
ウトロチャシコツ下遺跡における「貼付紋系土器」編年の再検討―未公表資料を中心として―
引用・参考文献
初出・謝辞一覧
索引
あとがき