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古老の人生を聞く 宮本常一ふるさと選書 1

著:宮本 常一
編:宮本常一記念館
監:森本 孝

紙版

内容紹介

「編者あとがき」より抜粋
 宮本常一が1981年に亡くなってちょうど40年が経ちました。宮本常一はふるさと周防大島のことを深く調べ、そこで考えたことをたくさんの書物に書き残しています。私たちは宮本の著作を通して、ふるさとがたどってきた歴史を知ることができ、どうやって現在の暮らしが形作られてきたのか、また暮らしをより豊かにしていくにはどうしたらいいのかに思いを巡らせることができます。
 ふるさとを知り愛した民俗学者の著作を、多くの人と読み継ぎ、地域の未来を考える共有の財産としていきたいと思い、「宮本常一ふるさと選書」として刊行を開始することにしました。そこで、小中学生や高校生をはじめ若い世代にも親しんでもらえるように、漢字にはルビを付し、難しい用語には簡単な解説をつけました。また、写真や図版を挿入して、宮本が書き残したことのイメージが膨らむように工夫しました。
「ふるさと大島」は、「周防大島」(『島』有紀書房、1961年)と「旅を誘う白木山」(『岳人別冊 グラフ国立公園』中日新聞社、1971年)として刊行されたものです。周防大島の歴史的な特色と執筆当時の島の空気感を、簡潔かつ、愛情に満ちた筆使いで描かれています。本シリーズ全体を俯瞰する文章として冒頭に収録しました。
「奇兵隊士の話」「世間師(しょけんし)」「梶田富五郎翁」が本書の中心になるものです。宮本常一の聞き書きの中でも、周防大島生まれの古老たちの話をまとめたこの三つを収録しています。幕末から明治を生きた人たちの話には一定のリズムがあったと宮本は回想しています。その語りのリズムを活かした文章は、声に出して読めば、また新たな発見があるかもしれません。
 宮本常一が聞いた古老たちの人生からは、周防大島というところが決して隔絶された世界ではなく、絶えず外の世界との往来があったことを教えてくれます。遠くに見える山々や家並みは旅情を誘い、眼前に広がる穏やかな瀬戸内海は新たな場所へとつながっていたのです。
 道路が拡張されて埋め立てが進み、当時と風景が一変したように思えますが、ミカンの花の香り、家々が密集する町の佇まい、季節ごとの祭礼、海を行き交う漁船のエンジン音に、宮本常一が描いた周防大島の素朴で誠実な営みを感じることができます。宮本が書き残した古老たちの人生は、決して遠い過去の話ではなく、現在につながることなのです。

目次

・ふるさと大島
・奇兵隊士の話
・世間師(しょけんし)
・梶田富五郎翁
・編者あとがき

著者略歴

著:宮本 常一
1907年(明治40)~1981年(昭和56)。山口県周防大島に生まれる。柳田國男の『旅と伝説』を手にしたことがきっかけとなり、柳田國男、澁澤敬三という生涯の師に出会い、民俗学者への道を歩み始める。1939年(昭和14)、澁澤の主宰するアチック・ミューゼアムの所員となり、57歳で武蔵野美術大学に奉職するまで、在野の民俗学者として日本の津々浦々を歩き、離島や地方の農山漁村の生活を記録に残すと共に村々の生活向上に尽力した。1953年(昭和28)、全国離島振興協議会結成とともに無給事務局長に就任して以降、1981年1月に73歳で没するまで、全国の離島振興運動の指導者として運動の先頭に立ちつづけた。また、1966年(昭和41)に日本観光文化研究所を設立、後進の育成にも努めた。『忘れられた日本人』(岩波文庫)、『宮本常一著作集』(未來社)、『宮本常一離島論集』(みずのわ出版)他、多数の著作を遺した。宮本の遺品、著作・蔵書、写真類は遺族から山口県東和町(現周防大島町)に寄贈され、宮本常一記念館(周防大島文化交流センター)が所蔵している。
監:森本 孝
1945(昭和20)年生。立命館大学法学部卒業後、宮本常一が主宰した日本観光文化研究所で、伝統木造漁船・漁具の調査収集や、『あるくみるきく』の編集、執筆に参画した。現在は漁村社会・文化の専門家として、途上国の漁村振興計画調査に従事。著書・共著に『海の暮らしとなりたち』『東和町誌 各論編第三巻 漁業誌』『舟と港のある風景』、編著に『鶴見良行著作集』第11・12巻「フィールドノートⅠ・Ⅱ」、『エビと魚と人間と 南スラウェシの海辺風景――鶴見良行の自筆遺稿とフィールド・ノート』『宮本常一離島論集』全5巻+別巻1がある。

ISBN:9784864261012
出版社:みずのわ出版
判型:菊判
ページ数:88ページ
定価:1200円(本体)
発行年月日:2021年03月
発売日:2021年04月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBCC
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:NH